
お坊さんの頭をなでた子ども
3歳頃のことだったと思う。
法事があり、親戚の家に集まった。
お坊さんがひとり、やってきた。
若くて背が高く、がっしりしていた。
草履ではなく、黒いピカピカの靴
を履いていた。
声は低く、朗々と響いた。
後ろから見る首筋は太く、
ラガーマンのようだった。
帰るとき、玄関まで見送りに出た。
お坊さんが靴を履くために
かがみ込んだとき、
私の目の前に、お坊さんの頭が
差し出された。
私は、玄関の明かりを反射して
つるつるに光る頭を、円を描く
ようになでた。
地球儀のように。
両親を含め、親戚たちは言葉も
なく唖然としていた。
お坊さんは、
「まさか、なでられるとは
思わなかった」
と言って、帰って行った。
親戚たちの言葉は、さまざま
だった。
つるつるして綺麗だったから、
さわってみたかったのよね。
普通やらないことをやる、
変わった子だ。
時が経ち、大人になり、
そつのない振る舞いを身に
つけても、まだ言われる。
親族という絵画の片隅に描かれた、
小さなしみ。
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この作品は「日常の薄皮をなでる」シリーズの一篇です。
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