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娘の世界は、明るかった──母から娘へ、受け継がれた光

    母は言った。
    幸せな人は、人を幸せにできるけれど、
    不幸な人間は、人を幸せにはできない。

    結婚や夫婦のことを話していた。

    若かった私は、その意味がよく分からなかった。

    幸せな人と不幸な人が同数ならいい。
    けれど、幸せな人同士が結ばれてしまったら、
    残された不幸な人はどうすればいいのだろう。

    そんなふうに思っていた。

    母は続けた。

    自分は厳格な家で育って、
    楽しいということが罪だった。

    あなたは、欠陥品が育てた子だけれど、
    限界はある。

    それでも、できることはするから。
    頑張って。

    そんなことはない、と言いたかった。
    けれど、言葉にならなかった。

    学生の頃、友人たちと愛情について話したことがある。

    私は言った。
    愛情は不変ではないし、信じることは怖い。

    友人は少し考えてから言った。
    それでも、まずは信じる。

    羨ましかった。

    模倣しようとしたこともある。
    できなかった。

    信じるとは何か、
    その輪郭が見えなかった。

    時が経ち、娘が生まれた。

    母は娘を溺愛した。

    親じゃないから、責任がないから、
    可愛がるだけでいいのよ、と言った。

    娘の成長を見つめながら、時が過ぎていった。

    娘の目を通して見る世界は、明るかった。

    好きなものを、好きだと迷いなく言う。
    自然に人と繋がる。
    何かを求めることに、ためらいがない。

    将来は海外へ行きたいのだと、前を向く。

    傷つき、涙を流し、
    制度に文句を言いながら、

    それでも、世界は明るいままだった。

    本当によかった。

    私は、まだ途中にいる。

    もう大丈夫だろう。

    私はそっと手を放し、
    半分だけ、自分の世界へ還る。

    *


    この作品は「日常の薄皮をなでる」シリーズの一篇です。
    他の作品もよろしければ。


     
     
    日常の薄皮をなでるように。 どう生きれば、自分の人生を生きたと言えるのか。 そんなことを考えています。

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