メインコンテンツへスキップ
見出し画像

さつまいも

    母と一緒に、「おかあさんといっしょ」を見ていたことがある。
    もう大人で、子どももいた頃だった。

    三人の子どもがおやつに、蒸したさつまいもを分ける場面だった。

    等分しようとしたのだが、どうしても端のしっぽの部分だけ小さくなる。

    さつまいもが大好きな男の子が言った。

    「ぼく、大きいの食べたいなあ。
    譲ってくれるよね。友達だもん」

    けれど結局、じゃんけんになった。

    男の子は負けてしまう。

    それでも諦めきれず、もう一度お願いする。

    けれどもう一人の子が「おいしい!」と言って、大きい方を食べてしまった。

    男の子はついに泣き出した。

    その子は三人の中で、一番やさしい子だった。
    そして少しトロくて、いつも損をする役回りだった。

    私はその子が好きだった。

    泣き出したとき、胸が痛かった。
    食べ物のことだから、余計にそう感じた。

    その場面を見て、母はくすっと笑った。

    「現実はこんなもんよ」

    どこか自嘲するような笑い方だった。

    自分を守るなら、もっとやり方があるだろうに。

    そう思いながら、私は黙って画面を見ていた。

    男の子は泣きながら家を飛び出す。

    しばらく歩いているうちに、近所のおばさんに出会う。

    おばさんは事情など何も知らない。
    ただ、お店で余ってしまったさつまいもを、山のように持たせてくれた。

    男の子は涙も吹っ飛び、急いで家に帰る。

    「どこに行ってたの?」

    心配そうな声に、

    「みんなで食べようよ!」

    と嬉しそうに言う。

    そして三人は、また仲直りする。

    その場面を見ながら、
    母の言葉を思い出した。

    「現実はこんなもんよ」


    *


    この作品は「日常の薄皮をなでる」シリーズの一篇です。
    他の作品もよろしければ。



     
     
    日常の薄皮をなでるように。 どう生きれば、自分の人生を生きたと言えるのか。 そんなことを考えています。

    あなたへのおすすめ