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【薄皮メモ】人間を、少し休む ──私のプチ冬眠計画

    会社の先輩が、ときどき漫画を貸してくれる。

    自称「漫画部」。

    隣の席に座っていた私は、好きな漫画の話をしているうちに、いつの間にか部員ということになっていた。

    その中の一冊が、『しろくまカフェ』だった。

    グリズリーくんは冬眠する。

    大きな木のベッド。

    ふかふかの枕。

    ゆったりしたパジャマ。

    木の扉を閉めて、ぐっすり眠る。

    春になり、外がぽかぽかしてくると目を覚ます。

    しばらくうとうとして、それから勢いよく扉を開ける。

    「起きたぞー!」

    その場面が、ずっと好きだった。

    ⸻

    イギリス文学やアガサ・クリスティを読んでいても、不思議と惹かれる場所がある。

    サナトリウム。

    牧師館。

    仕事で神経を病んだ人。

    事件や裁判に巻き込まれて疲れ果てた人。

    犯罪者との結婚生活からようやく逃げ出した人。

    そんな人たちが、静かな田舎でしばらく暮らす。

    もちろん現実のサナトリウムは、病と向き合う厳しい場所でもあった。

    それでも、物語の中には、こんな空気が流れている。

    「患者さんを疲れさせてはいけませんわ。」

    その言葉が好きだった。

    そんな風に、労られて過ごしてみたい。

    休むことが、仕事。

    元気になるために急かされることもない。

    何かを生み出すことも求められない。

    ただ、神経を休める。

    そんな場所が、世界のどこかにはあるような気がしていた。

    ⸻

    ここ数日、頭が重い。

    そんな日は、本を開いても文字が入ってこない。

    そんなとき、ふと思う。

    プチ冬眠したいな、と。

    緑に囲まれた静かなホテル。

    窓の外には森。

    枕元には飲み物。

    大きなベッドで、ゆっくり過ごす。

    気が向いたらプールへ行く。

    涼しかったら、庭を散歩する。

    ⸻

    会社を休むのではない。

    人間を、少し休む。

    春まで眠らなくてもいい。

    一週間だけでもいい。

    身体も心もゆるめて、また自然に目が覚めれば、それでいい。

    人間にも、ときどきそんなプチ冬眠があっていい。

     
     
    日常の薄皮をなでるように。 どう生きれば、自分の人生を生きたと言えるのか。 そんなことを考えています。

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