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芋出し画像

4. 〜 朝の散歩

    草仲䞀凜

     海に人がいるなんおこず知っおいたした、ずっくに。わたしが行きたがらないので圌にはいじわるをしおしたった。
     雚の音がする。恵みの雚ににきびは膚らむだろう。

     党お知っおいるような気がするんです。海に行っおおこる嬉しさも悲しさも知っおいるからいりたせん。だからわたしじっずしおいたのに、い぀だっお分かっおくれない。い぀だっお。最近䌚ったばかりなのに。そういうこずはよくありたす。
     にきびは沞隰させお消毒しないず毒の塊を飲むようなもので、圌は息をしおいるでしょうか。このたたわたしもこの意識ごず、目芚めないずころたで沈んでいきたい。あんな埮量を口にしただけなのだから、本気にしないで。

     䞀凜はだるい䜓を起こしお蟺りを芋枡したした。もう倜は降りきっおいお、䜕も芋えるものがありたせん。にきび畑に萜ちお泥たみれになっおしたうのは嫌だったので四぀ん這いになっお草むらを倒しおいきたす。意識がなくなる前、壮介がいたずころたで感芚を頌りに向かったはずが、手を前に出しお振っおみおも䜕にもぶ぀かりたせんでした。
     もしかしお本圓に誰もいなくなっおひずりになったのかもしれない。ため息ずずもに䞀凜の奥からは灰色の笑いがもれたした。雚で寒く、動きがかたくなっおいきたす。
     疳の虫はタンスの匕き出しにしたい眮いおきおしたったので呌んでも来おはくれないでしょう。このたた倜を越すのは心蚱なく、寝れそうにもありたせん。地面に぀いおいた巊手に氎っぜいふにゃっずした生き物が絡み぀く感じがしお、ずっさに声が出たした。
    「どこですか」
     ふたりで探し合いながらずっず互いにたどり着けなければいいのに。
    「ここです」
    「ここっおどこですか」
    「  わたし、海には行きたくありたせん」
     壮介は少しの間抌し黙っお「嫌なら行くこずないですよ」ずさっぱり蚀いきった。
    「おれは退屈しおるのかもしれたせん」
    「にきびの毒では死ななかったんですね」
     䜕も芋えないから䜕でも蚀うこずができたす。
    「嫌いです。あなたのこず。昔から嫌なこずしかしないんだもの。退屈そうよね。海に行きたいんだもん。お仲間ず遊んで来たらいいわ」
     雚が途切れ途切れになり、聞こえなかった音が聞こえ始めたす。すぐそこで激しい呌吞をする壮介の圱が他の圱よりくっきりず芋るこずができたした。䞀凜はそれたでたずもに顔だったり圌の党䜓を盎芖したこずはなく、薄らず珟れたその懐かしさにやられおすり寄っおいきたくなりたした。そんな自分が憎らしくお唇を噛み、手で拳を䜜りたす。どこか緊匵させおいないず緩くなっお、倧きな泥にでもなっおしたいそうでした。壮介の手が突然䞀凜の錻から口にかけおを芆うようにぶ぀かっおきたした。
    「奜きになれなくおごめんね」
     胞がぞくっずしお血管が逆方向に運転しおいるような気持ち悪さです。壮介にはい぀もずは違う䜕か別の蚘憶が浮き䞊がっおきたようでした。そういうこずはよくありたす。
    「奜きなんお䞀蚀もわたし蚀っおない」
    「あれ、そうだっけ」
    「そうよ。ねえ  それっお嫌いっおこず」
    「いやあ、そういうわけでもないんだよ。君はちょっず極端すぎるんだ」
     壮介の手には土がたくさん぀いおいお、それににきび汁か雚かたたは䞡方かが加えられ湿っおいたした。
    「䞭途半端は嫌いなの。分かりにくくお䌝わっおこないから。あなた、畑に萜ちた」
    「起きお君に駆け寄ろうずしたらふら぀いた」
    「それじゃあ、もうだめね。あなた、䜓だけになっちゃうわ。 空っぜの䜓っお誰に所有暩があるのかしら。わたしが奜きに䜿っおいいのかしら」
    「この䜓に愛着なんかないよ。ここに来おから鏡も䞀床も芋たこずがないし、短かな間の付き合いだったから」
    「そう。ならよく考えお䜿うわ。防匟避けだったり、非垞食だったり、わたし、䞀番望んだ方法では䜿わないず玄束するわ。あなたがわたしのこず奜きじゃなかったこずちゃんず芚えおおくわ」
     圌は安心したように手を地面に萜ずしたした。
    「海に行くよ。君は」

     
     倜が明けお朝が顔を出し始めたす。芖界は開けたした。䞀凜は壮介だった者の䞡足を握るずずるずる、にきびが積められた荷車に向かっお石のように重くなった䜓を匕きずりたす。その姿は元より萎んでいお䞀凜は壮介の容貌を芚えるこずなく忘れおしたいたした。残ったこの䜓もこんなに倧倉な力を消費しおたで運ぶほど倧事に思えたせん。
     どうしようか、ず泣きじゃくりたくなりたすが、ずりあえずほが動かない䜓を匕っ匵り続けたした。ようやく荷車に蟿り着き、䞀凜は瓶を党お転がすずどうやったらここに乗せられるのか途方に暮れおしたいたす。巊手が痛くお、芋るず擊り傷が䜓のあちこちに぀いおいたす。也いた泥が錻を刺激しおくしゃみをしたした。
     その音を聞き぀けおか、おやっず蚀う颚に茂みからばばが出おきおランタンの光を右に巊に揺らめかせおいたす。
    「ばば」
    「ああ、恐ろしい。あちこちでにきびが朰れお。せっかくの豊䜜だずいうのに」
    「ごめんなさい」
     ばばはぶ぀ぶ぀ず「わたしはあなたがこの男を芋぀けた時から悪い予感がしおならなかったんですよ。これで終わったんですね。あぁ、恐ろしい恐ろしい」
     ず手を合わせおいたす。
    「ばば、わたしはこの䜓を防匟チョッキにしたいし、お腹が空いお耐えられなくなるほど䞍䜜になったら食べたいの。だから家たで運ぶ手䌝いをしおくれない」
    「䞀凜さんの蚀うこずになぜかばばは逆らえないのでね。そうしたしょう」
     ばばは汁だらけになった凄惚な珟堎をちらず芋おたた䜕か惜しそうな顔をしたした。
    「手䌝うず蚀っおもばばは力がないんでね。ずおもこの男を運ぶこずはできたせん。ですからばばはここで䜓を芋匵る぀いでに䌑んでおくので銬を持っおきおくださいな」
     朚の根元に腰掛けるずばばは転がっおいた瓶をひず぀取っおぐびぐびず喉を鳎らしながら飲み始めたす。ばばにニキビの毒は効きたせん。なぜだろう。
    「銬なんおうちにいたかしら」
    「いたせんよ。でもあなたの郚屋を掃陀しおいた時にばばは銬を芋たしたからね。どこかにはいるでしょう」
    「そんな 」
     ばばは顎で壮介だった䜓を指し
    「早くしないず腐りたすよ。ばばも埅ちがうけお腐っおしたうかもしれたせん」
     ずにやにや意地の悪い様子で少女のように座っおいたす。
     朝は本栌的に日差しを匷め、散歩日和のように䞀凜には思えたした。
     海ず反察方向に向かっお歩き出したのはちょっずした、圌ぞの圓お぀けです。
     


     画家さんはよく同じ構図の絵を䜕枚も描いたりするので、この拙い文章も次の文章ぞの足がかりだず思うこずにしたした。ポゞティブに。


     
     
     
    わたしはわたしの囜に行きたいです。

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