
シンガポールに行きたい、カフェオレ──ぬいぐるみに魂はあるのか②
来週は、シンガポールへの家族旅行だ。
「猫は誰が行くの?」
人間サイドの条件は二つ。
体の小さい猫であること。
そして、一匹だけであること。
猫たちの会議が始まる。
去年の京都旅行には、ハチワレが行った。
「和風の猫は国内でいいにゃ。」
どこにも行ったことのない猫が行くべきだ、と誰かが言う。
みんな行きたい。
非日常を見てみたい。
特別な猫になってみたい。
話し合いと、少しの駆け引きの末、選ばれたのはマカロンだった。
シャンゼリゼ家の、小さなフランス猫。マカロン・シャンゼリゼ。
金色の首輪に、小さな飾り。
この家へ来てまだ日は浅いけれど、明るくて、誰とでも仲良くなれる子だ。
ちなみに猫たちは、それぞれ大小二匹で家族を作っている。
ハチワレは武者小路家。
マカロンはシャンゼリゼ家。
ほかにも、いろいろな家族がある。
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毎日、少しずつ荷造りを進める。
気がつくと、カフェオレがスーツケースの上に寝転んでいた。
いつもリビングのソファに寝転んでいるのに、今日はここにいる。
「旅行に連れていくにゃ。」
そう言っているようだった。
みんなが集まってくる。
「大きい子は無理だよ。」
「汚れちゃうから、やめようね。」
猫たちも口々に説得する。
「カフェにゃん、諦めるにゃ。」
夫は、
「カフェのわがままを許しちゃだめだよ。」
と言う。
本当は、連れて行ってあげたい。
でも、大きすぎる。
スーツケースに詰められて、ほかの荷物と一緒に運ばれたら苦しいだろう。
痩せてしまうかもしれない。
⸻
昨夜から、私のベッドにいる。
朝になっても、リビングに帰る気配はない。
カフェオレは、私に背中を向けたまま、壁を見て寝そべっている。
娘が、
「リビングに帰っておいで。」
と声をかけても、返事はない。
私はそっとカフェオレを抱き上げる。
タオルケットの中へ入れて、一緒にくるまる。
カフェオレは、まだ何も言わない。
*
この作品は「日常の薄皮をなでる」シリーズの一篇です。
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