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Photo by3jinoohirune

シャボン玉がひとつ~ショートストーリー【シロクマ文芸部】

    kao

    (約1000字)

    シャボン玉がひとつ、飛んできた。
    それを追いかけるように、たくさんのシャボン玉が飛んできた。
    ふわふわと漂っている。

    午前十時の山手線。そこそこ混んでいる。
    池袋から乗ったベビーカーの子どもが泣きだして止まらない。
    ママが焦り、周囲の乗客が顔をしかめ始めた時、それは飛び始めた。
    数えきれないシャボン玉がまるで花吹雪のように車内を漂い、乗客の頬はゆるみ、泣いていた子どもは目を丸くして黙り、やがてすやすやと眠った。

    =====

    シャボン玉がひとつ、飛んできた。
    それを追いかけるように、たくさんのシャボン玉が矢継ぎ早に飛んでいく。
    流れる帯になる。

    午後二時のオフィスビル。
    入社三年目の若い男性は、取引先の会議室で新商品のプレゼンを任されていた。
    あがり症なので時々言葉に詰まるが、同行した上司は知らんふりだ。
    男性が顔を赤くして、汗びっしょりになった時、それは流れ始めた。
    どこからかシャボン玉の帯がやって来て、会議室を漂う。
    「なんだこれは」
    そこにいたメンバーは驚き、うたた寝していた者は目を覚まし、やがて皆が笑い出したので、男性の緊張は解けていった。

    =====

    シャボン玉がひとつ、ふたつ、風に乗って飛んでいる。
    みっつめは壁が薄く、すぐ割れてしまった。
    「もうシャボン液がないから今日は終わりだな」
    公園のベンチに座ったその人は、右手に持っていた銃のようなものを、ビジネス風のリュックにしまった。

    銃に見えるそれはバブルマシンガン。
    トリガーを引くと、シャボン玉が三十秒間噴射される鉄砲型の器具だ。
    今朝の山手線内で泣く子を見て。
    会議室で困り果てる若者を見て。
    トリガーを引いたのはこの人だった。

    その人は、誰に言うともなくひとりでつぶやく。
    「つらい人、悲しい人を見つけたら、駆けつけるのがぼくの役目。
    バブルマシンガンのシャボン玉が少しだけその場を幸せにする。
    ぼくは元バブルサラリーマン、略してバブリーマン!」

    隣に座っていた、その人の娘でバブリーマンの助手、高校生の美優が言った。
    「ねえお父さん、その名前っていかにもバブル時代に浮かれていた人みたいだから、やめたら?」
    「そうか?ぼくの世代って実際浮かれてたから、あながち間違っていないし、言いやすいんだけどな。今度考えるよ」
    「それよりお父さん、スマホで調べたら、シャボン液に砂糖を入れると割れにくいんだって!明日やってみよう!」
    「おう!」

    その人ーーバブリーマンは明日もきっと、誰かを助けるためにバブルマシンガンのトリガーを引くだろう。
    窮地に陥ったあなたを見つけて、救ってくれるかもしれない……


    (終)

    =====

    #シロクマ文芸部 に参加しました。

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    「シャボン玉」で検索。
    バブルマシンガンからたくさんのシャボン玉が飛んで行く感じ。




     
     
     

    kao

     
     
    短い小説を書き、短歌も詠む足が遅いランナー。春から秋はガーデニングも。 還暦プラス4です。ZINEフェスに参加しています。 Kindle出版しました! https://amzn.asia/d/08GprLVX

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