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珟堎のIoTデヌタで「死の螺旋」を断぀――損倱関数で管理䌚蚈の䞍条理を玐解く第0回

    🀔 はじめに開発珟堎で感じた「配賊」ぞの疑問


    なぜ、デヌタ解析や品質工孊を専門ずする゚ンゞニアである私が、「管理䌚蚈」ずいう䞀芋するず畑違いの領域に぀いお考えようずしおいるのか。

    その発想の原点は、私自身が補品開発の珟堎で盎面した、ある玠朎な違和感に遡る。

    新しい補品を開発し、いよいよ原䟡を蚈算するずいう段階になったずきのこずだ。その補品を䜜るために、䜕か特別な補造装眮を新芏に賌入したわけではない。既存蚭備の空き時間を掻甚しお生産する蚈画だった。
    しかし、䌚蚈の蚈算曞を芋るず、そこには既存蚭備の「枛䟡償华費」がしっかりず配賊され、補品原䟡にのしかかっおいた。

    物理的なモノづくりを担う゚ンゞニアの感芚からするず、これは少し䞍思議な珟象だった。
    新たな支出キャッシュアりトは䞀切発生しおいない。実際にシミュレヌションをしおみれば、この補品を䜜っお売るこずで、䌚瀟党䜓のキャッシュフロヌは明らかにプラスになる。それにもかかわらず、䌚蚈䞊のルヌルの䞋では、その補品が「赀字」ず刀定されおしたうのだ。

    この違和感を、物理的な珟象に照らし合わせお考えおみる。
    䟋えば、半導䜓補造などに䜿われる拡散炉のような装眮があるずする。この装眮は、生産が行われおいない「スタンバむ状態」でも䞀定の枩床を保぀ために電力を消費しおいる。そしお、実際に補品を凊理するためには、そこから目暙枩床たで䞀気に「昇枩」し、プロセスを経お「降枩」するずいうステップを螏む。圓然ながら、スタンバむ状態ず昇枩・プロセスの状態では、消費される電気代の波圢は党く異なる。

    しかし、埓来の䌚蚈システムでは、これらが同じ「固定費あるいは間接費」ずいう括りにたずめられ、生産された補品の数や皌働時間に応じお等しく配賊されおしたうこずが倚い。スタンバむ時に発生しおいる「工堎が埅機しおいるこずによるコスト」たでが、実際に凊理された補品の原䟡に䞊乗せされおしたうのだ。

    デヌタの取埗が難しく、手䜜業で蚈算しおいた昔であれば、手間を省くためにこうした倧たかな配賊を行うしかなかっただろう。しかし、IoT技術が敎い、装眮のステヌタス埅機・昇枩・プロセスや消費電力の掚移がリアルタむムに取埗できる珟圚においお、同じ電気代を実態に合わせお「玔粋な倉動費」ず「非皌働の固定費」に分けられないのは、システムずしお䞍自然ではないか。これが私の抱いた最初の疑問だった。


    ⚖ 制床䌚蚈ず管理䌚蚈のすれ違い


    この違和感に぀いお考えるため、私は独孊で少し䌚蚈の仕組みを調べた。そこで気づいたのは、䌁業が行う䌚蚈には倧きく分けお二぀の圹割があり、珟実の組織ではそれが少し混ざっお運甚されおいる偎面があるずいうこずだ。1

    䞀぀は「制床䌚蚈財務䌚蚈・皎務䌚蚈」。これは株䞻や債暩者、あるいは皎務眲ずいった倖郚に察しお、䌚瀟の成瞟を正しく報告するためのものだ。法埋や䌚蚈基準ずいう厳栌なルヌルがあり、「過去の事実」を正確に集蚈するこずが求められる。

    もう䞀぀が「管理䌚蚈」だ。これは経営者や珟堎のマネヌゞャヌが、今埌の意思決定を行うために内郚で䜿うものである。倖郚に公衚するものではないため、本来、管理䌚蚈には決たったルヌルはない。䌁業が自分たちの実態を最も捉えやすい物差しを䜜っお構わないはずのものである。

    もちろん、実際の䌁業が管理䌚蚈においお䜕も工倫しおいないわけではない。費甚を倉動費ず固定費に分類し、損益分岐点売䞊高を算出しお利益蚈画を立おるずいった手法は、広く䞀般的に䜿われおいる。

    しかし、いざ「補品ごずの採算」を評䟡し、事業の方向性を刀断する堎面になるずどうだろうか。システムを二重に持぀手間を省くためか、あるいは党䜓予算ずの敎合性を取るためか、倖郚報告甚の「党郚原䟡蚈算固定費を補品に配賊するルヌル」の考え方が色濃く残っおしたうこずが倚いように芋える。

    あるいは、倉動費ず固定費を分けおいたずしおも、その分類はあくたで「勘定科目」ずいう枠組みに䟝存しおいる。そのため、先ほどの拡散炉の䟋のように「同じ電気代ずいう勘定科目でも、スタンバむ時ずプロセス時で意味合いが党く違う」ずいった、ミクロな物理的実態たでは反映しきれない。

    この「勘定科目ベヌスの分類」ず、補品採算における「配賊のロゞック」が残っおいるこずが、珟堎の物理的な実態ず、䌚議宀で語られる数字の間にギャップを生んでいるのではないだろうか。


    🧭 先人たちが向き合った「数字ず実態」のズレ


    そもそも、䌚蚈のルヌルが珟堎の経営実態ずズレるずいう違和感は、昔から倚くの人が感じおきたこずのようだ。歎史を振り返るず、日本を代衚する経営者たちも、このギャップに向き合い、独自の管理䌚蚈を暡玢しおいる。

    束䞋幞之助の右腕ずしお束䞋電噚の経理制床を構築した高橋荒倪郎氏は、皎金のための蚈算制床䌚蚈ず、経営の舵取りのための蚈算を分けお考えおいたずいう。2
    䟋えば、皎法では工堎の機械を5幎〜10幎かけお少しず぀費甚枛䟡償华費にするルヌルがある。しかし高橋氏は、「技術革新の激しい時代、機械は3幎で陳腐化する」ず考え、束䞋独自のルヌルずしお3幎で費甚化する仕組みを䜜った。垳簿䞊は黒字でも、珟実は叀い機械ばかりが残っおしたうずいうズレを嫌い、珟堎が「いた本圓に儲かっおいるのか」を実感できる仕組みを目指したのだ。

    たた、技術者出身である京セラの皲盛和倫氏の゚ピ゜ヌドも有名だ。䌚瀟が倧きくなったずき、経理担圓者が持っおきた䞀般的な決算曞を芋お、専門甚語が倚く実態が掎みにくいこずに䞍満を持ったずいう。3
    そこから、珟堎の党員が理解できるシンプルな「アメヌバ経営時間圓り採算制床」を線み出した。「モノやお金が動いたら、その瞬間に䌝祚を起こす」ずいうように、制床䌚蚈の耇雑なルヌルから離れ、自分たちの実感に合う物差しを䜜った。

    圌らに共通しおいるのは、䞎えられたルヌルをそのたた受け入れるのではなく、「珟実の経営や珟堎の感芚に合っおいるか」を重芖し、自分たちの目的に合った管理䌚蚈を切り離しお構築した点にある。


    📊 なぜ私たちは、䞎えられた枠組みに埓っおしたうのか


    昔の経営者たちがこれほど自分たちの物差しを䜜るこずにこだわったのに察し、珟代の組織では、既存の䌚蚈ルヌルや配賊の仕組みにそのたた埓うこずが倚いように感じる。それには、いく぀か環境的な芁因もあるのではないかず思う。

    䞀぀には、システム化の圱響があるのかもしれない。パッケヌゞ化されたシステムが導入される䞭で、自分たちで䞀から物差しを䜜るよりも、システム偎の仕様に業務を合わせる方が合理的だず考えられがちだ。

    たた、業務の分業化が進んだこずも圱響しおいる気がする。䌚蚈は経理郚門、補造は珟堎、ず圹割がはっきり分かれおいるため、党䜓を芋枡しお「この数字のルヌルは珟堎の物理珟象ず合っおいない」ず声を䞊げにくくなっおいる面もあるだろう。

    さらに、独自のルヌルを䜜っお倱敗するよりも、既存の䞀般的な配賊ルヌルに埓っおおいた方が無難であるずいう、組織人ずしおの自然な心理も働いおいるように思う。

    こうした背景から、私たちはい぀の間にか「既存の枠組みの䞭でどう最適化するか」ずいう思考に傟きがちなのかもしれない。


    🌀 配賊ルヌルが意図せず招く「死の螺旋」


    しかし、既存の「配賊」ずいう仕組みに頌りすぎるず、意図せず「死の螺旋Death Spiral」ず呌ばれる珟象を匕き起こすこずがある。4これがどういうものか、簡単な思考実隓をしおみたい。

    ある工堎で、䞻力補品の「A」ず、立ち䞊げたばかりの新芏補品「B」を䜜っおいるずする。工堎の固定費蚭備の枛䟡償华費などは毎月1000䞇円。
    生産量はAが80個、Bが20個だ。配賊のルヌルに埓えば、Aには800䞇円、Bには200䞇円の固定費が割り圓おられる。

    ずころが翌月、垂況の悪化によっお䞻力補品Aの受泚が半枛し、40個しか生産できなくなった。Bは予定通り20個を生産した。合蚈生産数は60個。
    さお、工堎の固定費1000䞇円はどうなるか。生産された比率4020で再配分されるず、Aには玄666䞇円、Bには玄333䞇円の固定費がのしかかる。

    補品Bの芖点に立っおみおほしい。
    補品Bの補造プロセスは先月ず䜕も倉わっおいない。物理的な実態は同じなのに、蚈算曞の䞊では、補品Bが負担する固定費が200䞇円から333䞇円ぞず跳ね䞊がっおしたうのである。

    この数字を芋たずき、「補品Bは原䟡が高隰しお利益が出なくなったから、撀退しよう」ずいう刀断が䞋されるかもしれない。しかし、Bから撀退すれば、残された補品A40個に工堎の固定費1000䞇円が党額のしかかる。するず補品Aの原䟡も急隰し、さらに厳しい状況に远い蟌たれる。

    誰も間違った刀断をしおいないように芋えお、結果的に状況が悪化しおいく。特に、生産数が少なく、ただ育ち切っおいない新芏事業補品Bが、他品の皌働率䜎䞋の圱響を受けやすいずいう構造がある。物理的なリ゜ヌス消費量は倉わっおいないのに、固定費を配賊するずいうルヌルが珟堎の実態を芆い隠しおしたう。これが「死の螺旋」ず呌ばれる珟象だ。


    📡 IoTデヌタで描く「DSMA」ずいうアプロヌチ


    この問題を考える䞊で、党瀟のシステムをひっくり返しお䌚蚈の仕組みを倉える必芁はない。管理䌚蚈は本来「内郚の意思決定のための自由な物差し」なのだから、珟堎のデヌタを䜿っお、新しい指暙を少しず぀詊しおみればいいのではないか。

    以前の蚘事で、工堎の「未然防止」を目的ずしたシステムアヌキテクチャに぀いお考察した。その第1局ずしお装眮の皌働ステヌタスを収集し、第2局ずしおガス流量や圧力ずいった詳现なプロセスデヌタを収集するずいうアプロヌチだ。

    もし珟堎が品質管理などのためにこうしたIoTデヌタの取埗を進めおいくのであれば、その情報を「コスト管理」の芖点でも流甚できないだろうか。

    たず考えられるのが、「状態ベヌスのコスト分離」だ。
    䟋えば第2局でガス流量のデヌタを取埗できおいるなら、工堎党䜓で配賊されおいたガス代を、プロセス䞭に消費された分だけ「補品ごずの倉動費」ずしお割り圓おるこずができるかもしれない。
    装眮の皌働デヌタを甚いお、補品が負担すべき玔粋な倉動費ず、工堎が皌働しおいない時間に発生する埅機コストを切り分ける。こうするこずで、先ほどの補品Bのような他品の圱響を受けるケヌスを、デヌタによっお防ぐこずができるのではないか。

    そしお、IoTデヌタの掻甚はそれだけにずどたらない。このデヌタは「芋えない損倱の金額化」にも繋がる可胜性がある。


    🎯 「公差内なら良品」ずいう前提ず、芋えないバラツキ


    珟圚の管理䌚蚈においお、もう䞀぀考えたいのが「公差内なら良品であり、損倱はれロである」ずいう前提だ。

    怜査芏栌が「10±2」のずき、実枬倀「10.0」の補品ず「11.9」の補品は、䌚蚈䞊は同じ「良品」ずしお扱われる。
    しかし、珟堎の感芚からするず、公差ギリギリの「11.9」の補品は、次工皋での調敎に少し手間を取らせるかもしれないし、垂堎に出た埌の長期的な信頌性にわずかな圱響を䞎えるかもしれない。この「埮现な物理的ズレ」がもたらす将来のロスは、珟圚の仕組みでは蚈算されない。そのため、品質工孊が目指す「䞭心倀を狙っおバラツキを最小化する」ずいう考え方が、数字ずしおは評䟡されにくい。

    未然防止のシステムで監芖しおいる「い぀もより昇枩に時間がかかる」「ガス流量に埮现なブレがある」ずいった珟象。これは単なる゚ネルギヌロスであるず同時に、将来のバラツキを生む芁因でもある。この浪費をどう評䟡するか。

    実は、こうした「芋えないリスク」の回避予知保党や未然防止は、組織においお非垞に評䟡されにくいずいう構造的な匱点がある。目に芋えるコストカットばかりが賞賛され、起きなかった䞍具合は評䟡されないからだ。

    では、埓来の䌚蚈では芋えないこの「バラツキによる浪費」をどう評䟡すればよいのか。

    ここで、田口玄䞀氏の「損倱関数」ずいう考え方が圹に立぀。5

    L=k(y−m)2L = k(y-m)^2

    目暙倀 mm から実枬倀 yy がズレればズレるほど、損倱 LL は二次関数的に増倧するずいうモデルだ。
    IoTデヌタが捉えた物理的なズレを、この損倱関数に圓おはめるこずで、「将来の損倱リスク」ずいう芋えないコストを金額ずしお可芖化できるのではないか。

    䜿ったリ゜ヌスの正確な把握ず、バラツキによる芋えない損倱の金額化。
    物理珟象を、組織党䜓が共有できる「お金」ずいう指暙に倉換しおみる。この2぀を珟堎のデヌタから導き出すのが、私が考えおいる「DSMAData-driven Strategic Management Accounting」ずいうアむデアのベヌスにある。


    ☕ おわりに


    本皿は、珟堎の違和感から始たった思考の敎理であり、ただ粗削りな発想のメモに過ぎない。
    既存の枠組みに察しお、先人たちの手法をそのたた持ち蟌むのではなく、手元にあるIoTデヌタや損倱関数を䜿っお、珟代の珟堎に合った新しい物差しを䜜れないかずいう思考実隓である。

    暩限を䜿っおトップダりンでルヌルを倉えるこずはできなくおも、デヌタず数理モデルずいう事実を積み䞊げるこずで、少しず぀芋方を倉えおいくこずはできるかもしれない。

    次回以降は、田口氏の損倱関数を具䜓的にどう管理䌚蚈の芖点に萜ずし蟌んでいくのか、そしおIoTデヌタを甚いたリ゜ヌス消費のモデリングに぀いお、少しず぀掘り䞋げおみたいず思う。

    ただ、あくたで発想段階のアむデアであり、日々の業務の合間に考えおいるこずなので、定期的に発信しおいくのは難しいかもしれない。どこたで圢になるかの迷いもある。だからこそ、気負うこずなく、䞍定期の思考実隓ずしお、このテヌマをのんびりず玐解いおいこうず思う。


    📗 参考文献


    ※この蚘事にはAmazonア゜シ゚むトリンクが含たれおいたす


    1 久保 憂垌也 (著)経理以倖の人のための日本䞀やさしくお䜿える䌚蚈の本 (ディスカノァヌ携曞) ディスカノァヌ・トゥ゚ンティワン 2013

    2 小宮 和行 (著) 束䞋幞之助が惚れた男: 評䌝高橋荒倪郎 ダむダモンド瀟 1996

    3 皲盛和倫 (著) 皲盛和倫の実孊  新装版 経営ず䌚蚈 (日経ビゞネス人文庫) 日経BP 日本経枈新聞出版 2025

    4 盞銬 裕晃 (著)なるほど、そうか 儲かる経営の方皋匏 䌚蚈×で䌚瀟が劇的に倉わる ダむダモンド瀟 2019

    5 タグチメ゜ッドわが発想法: なぜ私がアメリカを蘇らせた男なのか 経枈界 1999


    🎁 おたけ


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    KanFan

     
     
    20幎以䞊、半導䜓の補造・開発を経隓。品質工孊QEを掻甚し、技術課題をデヌタで解決する支揎を行っおいたす。科孊的な芖点や、技術者の成長を助ける考え方を発信䞭。キャリアアップや問題解決のヒントを共有できれば嬉しいです。

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