
風と共に去りぬ③哀しみの紳士レット
愛し方が違う人間同士は、
すれ違うしかない。
愛が消えたのではない。
それを抱えていた自分が、耐えきれなくなったのだ。
レット・バトラー。
ならず者にも紳士にもなれる男。
現実に強く、世の裏表を知り尽くしている。
人の弱さを理解しているからこそ、
人を信じない。
皮肉屋で、そして――情の深い男だった。
レットは、スカーレットに恋をした。
同時に、彼女が子供であることも知っていた。
愛と恋の区別もつかず、崇拝する男にさえ残酷でいられる人間だと。
それでも、恋をした。
そして、その愛を最後まで隠し続けた。
やがて彼は、スカーレットを手に入れる。
手に入れたはずのものは、最後まで自分のものにはならなかった。
望むものを与え、共に生き、娘を愛した。
しかし、その愛は一方通行だった。
レットを支えていたのは、
スカーレットだけではない。
娘のボニーだった。
そのボニーの死は、愛を抱え続けていた彼自身を、決定的に壊した。
愛していることを隠しながら、ひたすら愛し続ける。
愛し返されることもない。
正面から向き合われることもない。
そのうえ、自分はいつまでもアシュレという別の男の影に置かれ続ける。
スカーレットは、レットを強い男だと思っていたのだろうか。
自分を手に入れたのだから、満足しているはずだと。
これは一種のゲームであり、彼が本気で傷つくことなどないのだと。
彼女は、レットの奥にある、人を信じられない心を見なかった。
絶望的な恋を抱えた男であることも。
どれほど深い愛でも、焼かれ続ければ限界が来る。
消えるのは、愛そのものではないのかもしれない。
愛していた自分の方が、変わってしまうのだ。
根が枯れれば、花もまた枯れるように。
精神が限界に達したとき、愛もまた終わる。
レットは、現実に生き抜く力を持っていた。
経済力もあり、見る目もあり、望めば別の人生をいくらでも選べたはずだった。
それでも彼が恋したのは、自分を愛することも、理解することもできない女だった。
いつか愛される。
その期待は、最後まで叶わなかった。
レットは、メラニーに安らぎを見出す。
無条件に信じ、受け入れ、裏切らない。
そんな世界が確かに存在することを示す人だった。
揺るがぬ信念を持つ彼女の前では、レットも無防備でいられた。
彼もまた、メラニーに縋っていたのだと思う。
しかしそのメラニーも失われる。
最後の支えが消えたとき、彼はもう立っていられなかった。
立てなくなったとき、愛もまた終わった。
愛が消えたのではない。
それを抱えていた自分が、耐えきれなくなったのだ。
それは、魂を危険に晒すような愛だった。
スカーレットは言う。
「私たち、やり直せるわ」
けれど、そのときにはもう、レットはそこにいない。
彼は、戻らない。
もうこれ以上、自分の魂を危険に晒すようなことはしない。
そう決めたのだと思う。
静かな別れだった。
選び続け、待ち続け、打たれ続け、
そして、そのまま終わった愛だった。
*見えていなかったのではない。
スカーレットには、見ることができ
なかったのだ。
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