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Photo bykasai_shingo

遅咲き棋士のリストラ回避録【連続お仕事小説】その11【終】

    後日、師匠の神崎かんざき邸で俺の昇段祝いが開催された。
    「葎りつ、改めて昇段と棋星きせい戦リーグ入りおめでとう」
    師匠の神崎から労いの言葉をかけられる。
    「相庭あいば、終盤はヒヤッとしたけどよく逃げ切ったな」
    寿司をつまみながら同期の高村からも祝われる。
    「引退は回避したけど一時的なものだよ。日本囲碁機関は追加のリストラを考えているんだろ?」
    俺は高村に聞いてみた。
    「まだ分からない。囲碁界の未来次第だな」
    高村が首を振りながら答える。
    「葎はこのままタイトルを獲る勢いで行けよ」
    神崎師匠がお茶のお代わりを配りながら言う。
    「棋星リーグには私もいるんですよ?」
    高村は棋星のタイトル経験者で、今もリーグに在籍している。
    必然的に来期のリーグでは高村との対局も行われる。

    流石にタイトルを獲りますとは言えないが…
    「善処しますよ。活躍して少しでも囲碁界に貢献したいです」
    下川しもかわ九段との対局が報じられ、引退勧告から這い上がった棋士として巷ちまたでは話題になっていた。
    「もう葎は十分貢献しているよ」と師匠が微笑んで続ける。
    「先日の決勝に孫を連れて行っただろ?君のボロボロになった姿を見て囲碁に興味を持って今ルールを教えているんだ」
    「それは良かったですね」
    高村が複雑な顔をしている。
    「ゆくゆくは孫が葎か高村とタイトル戦をするのが楽しみだ」
    相変わらずの孫馬鹿で、思わず言葉が出る。
    「流石に夢見過ぎではないでしょうか?」
    「今の囲碁界は少し夢見過ぎくらいが丁度良いのさ」
    ならば、もう少し師匠の期待にも応えるとしよう。
    最初はリストラを回避することだけ考えていたが、これからは注目される分、正しい手を打たなければならない。俺が強くなるためにも、囲碁の普及をする上でも。

    神崎邸を後にして高村と最寄り駅まで歩く中、高村が口を開く。
    「決勝の話に戻るけど、リードを守る消極的な作戦だと棋星戦リーグでは生き残れないぞ。相庭六段」
    「リーグが始まるまでには作戦を練りますよ。高村九段」
    そう言い返して帰路に就いた。

    【終】

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    無事に創作大賞応募期間内に最終回まで投稿することができました。ここまで読んでいただきありがとうございました。各話のリンク先はその1をご参照ください。






     
     
     
    囲碁の記事を投稿していて囲碁インストラクターにも挑戦中です。たまに料理、お酒、温泉旅行のことも記事にしています。内向的な性格なのでアウトプットの練習を兼ね5年以上毎日noteに投稿しています(note以外のSNSは運用していません)。

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