メインコンテンツへスキップ
見出し画像

相談した話は、どこまで共有されるのか。

    最近、人の話を個別に聞くことだけではなく、

    「そもそも、会社の中で同じことが起きにくくするにはどうしたらいいんだろう」と考えることが増えました。

    今日は、その中のひとつです。

    「何かあったら、いつでも相談してください」

    会社で、よく見る言葉です。

    相談窓口があります。
    困ったときは上司に相談してください。
    一人で抱え込まないでください。

    たぶん、どれも善意で書かれている。

    でも私は最近、それだけでは足りないんじゃないかと思っています。

    相談したあと、その話はどうなるんだろう。

    誰に共有されるんだろう。

    自分が話したことは、相手本人にも伝わるんだろうか。

    どこまで会社が動くんだろう。

    そこが分からないまま、

    「安心して相談してください」

    と言われても、本当に安心できるのかなと思うのです。

    一人に話したつもりだったのに

    以前、私は職場で起きたことについて、ある人に相談したことがあります。

    ところが、その内容は、私に共有範囲を確認することなく、複数のリーダーにそのまま共有されました。

    相談した側としては、

    「え、そこまで行くんだ」

    という感じでした。

    もちろん、組織として対応するために、誰かに共有しなければならない場合はあると思います。

    一人だけが情報を抱えていても解決できないこともある。

    だから、「誰にも言わないでほしい」が必ず通るべきだ、と言いたいわけではありません。

    でも、少なくともその前に、

    「この話は、誰に・どこまで共有して大丈夫ですか?」

    と聞くことはできたんじゃないかと思うのです。

    相談したあとに起きることまで考えてほしい

    相談内容が誰かに共有されると、その瞬間から状況は変わります。

    相手本人に伝われば、

    「誰が言ったんだ」

    となるかもしれない。

    複数の上司に共有されれば、それまで知らなかった人まで事情を知ることになる。

    その人たちが、実際に何が起きていたのかを見ているとは限りません。

    それでも、それぞれが自分なりに解釈する。

    すると、相談者が想像していなかったところまで話が進んでしまうことがあります。

    相談を受けた側からすると、

    「問題を解決するために共有した」

    だけなのかもしれません。

    でも相談した側にとっては、

    相談する前より職場に居づらくなることだってある。

    そうなったら、次からは何も言わなくなると思うんです。

    「相談しても大丈夫だった」

    ではなく、

    「相談したら、何が起きるか分からない」

    と学んでしまうから。


    共有したら終わり、ではない

    もう一つ、会社側に考えてほしいことがあります。

    それは、

    共有した情報が、そのあと組織の中でどう扱われるか。

    役職としては「リーダー」でも、相談を受けた経験や、センシティブな情報を扱う訓練が十分にないことはあります。

    すると、本来は慎重に扱うべき話が、

    「え、何それ」
    「ちょっと詳しく聞かせて」

    と、いつの間にか興味本位の話題になってしまうことがある。

    さらに、問題となる行動をした側が、

    「そんなに自分、やっちゃいました?」

    と笑い話のように語り始めたり、

    周囲も深刻に扱うのではなく、なぜかその人を慰める側に回ってしまったりする。

    もちろん、その場にいる人たちは、悪意があってやっているわけではないのかもしれません。

    でも、その会話が相談した本人にも聞こえていたらどうでしょう。

    自分にとってはつらかった出来事が、少し離れたところで、みんなの雑談や「ちょっとした武勇伝」のように扱われている。

    私は、それだけでもう一度傷つくことがあると思います。

    だから、

    「誰に共有するか」だけ決めても足りない。

    共有された人が、

    その情報をどこまで話していいのか。
    本人の前でどう扱うのか。
    問題行動をした側にどう伝えるのか。
    周囲が笑い話にしてしまったとき、誰が止めるのか。

    そこまで含めて決めておかないと、

    「相談してください」という仕組みは、逆に相談した人を苦しめるものにもなり得る。

    相談情報は、単なる社内共有事項ではない。

    その扱い方によって、その人が明日も安心してそこで働けるかどうかが変わる情報なんだと思う。


    「何をしてほしいですか?」も聞いていい

    私は、相談を受けたとき、もっと本人に選択肢があっていいと思っています。

    たとえば、

    「今日は聞いてもらうだけでいい」

    「上司には共有してほしい」

    「相手本人には、まだ言わないでほしい」

    「今すぐ介入はしなくていいけれど、記録には残しておいてほしい」

    「自分一人では難しいので、会社に間に入ってほしい」

    全部、違います。

    相談した=すぐに会社が動いてほしい、とは限らない。

    だから最初に、

    「どこまで共有していいですか?」

    そして、

    「今、会社には何をしてほしいですか?」

    と確認する。

    それだけでも、相談する側の安心感はかなり違うと思うんです。

    もちろん、本人の希望だけでは止められないこともある

    一方で、何でも本人の希望どおりにすればいい、とも思っていません。

    生命や安全に関わること。

    法令上、会社として対応しなければならないこと。

    ほかの社員にも被害が及ぶ可能性が高いこと。

    そういう場合は、会社として動かなければならないこともあると思います。

    だからこそ、

    「どんな場合には、本人の希望にかかわらず共有や対応が必要になるのか」

    そこまで最初から書いておけばいい。

    「秘密は守ります」とだけ言って、あとから

    「これは共有が必要だったので」

    となるより、

    最初からルールが見えていた方が、ずっと判断しやすい。


    相談窓口より先に、「相談すると何が起きるか」を決める

    会社は、相談窓口をつくることには一生懸命でも、

    相談された情報をどう扱うか

    については、意外と曖昧なことがあります。

    誰に共有するのか。

    本人の了承はどこで取るのか。

    記録はどう残すのか。

    会社が介入するときは、本人にどう説明するのか。

    一度「今は介入しないでほしい」と言われたら、それで終わりなのか。

    一定期間後にもう一度確認するのか。

    こういうことまで決まって初めて、相談窓口が「使える仕組み」になるんじゃないでしょうか。

    私は最近、

    「相談できる人を増やす」ことだけを考えても足りない

    と思うようになりました。

    話す勇気を本人に求める前に、

    話したあとも、その人の意思が置き去りにされない仕組みを会社側がつくる。

    その方が先なんじゃないかと思っています。

    「何かあったら相談してください」

    と言うなら、

    その続きもセットで伝えてほしい。

    相談したら、誰に伝わるのか。
    どこまで本人が決められるのか。
    会社はどんなときに動くのか。

    そこまで分かって初めて、

    「ここなら話しても大丈夫かもしれない」

    と思える人がいるはずです。

    私は、そんな仕組みを会社の中につくれないか、これから考えていきたいと思っています。


     
     
    仕事、家族、恋愛、ときどき台所の失敗。 少し笑えて、少し生きやすくなる物語にしています。 家族譚、人間観察の小説、ワクワクする宛先から書く。 音楽も書くことも好きです。 十年以上続くブログ|kanonway.link 小説|kakuyomu.jp/users/kanonway

    あなたへのおすすめ