
『重なる』上演台本
A B Cは場面と役割によって同一人物とは限らない
AとCが並んでいる、そこにBがやってくる
A「お疲れ様」
B「お疲れ山です」
A「…えっと山?」
B「…あーはいお疲れ山」
A「なにそれ」
B「お疲れ山っていうのはねすごいおっきい山でね。九州あたりにあるんですよ、多分九州あたりに、こんなでっかくて」
A「いや、まあどこにある山でもいいんだけど」
B「はい」
A「久しぶりだったから、その」
B「束にして渡そうと思って」
A「ん?」
B「僕しばらく店長の挨拶無視し続けたじゃないですか?」
A「…」
B「無視した分束にして渡そうと思って、なので、お疲れ山です」
A「…だめだよ」
B「…」
A「そうだよね?やっぱ。俺ずっと無視されてたよね挨拶」
B「そうすね」
A「…なんでやめたの?」
B「え?」
A「なんで今日このタイミングで山にして提出してきた?」
B「給料日」
A「ハッハッハッハ!ハッハッハッハハッハッハッハ!」
B「え?めずらし」
A「なにが?」
B「怒ってます?」
A「怒ってるように見える?」
B「店長怒るの苦手じゃないですか?優しいから自分の感情とか悟られて気を使われるのとか嫌じゃないですか?だから店長なりのそれは…」
A「いや、別に怒ってないよ」
B「ほ、ん、と、うですか?」
A「ほんとう」
B「ちなみに掛け持ちしてるコンビニでは無視2日目でクビになりました」
A「普通はそうなんだよ」
B「はい」
A「ここは何日?」
B「30日」
A「フルだ。1ヶ月フルシカトだ」
B「逆になんでクビにしないんですか?」
A「だって仕事はちゃんとやるじゃん。不思議なことに」
B「それはやりますよ、無視するのは挨拶だけって決めてましたから」
A「それはなんなの?一体。何が目的?ねえ、一体何が目的なの?」
B「店長にキレさせてあげたかったんですよ」
A「はい?」
B「店長が優しすぎるから。なんでも溜め込んじゃう店長にブチ切れさせてあげたくて。ほら、あんま大胆なことすると、社会通念上キレざるを得ない状態になっちゃうので、それは違うっていうか、あくまで店長の店長による自由意志でキレて欲しくて」
A「じゅうぶん大胆だけどね。1ヶ月挨拶無視は」
B「でも1ヶ月まるまるやってもホントに店長は店長のままだ。店長が底知れぬ優しさの巨匠であることがわかりました。優しさのゴッホだ」
A「いやあ、これは優しいとかじゃないんだ」
B「いやいや優しいですよ店長は。人に期待しなくなったある意味での諦めみたいなものがそうさせてるとでも言いたいってことですか?僕にしちゃあ、それも立派な優しさだと思いますけど」
A「違う違うそんなんじゃない」
B「……違うんですか?」
A「全然違う、君は僕のこと何も分かってない」
B「え、じゃあ優しさじゃないならなんなんですか?」
A「頭がおかしいんだよ俺は多分、頭がおかしくてどうしようもないんだ。脳みそのみそがマヨネーズなの。ああもっと頭おかしくなくなりたいって。ほんとにさ。頭おかしくても店長やってるの褒めてよ。褒めて。給料日でしょ?褒めて」
B「未知の領域にアクセスしちゃった」
A「…もうイヤだ、なんかもうイヤだ」
B「店長はね、改めて店長が普段色々我慢してるのかなと思って店長のためを思って、店長、あ、そういえば、店長、明後日誕生日じゃないですか?僕今週は今日で最後なので、今ここでオリジナルのバースデーソング口ずさませて下さいよ」
Bは我が抒情詩を歌う
AはBの歌にコメント
Bは歌を途中で切り上げる
BはCに向かって
B「てかお前どんだけおんなじグラス磨いてんだよこの野郎!」
A「怒りすぎだよ君は、そんなに怒ることじゃないから」
B「すいません、僕も頭がおかしくて」
Cはグラスを落とす
C「パリン」
B「あーもう」
Aは落ちたグラスを見つめる
A「ハッ!」
C「あ、すいません」
B「あーもう何してんの」
C「すいません」
B「オリジナルのバースデーソング歌ってたのに」
A「ハッ!割れた」
Aは落ちたグラスから目を離せない
B「すいません途中からにはなりますが」
Bはオリジナルのバースデーソングを歌う
Cは謝っている
BとCの声はどんどん小さくなっていく
②
A「ひゅるるるるる、ばん!ひゅるるるるる、ばん!」
C「割れてるみたい」
A「…」
C「魂が割れてるみたい」
A「魂って割れ物なの?」
C「え、魂の素材なんだと思ってる?綿?綿100パー?」
A「いや、綿100パーだとは思ってない」
C「カシミア?カシミアだと思ってた?」
A「いや思ってない。あったかそうだけど魂も」
C「じゃあなんだと思ってたの?」
A「いや考えたことないな、魂の素材については」
C「ならガラスだから覚えといて」
A「覚えとくけど覚えとく必要があるの?」
C「分別しないと、最後に。燃えるゴミと、ガラス・ビンに」
A「最後にって死んだ時に?」
C「そう、火葬の後、ガラス・ビンに」
A「見た事ないけどな」
C「見る??」
Cは死のうとする
A「なにしてんの?なにしてんの?」
Aは制止する
C「だめ??」
A「だめ」
C「…止めてくれた、嬉しい」
Aは笑っといた方がいいのでとりあえず笑っておく
C「私が先に死んじゃうの嫌?」
A「うん、まあでも、死ぬ時はね、どう頑張っても死ぬからね」
C「そうだけどさ」
A「どうしたの?」
C「ううんなんでもない」
A「ガラスかあ」
C「こうさ、神様がさ」
Cは大きなガラス玉を持ち上げるマイム
A「うん」
C「大きなガラスの花瓶をさ」
A「花瓶?うん」
C「パリンって」
A「割ったんだ」
C「それで神クラスメイトと神担任にバレないようにその破片を隠したと思うんだよ」
A「神クラスメイトと神担任」
C「そう、だってバレたら神担任に怒られて、神家族に連絡がいって、神暴力をふるわれ…髪を丸めたりとかすることになり…それが新聞などの紙媒体での記事になり…」
A「すごい頑張るじゃん、誰も頼んでないのに」
C「まあとにかくそれでその神はきっとガラスの破片をわたしたちの肉体に隠したの。グサって」
A「ああ」
C「きっとそれで生まれたのがわたしたち人間」
A「すごい、ゼロイチで神話作れるんだ」
C「だから心っていうのは傷のこと、心動くのってその傷がうずくこと」
A「好きだよね本当そういうこと考えるの」
C「なにが?」
A「…いやスピリチュアルというか」
C「あのさ何でもかんでもスピリチュアルでくくって嘲笑しちゃダメだよ」
A「いやいや嘲笑はしてないけど」
C「してたね今」
A「いやしてるように見えたならごめんだけど、でもスピリチュアルじゃなかったら何なの?」
C「…ねっむ」
Bが通り過ぎる
AはBの行方を目で追い、視線を窓の外に戻す
A「まあなんにせよ花火が綺麗だ」
C「川沿いに引っ越してよかったこと1位だねこれは」
A「躍り出たね」
C「2位は?」
A「え、2位」
C「うん2位、今までの1位」
A「えー」
C「せーのっ」
A「河川敷日向ぼっこ」
C「河川敷日向ぼっこ」
C「おおお」
A「まあそれはね」
C「当たり前か」
A「3位は?」
C「せーのっ」
A「風が気持ち良すぎる」
C「風が気持ち良すぎる」
C「さすが」
A「まあそりゃそうだよね」
C「逆にさあ」
A「うん」
C「悪かったことランキングの方が難しいんじゃない?」
A「ええ、あんま言わない方が良いんじゃない?」
C「良い機会だから、ね!?」
A「良い機会では無いと思う」
C「悪かったことランキングベスト3」
A「嫌な予感しかしない」
C「まず第3位は、せーのっ」
A「職場が遠くなったから電車乗り継ぐの大変、え?俺だけ言うの?これ」
C「そうだよ」
A「そうなの?」
C「第2位!はい次行くよ第2位、せーのっ」
A「そのせいでひまりちゃんが長いこと一人になっている、寂しい思いをさせてる」
C「ううん、全然大丈夫、じゃあ第1位」
A「やめよう、いいよ第1位は」
C「なんで、ここまで来たら言おうよ」
A「全然良い、言わない方が全然いい」
CはAの胸ぐらを掴む
A「はい?」
C「…サメ出すぞ?」
A「サメ出すぞ?」
C「サメを出すぞ?」
A「サメを出すの?どこから?」
C「この外反母趾」
A「初めて聞いたってその悪口」
C「はい、じゃあ1位行きます」
A「え、いっていいの?」
C「いいって言ってるじゃん」
A「ええ」
C「せーっのっ!」
A「浮気している」
AはCを指差して
C「…」
A「浮気してるよね、なんか一週間くらい前から男住み始めてるけど。ごめんね、完全言うタイミングを逃してて」
C「…何が?」
A「何がはやばいって。別に怒ってるとかではなく、言わないのが無理があるっていうか」
Bが通り過ぎる
A「第1位 住んでいる」
C「1位が2個ある」
A「1位タイ」
Bはタバコを吸い始める
A「第1位 タバコを吸っている。壁が少し黄色くなっている」
B「どうも」
A「第1位 どうもと言ってくる。逆にこっちがお邪魔してるみたいな気持ちになってくる」
C「そんなこと思わなくても大丈夫だよ」
B「(稲葉浩志バージョンのタッチの鼻歌)」
A「第1位 稲葉浩志バージョンのタッチを鼻歌で歌っている。多分ネトフリでWBCを見られている、アカウントが一個増えている」
C「それは」
B「おすわり、待て、よし」
A「第1位 犬を飼っている。お気に入りの革のベルトが噛みちぎられていた」
C「そうだね」
A「第1位 部屋にピンクのペンキを塗られている。もうほぼネバヤンだよこれはネバヤン」
C「うん」
A「あと第1位、一緒に寝ている…」
C「怒ってる?」
A「いや、怒ってはない、驚いてはいる」
C「怒ってないの?」
A「うんごめん、まだ怒れない。驚きがデカいけど怒ってはない」
C「じゃあ何で最悪ランキングワースト1位なの?」
A「いや最悪ランキング1位ね」
C「え?」
A「最悪ランキングワースト1位は最高ランキング1位だから、花火が見えることだから」
C「そんなこと言える余裕があるのすごいね」
A「…」
C「え、私、浮気したんだよ?」
A「うん」
C「浮気して、一緒に住んで、犬飼ってるんだよ、部屋にはピンクのペンキを塗って、ネバヤンさせたんだよ!?コイツに!」
A「コイツは一体何者なの?どこから発生した人間なの?」
C「マッチングアプリ」
A「コイツとマッチしたの」
C「コイツくらい変な奴の方がショックでかいかなって思って」
A「試し行動がエグすぎるって」
C「今怒ってる?」
A「まだ怒れてない」
C「は??じゃあ何考えてるの?」
A「こんな真っ向勝負のパラサイトあるんだって。全地上バージョンのパラサイト」
C「怒れよ!」
A「…」
C「怒ってよ!!ねえ、ずっとさ!!なんで怒ってくれないの!?嫌って言ってよ!!」
A「え?俺怒られてる??」
C「うん怒ってる」
A「えっとごめん」
C「怒ってるよだって傷ついてるもん」
A「うん、ならばごめん」
C「やめてその謝るという行為、その行為によって怒りエネルギーに拍車かかんのよ。引き返せなくなるから、一歩引かないで」
A「わあ、うん、そうだね、じゃあ一旦落ち着こう」
C「なんでもかんでも笑い事にしなきゃダメなの?」
A「え?」
C「笑わないとダメなの?笑わないとダメな病気なの?」
A「…いや」
C「え、本当に私のこと好き?」
A「え?好きだよ?」
C「好きなのであれば私もうついていけないかも」
B「ひゅるるるる、ばん、しゃあっ!ひゅるるるる、ばん、しゃあっ!ひゅるるるる、ばん、しゃあっ!」
Bは花火を打ち上げ続ける
A「じゃあ俺の魂はゴムってこと?」
C「なに?聞こえない」
A「いや、なんでもない」
Bは花火の音を口ずさむ
AとBとCが横に並ぶ
横一列に並び石ころを投げる
Bの花火の音は段々小さくなっていく
③
C「キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン」
A「病院、行って来たの?」
B「ああ。まだ」
A「いつ行くの?」
B「いや、決まってない」
C「どうしたの?なんかあったの?」
A「こいつ、笑顔が取れねえんだって」
C「笑顔が取れない?」
B「うん、そうそう。よっ友、いる?」
C「よっ友ってあの?」
B「そう、あの」
C「いるけど」
B「よっ友とすれ違う時にさあ、よっ友用の笑顔作るでしょ?」
A「あーあの短期決戦みたいな笑顔」
B「そう、短期決戦みたいな笑顔」
C「うん、する、作る」
B「すれ違った後に徐々に解除していくじゃん、あの顔」
A「何故かまだ見られてる気がして失礼のないように徐々に解除していくあれな」
C「うん」
B「あれが戻せなくなっちゃって」
C「ヤバいじゃん」
A「そうヤバいんだよこいつ」
B「なんか食べ物が気管に入っちゃう時あるじゃん、よっ友用に作った笑顔が戻す時に気管入っちゃって」
C「大変だ」
B「だから今正直つらすぎて泣いてる」
A「泣いてんの?お前今」
B「悪いな」
A「謝る意味わかんないな」
B「まあでも自分では慣れてきた」
C「私たちは全然まだ怖いよ」
A「お前普段必要以上には笑わないしな」
C「確かに、逆に普段からそれくらい笑ってた方が友達増えるんじゃない?」
B「この顔になってからよっ友が5人増えた」
A「よっ友が増えてどうすんだよ」
C「ねえ、親が死んだりしたらそれで葬式行くことになるってこと?」
B「親死なねえわ」
A「いつか死ぬだろ」
B「そんな悲しいこと言うなよ」
A「悲しい気持ちにさせれば治るかなって」
C「ダメかあ、やっぱり正しい治療をしないと」
A「それって内科?外科?」
B「どうしよう、俺の周りからよっ友しか居なくなって、結婚式とかよっ友しか呼べなかったら」
C「結婚式によっ友こないでしょ」
B「そっか、でもよっ友しかできないならよっ友の中で関係性の優劣つけるしかなくなる」
A「まずその顔の状態で結婚できないんじゃない?」
B「そんな悲しいこと言うなよ」
AはBの顔を見る
A「ダメか、治んないか」
C「やめてあげようよ」
A「ごめんごめん、でも俺たちはちゃんと友達だから」
B「よっ友になんない?」
C「ならないよ。なんなら誰もいなかったら結婚してあげる」
Cは言っておいて照れる
A「照れた」
Cは隠してた顔をあらわにする
A「よっ友の笑顔じゃねえか」
Cは笑う
B「おい!でもなんか元気出たわ」
A「てか上手いよなさっきから水切り。笑顔効果?」
B「いや、これはセンス、最初から」
C「どうやったらそんな上手くできるの?」
B「実直にやることだね」
C「実直」
A「どう実直にか聞いてるんだけどね彼女は」
B「いやどうとかなくて」
A「どうとかない?」
B「実直に、実直に!」
A「笑ってるの怖いわやっぱり」
C「…やってみる」
A「怯えてるよ」
C「実直、実直、実直、実直、はっ!」
Cは石を投げる
C「つん、つん、つん、つん、つん、つん、つん、つん、つん」
A「お、すご」
B「いいぞ」
C「つんつんちゃつん、つんつんちゃんつん」
以下、同じリズムを刻む
B「8ビートだ」
A「そんなんできんの?水切りで?」
B「急げ急げもったいない、もったいない、俺も合流するね」
A「もったいない?」
Bは急いで石を投げる
B「ぷるぷるぷ、ぷる、ぷぷぷぷ、ぷるぷるぷ、ぷる、ぷぷぷぷ」
以下リズムを刻む
A「それはどうやってやってるんだよ」
B「勿体無い、勿体無い」
A「何が??」
B「名曲の予感がするんだよ早く歌ってくれビートが勿体ねえよ」
A「なに、俺も石投げればいいの??」
B「いや、歌って!早く歌って!」
A「歌うの?水切りがしたいんだけど」
B「歌って」
🎵名曲
A「拍手!!(10秒間)」
④
病院、Aがそこら辺にいる看護師と喋っている
A「えっと、笑顔の方はもう治ったはずじゃ、この前退院したよね?あ、別件?別件なんだ。えーっと、顔付近から出血して、原因は、分かんないだ。そっかそっか。分かったよ、はい」
よしおは小さいタオルで顔を押さえて入ってくる。
B「失礼します」
A「はい、一旦見てもいいですか?」
B「怖いです」
A「怖い?」
B「これ外したら、血が垂れて来そうで」
A「そんなに?大変なことになってるの?」
B「はい」
A「でもねえ、見せてくれないことにはねえ、始まらないから」
B「えぇ、怖!」
A「じゃあ僕が取りますよ?いいですか?」
B「えー怖い怖い怖い。でもはい、そうですね、分かりました」
よしおはタオルを外す。
A「あの、出血は?」
B「あれ、おかしいな」
A「あれ、おかしいな」
B「あれ……家に…」
A「家に?」
B「置いてきたんですかね」
A「冷やかしですか?」
B「違います。冷やかしじゃないです。すごい出てたのに、あれ、どうしてだ、おかしいぞ、あれ、なんか、すいません」
A「大丈夫ですけど、他にも患者さんがいるので」
B「待ってください、違うんです。本当に出血したんです。とんでもない量」
A「信じます信じます。では佐藤さん、一旦状況を聞かせてもらえますか?」
B「あぁ、分かりました」
A「お願いします」
B「えっと、今日仕事から帰ってきて、かなり残業したので、疲れ切っちゃって、そのまま倒れるように家のソファーで寝たんです」
A「はい」
B「ほら金曜日なんて、明日のこと考えなくてもいいから、こういう寝方しても大丈夫じゃないですか?」
A「まあまあ、そうですね、そこのディティールは別に」
B「で、なんかここらへんに違和感があって、それで目を覚ましたんですよ」
A「どこかを打たれてたんですか?」
B「それが違うんですよ」
A「え、はい」
B「なんか鼻からブワァって血が出てて」
A「はい」
B「打ったりとか何もしてないのにですよ。勝手に、勝手に出てきたんですよ!」
A「あーそれは鼻血とは何が違うんですか?」
B「はい?…」
A「…鼻血を知らない??あなた鼻血で病院来たの??すごい、鼻血を経験せずに?」
B「来るでしょ?そりゃあ鼻から急に血が出て来たら誰だって、なんなの!?って感じだわ、え、これってなんかの病気なんですかね?」
A「……えっと鼻血です」
B「はい?」
A「それは、鼻血です。もう多分止まってますし大丈夫です」
B「鼻から血を出てるのを見て、鼻血ですって」
A「鼻血は鼻血なんです。」
B「えっとじゃあ原因が分からずおでこが紫色に膨らんだ人に対して、おでこ紫腫れですって言うんですか?」
A「いや言わないです」
B「僕はその原因を知りたいんですよ、ちゃんと診察して下さいよ」
A「ええ?診察?鼻血を診察?…わかりました。昨夜は体調が悪いな、みたいななんかありました?」
B「いや、とにかくね。暑かったんですよ」
A「多分のぼせたんだと思いますよ」
B「のぼせた?何ですかそれ」
A「のぼせるを知らない??とにかく病名がつくほどの事じゃないので大丈夫ですよ」
B「ヤブ医者??」
A「いや本当です、真実しか喋ってません。あの、次もあるので」
B「ちょっと待って?」
Bは上を向く。
A「あら、また出てきたんですね」
B「う、嘘つき!」
A「鼻血ってそういうものなんですよ、別に出てくるんですよ」
B「あー!もうこれ僕どうすればいいんですか!?」
A「ティッシュを詰めましょう」
B「一生止まらないかも!!」
A「止まります!あの、ティッシュを」
B「薬は!?これに効く薬を出してください!」
A「これに効く一番の薬はティッシュです。ティッシュを詰めましょう」
B「え!?」
Bはティッシュを渡されるがやり方が分からず困惑する。
B「え!?詰める!詰めるってどう!?」
A「どうしたらそんなに鼻血に関わらず生きてこられるんですか?大丈夫ですよ。私やります」
B「お願いします!」
A「分かりました、じゃあ詰めますね」
B「ちょっと待ってください、痛いですか!?」
A「痛くはないですよ」
B「ちょっと待ってください、何をする気ですか!?」
A「大丈夫です。本当に大丈夫です。じゃあ詰めますね」
B「その詰めるという表現が怖いです!まるでカタギの指のような」
A「そっちの使い方の方が珍しいでしょ」
B「麻酔は!?麻酔をしてください!」
A「いらないです。鼻血止めるのに麻酔してる人見た事ないです」
B「ひぇーーー!!」
Bは立ち上がり、自分のタオルで顔を押さえる。
診察室のドアが開く。
C「こんにちわ」
A「あ、えっと次の診察の方ですか?少々お待ちくださいね」
B「ちょっと、僕の診察はまだ終わってないです!」
A「いや、もう終わってます。始まってもいません」
C「いいえ、私は診察に来たんではありません」
B「……ちょっと!なんかまた来そうなんですよ!」
A「私は一体どうしたらいいんですか?」
B「え、それ医者が一番言っちゃだめですよ」
C「私はこの街で探偵をやってます。マグベルと申します」
A「探偵!?女で!?女探偵!?珍しい!」
B「とりあえず今探偵は無視しましょう!」
A「絶対に無視できないです。どうされたんですか?」
Bは悶えている
C「昨夜、この病院の向かいのマンションで殺人事件がおきましてね」
A「え??」
C「現場には犯人と被害者が争った形跡がありました。犯人は被害者と揉み合いになり、怪我を負いながら逃走」
B「やばい死ぬ、死ぬよ僕、先生!」
A「何故ここに?」
C「今朝、捜査をしていると向かいのマンションからポツ、ポツと血の滴る形跡がありました。恐らく自分の怪我に相当焦っていたんでしょう」
A「え??」
C「…それを辿ると、この病院へ」
A「え??」
C「お話いいですか」
Cは悶えるBに向かう。
A「信じてもらえないかもしれないですが、彼はただ鼻血が出ただけの人です」
C「鼻血??それは鼻から血が出る事であっていますか?」
A「はい」
C「先生それが何よりの証拠じゃないですか?」
A「え??」
C「他人と争わずしてどうやって鼻から血が出るんですか?」
A「鼻血を知らない??」
C「チェックメイトだよ殺人鬼」
A「何でこの人たちは鼻血を知らないの?」
B「すいません、なんか言ってます?」
A「あなたが人を殺したのではないかと疑われていますよ」
B「は?なんでですか?」
A「家でティッシュを詰めないからです」
B「あの、すいません、僕はやってませんよ」
C「血を流していますが?」
A「低い声で血を流していますが?じゃないんですよ全くもう」
B「信じてもらえないかもしれませんが勝手に鼻から血が出てきたんですよ」
C「それは無理がありますよ」
A「無理ないんですよ」
C「口からも耳からも勝手に血が出るって言うんですか?」
B「それはわかんないですけどあり得るんじゃないですか?鼻があるんだから」
A「そうなったらちゃんと病気です」
C「苦しい言い訳だなあ、本当に」
B「本当ですよ!信じてください、それに昨夜は僕、仕事から帰って速攻で寝ましたから」
C「お医者さん、実際こういう事はあるんですか?」
A「あ、はい。とてもよくあります」
C「ではこれはどういった病気で?」
A「あ、えっと病気っていうほどのものじゃ無いんですよ」
C「ん?鼻から勝手に血が出る事がですか?」
A「はい、夏とかは特によくある事なんです」
C「よくある事?」
A「はい、気温差とかで」
B「あーやばいやばい…出そうです。」
Bは爆笑する
B「逆に、逆におもれえ!!来いよ!!マジで!!」
C「これもよくある事なんですか?」
A「これ私は一回もないですね」
C「そうですか」
A「はい」
C「そっか争いがない所にも血は流れるんですね。普段事件でしか血を見ないので、こういう出血があることを忘れてました」
A「それは、ダメですね」
C「すいません、ご足労おかけしました」
A「大丈夫ですよ」
C「失礼しました」
Cははける。
A「もう、殺人事件に巻き込まれるとこでしたよ?」
B「すいません」
A「じゃあ次の診察にあるので」
B「先生これって本当に鼻の血なんでしょうか?」
A「今度はどうされました?」
B「これって、体の血が全部鼻から漏れ出てるっていう可能性もないんですか?」
A「もう全身麻酔しましょう。殺します」
暗転
⑤
小さなスポットライトが小さな兎のぬいぐるみに当たる
兎「全てはにんぎょーーー!!!!!でした!!!!!!全てはにんぎょーーーー!!!でした!!いやふつうにね!!!ふつうに!!!全てが人形であることをただ聞いて欲しい!!!皆んなも!!!そういう時!!!あるでしょう!!!だけど何か言って欲しい時に、何も言ってくれないやつに対して自分勝手かもしれませんが、けいべつ!!!します!!!とにかく全ては!!人形でした!!!」
ウルトラマンの人形をBは操る。以下(ウ)
ここからあり得ない人形劇が始まる、ちなみに兎は動かない
ウ「全てってどこからどこまでが人形だよ。分かんねえだろ(オタクのような笑い)」
兎「はい?」
ウ「こんにちわ」
兎「はい」
ウ「あのさあお姉さん」
兎「はい」
ウ「今お時間ありますか?」
兎「はい」
ウ「変な意味じゃなくよ?」
兎「はい」
ウ「全然変な意味じゃなくね」
兎「はい」
ウ「絶対に自民党に票入れたよね?」
兎「はい?」
ウ「変な意味じゃなくよ」
兎「何故そう思うの」
ウ「何故そう思うか、送ってあげるからインスタ教えてよ」
兎「はい」
Bはウルトラマンの上半身と下半身を2つに割って、そして下半身の部分にコーヒーを注ぎ、飲み干す
あり得ない人形劇、終了。
B「so good。この時、外には雨が!!!雨が降っていました!!!しかし、それはただの雨ではなく、地面の全てが銅鑼であり、そして、雨の全てが、銅鑼叩きであったのでした!!!銅鑼雨!!銅鑼雨!!」
SE 銅鑼雨打たれる音、中華の音楽を添えて
そして、Aはその雨に驚きその雨を怯えながら必死にかわしていく。
SE ナイス・你好!!!
Aはラスボスの銅鑼雨を当たる覚悟で待ち構える。頭を抑えながら屈む
SEガラスが割れる音
⑥
B「店長」
A「…」
B「店長」
A「…」
B「店長!」
A「は!」
B「どうしたんですか??」
A「あ、ごめんごめん、ぼうっとしてた、あれ?りさちゃんは??」
B「帰りましたよ、とっくのとうに」
A「え、言ってよ、コーヒーでも淹れてあげようと思ってたのに」
B「コーヒー淹れてましたよさっき、お疲れ様って言ってたし」
A「オートでやっちゃってた」
B「たまにありますよね、店長。マニュアルじゃなくて、オートになってる時」
A「なんでだろう、おかしいな」
B「なんかあったんすか?」
A「いや、まあね。色々あるんだよ」
B「今日花火ですよ」
A「ああそうだったね」
B「僕友達と今から見に行きます。彼女でもいればなあ」
A「…」
B「花火の日史上1番辛気臭いですよ、もっと笑って」
Bは笑顔を作る
A「いい笑顔だ」
Aは笑う
B「まあ、とりあえず誕生日おめでとうございます」
Bは帰り支度をして店を出ていこうとする
A「お疲れ」
B「…」
A「帰りはまだ無視するんだ」
Cが入ってくる
A「おう」
C「早めに終わった」
A「おつかれあれ、今日友達は?」
C「それなくなった」
A「あ、そうなんだ」
C「うん」
A「買い物して帰る?」
C「いや、あるもんでどうにかする」
A「おっけい、ありがとう」
C「……」
A「…」
C「どうしようかな」
A「ん?」
C「どうする?私たち」
A「うーん」
C「ゼロにする?一旦」
A「…うーん」
C「まあ、いいわ。話し合うとかできないもんね」
A「うーん…話し合う?別に俺は何もおきてないと思ってる」
C「いや、おきてるじゃん、だって最初みたいに会話できてないじゃん私たち」
A「そりゃ、変わっていくもんじゃないの?それを受け入れるかどうかの話だと思うけど」
C「擦り合わせが必要じゃない?相手とかこの関係のことが大切だったら」
A「うーん…」
C「なに?」
A「…そんなに考えなきゃいけないことかな」
C「あのさ、関係って複数でしょ?複数の時点で社会だから、社会にはルールが必要だから」
A「…そうか」
C「愛ってルールだから。ルールって宇宙だから」
A「俺氷噛んだだけだよ?音を立てて氷を噛んだだけ」
C「私、前から嫌って言ってたじゃん」
A「ごめん、なんでだっけ」
C「なんで覚えてないの?まあそりゃそうか。覚えてないからこうなったのか」
A「うん」
C「だから、私は氷の噛む音大っ嫌いなの。どれくらい嫌いかというと、ハードコアパンクより嫌いなの。暴力性と攻撃性がいきすぎてるの、それを前も伝えたはず」
A「え、なんか、氷周りでトラウマとかがあるの?」
C「…(ため息)ないよ」
A「じゃあなんでだろう、こっちもできるだけ理解したい。前も聞いたかもしれないけど」
C「それは貴方が氷を噛む人だから。貴方が氷を噛む人だから私はそれを嫌いだし、禁じたいの」
A「…え?」
C「本質とかどうでもいいでしょ、社会的か個人的かってだけで大小あれど浮気とかと一緒、禁じないと不安だから禁じるの。それを守る事によって愛なの」
A「えっとごめんね、理解が」
C「私も分からないよ、ないはずのルールいっぱい作ってて自分でも自分が怖いよ。袖を右手から通すな、とか、当たり前のようにYouTubeの広告見るなとか、かといってpremiumには入るな疑問を抱きながら広告を浴びろ、とか、水を先に口に含んでから錠剤飲むな、とか。なんか沢山のこと言ってきたけど」
A「そうね」
C「去年の花火の時、私の浮気が発覚したよね」
A「うん」
C「あれで君怒らなかったでしょ」
A「うん」
C「君は次の日から何事も無かったようにできるし、やってきたし、きっとこれからもそうするでしょ、それまでも思ってたけどじゃあもう分かんないよとうとうってあの日になって。あれで怒られないなら私は何を愛として生きていけばいいかが分からないよってなって。何を優しさとして感じればいいかも何と何が何として一緒にいるのかも」
A「うん」
C「じゃあ一般的なルールでこの不感症男を縛れないなら、パーソナルに食い込んだルール沢山作ろうって思って、そしたら少しは嫌がってくれるかなって、それで破ったら、体に小さい兎のタトゥ入れさせようって、今兎なん羽入ってる?」
A「65羽」
C「それで何もならないの何?もう無敵じゃん」
A「あ、ちょっとごめん」
Aはスマホを見る
A「…ちょっと待ってねそろそろだ」
C「何が?」
アラームが鳴る
Aはアラームを止める
A「うぉーーーーーーーーー!!!!!!」
C「え?どいうこと?」
Aはその後も奇声をあげCは戸惑う
C「なに?それは、ねえ、なに!?」
A「俺アンガーマネジメント一年!!!」
C「え???」
A「俺アンガーマネジメント一年!!!普通の人6秒のやつ!!俺!!怒りが!!デカすぎるから!!!頭がおかしくて6秒じゃ出来ないから、一年!!!一年は収まるまで我慢するようにしてる!!で、一年経った上で、これはやっぱり許せないから今からキレるね!!」
C「え?」
A「あーーーーーーーー!!!!」
C「…!」
A「優しい奴に見えた!?俺優しい奴にみえた!?優しすぎて、底がないように見えた!?」
C「…」
A「ねえ!!!」
Cは頷く
A「マジでずっっっっとぜっっんぶに怒ってるから俺!!!!ずっっっとぜっっんぶに怒ってた上で一年間!!色んなこと考えて!!色んなこと考えて!!魂ゴムにして!!笑い事にして!!沈むの待ってたけど沈まねえから!!」
その後もAは一年怒りを我慢し続けた奴のキレ方をする、しばらくキレた後で泣くフェーズに突入する
A「なんで、浮気とかしたの??」
C「…」
A「あ、ごめん悲しみも一応、一応、こういうことだから」
C「……」
A「タトゥ入れんじゃねえよ!!どうしてくれんだよこのからだ!!あ、これ今一羽目のやつ、これ一羽目のやつにキレてるから!!!」
C「…!」
A「これからずれ込んでキレていくと思うけどよろしく」
Cは黙って後退りして出ていく
B「ひゅるるるるる、ばん!ひゅるるるるる、ばん!」
A「この野郎!!!!花火が綺麗だったんだよ!!この野郎!!花火がずっと綺麗だったんだよ!!!この野郎!!!」
BはAの感情の動きに呼応して、Aが落ち着くまで花火を上げる
Aはため息をつき、帰り支度をする
A「…お疲れ山でした」
Aは電気を消す
小さな照明が点く
Bはその照明を持ち、Aを追う
Aは冷蔵庫からケーキを取り出し、椅子に座り、ケーキをゆっくりと口に運ぶ
ケーキを食べる
ケーキを食べる
ケーキを食べる
ケーキを食べる
BはAに近づく
B「こうなったので本公演「重なる」は終了になります。はい、こうなったので。皆さんはこうならないようにしましょう。ではまた会いましょう。タスサンでした」
Bは小さな照明を消す
Cは部屋の照明を点ける
演者は横一列に揃い、頭を下げる