
家庭教師
学生の頃、家庭教師をしていた。
時給が高くて、いいアルバイトだった。
ある日、疲れていた私は、図形問題に手こずっている生徒を前に、肘をテーブルに乗せて手を組んだ。
説明するのが面倒だった。
すると、生徒が私をじっと見て言った。
「先生、私のこと馬鹿だと思ってるでしょう」
ハッとした。
取り繕う言葉もなかった。
本当に馬鹿だと思っていたのなら、
話は単純だった。
そうではなかった。
私はただ、
向き合っていなかったのだ。
それにしても、子供は鋭い。
一突きだった。
でも、一突きでよかった。
そうでなければ、私は今もこう思っていただろう。
いい家庭教師だったと。
*
この作品は「日常の薄皮をなでる」シリーズの一篇です。
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