
北関東の侍。【初回編】
笑いあり涙ありの作品👇👇
「お気に入りにしたく候。」
そのセラピストに初めて会ったとき、
俺は思った。
「あ、これは危ない。」
何が危ないのかは、
まだ自分でも分からなかった。
身長は157センチくらい。
小柄。
そして笑顔がいい。
愛嬌もある。
ノリもいい。
芸能人でいうなら、
芳根京子さんっぽい。
……いや。
これは強い。
小柄で、笑顔がよくて、
愛嬌があって、ノリもいい。
そしてEカップ。
情報だけ並べたら、
もはや俺の煩悩に対する集中砲火である。
ただ。
この子の魅力は、
そこじゃなかった。
会話のテンポがいい。
こっちがふざければ乗ってくる。
少しくだらないことを言っても、
笑ってくれる。
そして何より、
「この子、絶対性格いいだろ」
と思わせる何かがある。
メンエスに通っていると、
たまにいる。
技術がめちゃくちゃ高い子。
ルックスがどストライクな子。
接客が完璧な子。
でも、この子は少し違った。
なんというか。
一緒にいて楽しい。
施術を受けに来たはずなのに、
気づけば普通に会話を楽しんでいる。
そして俺は、
ある言葉を口にした。
「お気に入りにしたく申し候。」
すると彼女は、
一切ためらうことなく、
「かたじけない。」
と返してきた。
……
好き。
いや。
そういうところだ。
なんなんだ、この子。
普通、
「ありがとうございます」
とか、
「嬉しいです」
じゃないのか。
「かたじけない。」
って。
侍か。
俺は心の中で思った。
この子――
ただ者じゃない。
そしてこの日から、
俺の中で彼女は、
ただのセラピストではなくなった。
俺は彼女を、
こう呼ぶことにした。
サムセラ。
侍の心を持つセラピスト。
果たして俺は、
このサムセラに何度通うことになるのか。
この時の俺は、
まだ知らなかった。
――いや。
たぶん薄々気づいていた。
俺、
この子のこと、
かなり好きになる。
そんな予感がしていた。
次回へ