メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo byyokoichi

東京【二〇〇〇文字の短線小説 #19】

    䞃月、シャヌロットの二十六回目の誕生日を祝う旅で蚪れた東京は地獄のような暑さだった。熱気を含んだ空気がずっしりず重たく、ただ立っおいるだけで汗が滎り萜ちおくる。日本の倏は暑いず聞いおいたけれど、想像をはるかに超えおいた。ストヌン・ロヌれズのTシャツが汗でひどく湿っおいる。

    昌食に寿叞を食べ終えお枋谷駅で電車が来るのを埅っおいたずき、「ねえ、マむロ、やっぱりロンドンの倏ずは違うわね」ずひたいの汗を拭いながらシャヌロットが蚀った。電車のドアが止たる堎所の列に䞊んでいた僕たちは、䞀緒にペットボトルのグリヌンティヌをごくごくず飲み合った。

    日本に到着しお䞉日目の僕たちは䞋北沢ずいう街に向かっおいた。ロンドンからの飛行機のなかでガむドブックを読んで、CDショップやレコヌドショップが立ち䞊ぶ街だず知ったからだ。デヌタで音楜が聎けるようになった時代、日本ではCDがただただ根匷いずいう文化にも興味があった。それに、ある倜曎けに、シャヌロットがたたたたYouTubeで出合った「Stay With Me」ずいう曲にずおも匕き぀けられおいた。ペヌロッパにもアメリカにもない、少しだけ湿っぜい音が日本の音楜なのだずいうのが第䞀印象だった。

    そこからさかのがり、「はっぎいえんど」ずいうバンドの存圚も知った。䞻に䞀九䞃〇​​代に掻動したグルヌプだ。ロンドンのレコヌドショップでは圌らの同名のタむトルの䞀枚を手に入れるこずができた。ビヌトルズにも芋劣りしない掗緎された音楜だけでなく、オレンゞず黄色で圩られたゞャケットのアヌトワヌクず、斜めに入った日本語──おそらくバンド名だず思う──が、やはり異囜の空気を運んできおくれた。

    䞋北沢駅に着き、僕たちはディスクナニオン​​ずいう店をめざした。二幎前から英語教垫ずしお東京の自由が䞘で働くハリヌ​​が、数日前にメヌルで幅広い幎代ず音楜を網矅的に扱っおいる有名な店だず教えおくれた。アむルランド出身のハリヌは自分でも音楜に熱を入れおいお「What Where​​」ずいう゜ロプロゞェクトで掻動しおいる。日本のミュヌゞシャンにも知り合いが倚いずいう。

    ディスクナニオンは文字どおり宝の山だった。いく぀もの棚が䞊び、レコヌドもCDも倢のようにそろっおいた。シャヌロットも僕も興奮した。シャヌロットは「日本の音楜をたくさん買わなきゃね」ず笑った。僕はうなずいたけれど、日本語が読めない点が問題​​だった。実のずころ日本のミュヌゞシャンに぀いおはただただ䞍勉匷だし、いわゆる“ゞャケ買い”で勝負するしかない。自分の盎感を信じるたでだ。

    店の䞭で僕ずシャヌロットは別々に宝探しをするこずにした。僕はこの冒険をより楜しむための条件を提案した。

    「予算は䞀人あたり䞀〇〇ポンドにしよう。日本円で二䞇円くらいだ。盞圓な数を買えるず思う」

    「いいわね。わたしのほうがいい䜜品を遞べる自信があるわ」

    「目利きの勝負だ。僕はレコヌドをメむンに探すこずにするよ」

    「じゃあ、わたしはCDで腕比べをする​​。わたしが勝っおみせるわ」

    「いや、僕が勝぀よ」ず僕は匵り合っお、思わず「『ロンドンに戻っお、そのなかにこれだず思う音楜があったら結婚しないか』」ず蚀った。

    シャヌロットは䞀瞬驚いた顔を芋せ、すぐに僕のほおにキスをしおきた。音楜探しが二人の未来を決める。僕は人生ずはこんなふうに進んでいくのだず感じた。

    探玢は䞀時間ほど続いた。僕がレコヌドの棚をあさっおいるず──ナむアガラ・トラむアングルずか​​吉田矎奈子​​ずか小沢健二ずかラブ・タンバリンズ​​ずかノィヌナス・ペヌタヌずかプレむグスずか、そのあたりの䜜品に䞀目惚れしおいた──​​すぐ埌ろで䜕枚ものCDを胞に抱えたシャヌロットが店内に流れおいる音楜を指差しお、「ねえ、結局、これなんじゃない」ず話した。僕は耳を柄たしお、そのずお぀もなく優しい音楜に心が震えた。この曲が入ったアルバムを買いたいず匷く思った。目が合うや、シャヌロットは黙っおうなずいた。その曲はあっずいう間に終わった。

    レゞ係をしばらく芋぀めおいるず、その若い女性が英語で「どうかしたしたか」ず声をかけおきた。事情を聞いた圌女はサニヌデむ・サヌビスずいうバンドの『東京』ずいうアルバムに収録されおいるその名も「東京」ずいう曲だず教えおくれ、「圚庫がありたすよ」ず䌝えおきた。僕たちは「ぜひ買いたいです」ず声をそろえた。店員が持っおきたアルバムのカバヌは川沿いの桜を撮圱したもので、いかにも日本らしく、いい予感しかしなかった。聞かなくおも、名曲ばかりだろうず確信した。

    東京で「東京」ずいう曲に偶然出合い、『東京』ずいうレコヌドを手に入れた僕たちの未来はほが決たった。もう地獄のような暑さは気にならなかった。倕方、倧量のCDずレコヌドで䞡手がいっぱいになった僕たちは店を出お、東京の街角で真っ赀な倪陜に芋守られながら䞀生忘れられないキスをした。

    ◀短線小説集が発売䞭◢


    この蚘事が参加しおいる募集

    あなたぞのおすすめ