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芋出し画像

【小説】

    南が死んだらしい。
    䌚瀟の屋䞊から、けやき坂のむルミネヌションに向かっお、ふわっず飛んだらしい。
    きっず、人は皆、䞀床は戊隊ヒヌロヌのレッドになりたいず思う。
    そしお、い぀の間にか、䜕かを悟った気になり、諊める。
    諊めるこずを「倧人になる」ず呌ぶ。

    23歳。私はただ、諊め方が䞋手だ。
    「内海さん、むベントの粟算、今日䞭ね」

    五歳䞊の先茩が、怒っおいる顔のフルセットで蚀う。
    目錻口眉、そしお毛穎たで総動員しお「怒っおたす」を衚珟しおいる。
    この先茩は、私が入瀟する前、酔っおカラオケの2階から飛び降りたこずがあるらしい。
    この゚ピ゜ヌドを聞いたずき、私はこの先茩を少し奜きになった。
    衝動で生きおいる人だず思ったから。

    でも実際は違った。
    驚くほど堅実で、蚀われた仕事を淡々ずこなし、飲み䌚では終電を調べ、積立NISAをしおいないずバカにする。
    ただ酒に匱いだけの人だった。

    「今日䞭に終わらなかったら、先方に謝るの貎方の仕事だからね」
    そう蚀いながら颯爜ずランチぞ向かったその姿は、凛ずしおいお腹が立぀。

    仕方がなく、きちんず䞍貞腐れながら、私はログむン方法も知らない粟算システムを開いた。
    スペンなんちゃら、ずいうらしいが、正匏名称さえ芚えおいない。

    ドラマを䜜りたくおテレビ局に入ったはずなのに、私はなぜかむベント事業郚にいる。
    人事郚の党く笑わない先茩は、「0から1を䜜れる郚眲です。」ず蚀っおいたが、私はこの1幎間雑務ばかりで、テキトヌなこず蚀っおたんだなあ。ずしみじみした。

    カタカタずキヌボヌドを叩きながら思う。
    瀟䌚人ずしおの「正しさ」を持぀人は匷い。
    仕事をキツい口調で振るのも、埌茩を叱るのも、笑わず無慈悲に人事を決めるのも、䌚瀟ずいう組織のために必死に頑匵るのも、党郚“正しい”。
    発展努力成長。これを止めたらいけないずいう焊りが、人間瀟䌚には溢れおいる。そのために、皆意芋も蚀わず、䌚瀟が求めおいるこずを行い、サラリヌマンずしおの責務を党うする。
    発展努力成長をしおいるこずを、䞖間に芋せなければならない。だから、iPhoneもこれ以䞊高性胜にならないずころたで来おいるのに、カメラの性胜だけが良くなっおいく。
    この焊りは、瀟䌚人ずしお、きっず正しいんだず思う。

    âž»

    「う぀みんヌ」
    「わ原」

    原がむベント事業郚のオフィスに来た。同期で、唯䞀の芪友。

    「ドラむブいくでしょ」
    スペンなんちゃらはログむンされないたた、私は䌚瀟を出た。

    âž»

    い぀も通り、ただ目的もなく、海に向かっお走るだけ。
    カヌステレオから、スヌパヌカヌが流れおいる。

    車内で、原が蚀った。
    「瀟䌚人ずしおの正しさを盲信できる人っおさ、匷いよな」

    私は笑った。
    「わかるよ。」
    「私も今日、同じこず考えおた。」

    原ずいるず、蚀葉は少なくおいい。
    同じずころが欠けおいる。

    富接岬を芋お、バカな恋バナをしお、挫画や音楜の話をしお、良い平日だったね、ず蚀い合っお。あず少しだった。あず少しで、最寄りの調垃駅に着けたのに。

    赀信号で、原が「えっ」ず叫んだ。
    「う぀みん、ラむン芋お」
    「南、飛び降り自殺した」

    半幎動かなかった同期LINEが、突然動いおいた。
    オフィスの1階で残業しおいた同期が萜ちる音を聞いたらしく、みな隒いでいる。

    カヌステレオから、フラワヌカンパニヌズが流れおいる。

    調垃駅たで、原ず私は匷迫芳念で、ずにかく話をし続けた。
    âž»

    南は、垌望通りバラ゚ティ局に配属された、数少ない“勝者”だった。
    珟圚のテレビ局では、初期配属は垌望郚眲になかなか配属されない。
    南のこずを、みなが矚んでいた。その矚望を南自身が感じるたびに、倪い眉毛を䞊䞋に動かし、誇らしげだった。 

    酒は匱いが、飲み䌚では必ず幹事。
    無茶振りにも党力。
    「前前向こう」が口癖。
    今思えば、匱さを芋せられないずいう匱みがあったのかもしれない。

    䞀床だけ、同期の打ち䞊げで、南が私に蚀ったこずがある。
    「内海っおさ、い぀も䜕を目暙に生きおるの」

    笑いながら蚀われた蚀葉だった。
    でも、私にはしっかりず刺さった。い぀だっお、䜕かを盲信し、自分自身を疑わず、前に進んでいる人は、「今䜕をしおいるか」「䜕を目指しおいるのか」を、悪気のない目で聞いおくる。

    私は南が苊手だった。
    瀟䌚から芋お、正しいから。
    正しく、努力し、正しく、倢を語り、正しく、笑う。
    発展努力成長をしなければずいう、焊りを感じられる人だから。

    人は人を通しおしか自分を認識できない。
    正しい人の前では、正しくない自分が認識されるだけだった。

    南のInstagramは、䌚瀟の先茩ず芞胜事務所の瀟長ずゎルフに行った投皿で、曎新が止たっおいる。
    昚日たで動いおいたアカりントが唐突に暙本になった様を、ただがヌっず、芋぀めた。

    結局、䜕週間経っおも、䌚瀟は䜕も報道しなかった。
    報道機関なのに。

    âž»
    今日、私は屋䞊に䞊がった。

    今晩もけやき坂は、倉わらずキラキラず光っおいる。
    数週間前のあの日ず、同じ明るさで。

    手すりに觊れおみる。冷たい。
    ふわっず、ずいう蚀葉が頭をよぎる。

    もしここから飛ばなかったら。
    飛ばなかった私は、䜕になるんだろう。

    ポケットの䞭でスマホが震えた。
    原からだ。

    『今日もドラむブ行く』
    地球に、重力がなければ良いのに、ず思った。

    デスクに戻り、粟算システム、スペンティアにログむンする。
    誰も南の話をしおいない。
    30分かけお粟算をする。その粟算は、円の狂いもなかった。

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