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ひとり時間②──目が覚めても、夢は続いていた

    韓国のアパートメントにいる。

    テレビを見ながら、ディクテーションをしていた。

    ふと、玄関の鍵が気になった。

    ちゃんとかけてあるだろうか。

    立って見に行く。

    ドアの外側では、ボソボソと太い男性の声がする。

    ドアの横は不透明なガラスになっていて、そこから赤い作業服のような塊が動いているのが、ぼんやり見えた。

    誰だろう。

    何かの点検だろうか。

    開けなくても大丈夫?

    気がつくと、ドアが少し開いている。

    チェーンをかけた隙間から、ゴツい、ふしくれだった黒い手が差し込まれていた。

    その向こうに、ギョロリとした、物言いたげな丸い目がある。

    がっしりした赤い作業服は、いつのまにか洗面所に向かっている。

    慌てて案内しようと、取り繕うように何か喋りながらついていく。

    洗面所に入り、網戸のようなドアをさっと閉める。

    一瞬の間。

    網戸の隙間から、また手が差し込まれる。

    壁の金具をいじっている。

    私は何か言い訳めいたことを口にしながら、リビングへ戻る。

    赤い作業服は、金属の箱と棒のようなものを見つけ出し、手に取る。

    何か言っている。

    こちらを見ている。

    喉の辺りに、紙やすりの塊のようなものが引っかかっている気がする。

    言葉が口の奥でこわばる。

    必死に押し出す。

    そうだったんですねえ。

    分かりました。

    いつのまにか、作業服はいなくなっていた。

    リビングには、日本の知り合いがいた。

    私は今あったことを、まくし立てるように喋る。

    「ええ、それ怖いじゃん」

    気がつくと、オープンカーのタクシーに乗っていた。

    街路樹のある広い道路を、風を切って走っていく。

    左手に、白い小さな洋館が見えた。

    半螺旋の階段に、見覚えのあるモスグリーンのドレスが立っている。

    舞い散る花吹雪に遮られて、女の顔は見えない。

    ショートケーキのような歌声が聴こえる。

    その女が、さっと顔を上げた。

    気がつくと、枕が斜めになっていた。

    白い天井が見える。

    首に当てたタオルがねじれている。

    家には誰もいないはずだ。

    ふと、玄関の鍵が気になった。

    *

    この作品は「日常の薄皮をなでる」シリーズの一篇です。
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    日常の薄皮をなでるように。 どう生きれば、自分の人生を生きたと言えるのか。 そんなことを考えています。

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