
ゴッホの『夜のカフェテラス』の常連になりたい
ゴッホ展の鮮やかな黄色に目を引かれた。
上野で開催されている。
ちょっと行ってみようか、と予約ページを開いた。
「予約できる日程はありません」
がーん。
と、古いリアクションが出る。
最終日まで、平日も予約が満員だ。
そうなると未練が残る。
毎日、キャンセル待ちをするかもしれない。
なぜ、あの黄色を見ると、胸の奥がざわつくのだろう。
写真では、どうしても届かないものがある。
じっと見つめる。
あの黄色。
あの夜空の紺色。
何度も何度も重ねられた筆の跡。
黄色の奥には、何があるのだろう。
もし、あの夜のカフェへ入ったなら。
木の椅子を引いて腰掛ける。
温かい飲み物を頼む。
石畳の街を歩く人たちを、ただ眺めていたい。
この感覚の名前を知らない。
けれど、
五感だけでは触れられないものが、
きっとある。
この店の、いつもの席に座りたい。
*
この作品は「日常の薄皮をなでる」シリーズの一篇です。
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