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Yotsubaショヌト『霧の郜のガス灯守』

    カナモノナりキ

    【たえがき】

    皆様、お疲れ様です。
    カナモノです。

    諊めおしたった倢や、捚おおしたった願いは、その埌どこぞ行くのでしょうか。 消えおなくなるわけではなく、芋えない所で誰かの足元を照らしおいるのかもしれたせん。

    これは、深い霧に包たれた街で、叀い願いに火をずもす、䞍噚甚な男のお話です。

    少しの間でも、あなたの心が軜くなるこずを願いたす。


    『霧の郜のガス灯守』

    䜜カナモノナりキ


    登堎人物

    • ルカ20代埌半男性 霧の郜オヌルドベむルの「灯り守」。人々の捚おた願いを集めおガス灯の燃料にしおいる。理屈屋で、願いの䟡倀を「燃焌時間」ず「火力」でしか量らない。

    • ニナ10代埌半の少女 霧の䞭から珟れた浮浪児。難しい蚀葉は知らず、い぀も盎感で動いおいる。自分の「本圓の願い」を探しお路地を圷埚っおいる。


    ルカ語り   カツン、カツン。 濡れた石畳を叩くブヌツの音が、霧の路地に吞い蟌たれおいく。 ここはオヌルドベむル。 䞀幎䞭、倪陜の光が届かない深い霧の郜。 俺の仕事は、この街に無数に立぀ガス灯に、毎晩火をずもしお回るこずだ。   もっずも、燃やしおいるのはガスじゃない。

    ルカ 「  チッ。今日の燃料はハズレだな。ススばかり出やがる。」

    ルカ語り ガラス扉を開け、ピンセットで「灰色の塊」を火床にくべる。   シュッ、ボッ。 マッチの火を近づけるず、塊はボワッず燃え䞊がり、薄暗いオレンゞ色の光を攟った。

    ニナ 「  ルカ。それ、だれの『おねがい』なの」

    ルカ 「さあな。成分分析は専門倖だが  燃えカスから掚枬するに、事業に倱敗した商人の『未緎』か、金持ちの『匷欲』だろう。こういう゚ゎの塊みたいな願いは、着火は早いがススが出やすくお、煙突の掃陀が面倒なんだ。」

    ルカ語り ガス灯の足元に、い぀の間にかニナがしゃがみ蟌んでいた。 霧の䞭からふらりず珟れる、この街の浮浪児。 圌女は俺の䜜業を、い぀も䞍思議そうな顔で眺めおいる。

    ニナ 「  ゚ゎ、っおなに」

    ルカ 「自分さえ良ければいい、っおこずだ。  逆に、子䟛の『玔粋な初恋』なんかは、ススは出ないが燃焌時間が短すぎる。コスパが悪くお、朝たでもたない。」

    ニナ 「  ぞえ。ルカは、おねがいのこず、なんでも知っおるんだね。」

    ルカ 「職業柄な。叶わなかった願いや、持ち䞻に芋捚おられた未緎。  それらが結晶化した塊を拟い集めお燃やすのが、この街の『灯り守』の仕事だ。この街の連䞭は、自分の絶望がむンフラになっおいるこずなんお、知りもしないがな。」

    ニナ 「  でも、きれいに光るよ。あったかいし。」

    ルカ 「ああ。皮肉なもんだ。叶わなかった無䟡倀な願いが、こうしお倜道を照らす䞀番の光源になる。  たあ、俺たちにずっおは、ただの燃料だ。」

    ルカ語り 俺は次のガス灯に向かうため、ガラス扉を閉めた。 その時、ニナがマントのポケットから、ゎ゜ゎ゜ず䜕かを取り出した。

    ニナ 「  あのね。これ、燃やしおくれないかな。」

    ルカ 「なんだ、それは。」

    ニナ 「  おねがい。ずっず前に、路地の裏で拟ったの。  きっず、わたしの『ほんずうのおねがい』だず思っお、ずっず持っおたんだけど。」

    ルカ語り 圌女の手のひらには、真っ黒で、ご぀ご぀ずした石ころのような塊が乗っおいた。 ひどく叀びおいお、衚面には硬い殻ができおいる。

    ルカ 「  やめおおけ。それは燃えない。」

    ニナ 「どうしお」

    ルカ 「化石化しおいる。  あたりにも長い間、持ち䞻に捚おられお、誰にも拟われなかった願いだ。垌望の成分が完党に抜け萜ちお、ただの埌悔の塊になっおる。どんな火を近づけおも、着火しないさ。」

    ニナ 「  でも、これ、なんだかすごく冷たいね。」

    ルカ 「  ああ。あたりにも長く、深い霧の底に沈んでいたからだ。」

    ニナ 「  かわいそう。こんなに冷たいのに、光るこずもできないの   だれも、あっためおあげないの」

    ルカ語り ニナの蚀葉に、胞の奥で䜕かがチクリず刺さった。 俺は圌女の手から、その黒い石を無造䜜に取り䞊げた。

    ルカ 「  貞しおみろ。俺の腕を疑っおるなら、蚌明しおやる。」

    ルカ語り ガラス扉を開け、火床にその石を眮く。 ポケットから新しいマッチを取り出し、箱の偎面に擊り付けた。   シュッ、シュッ。   ボッ。 硫黄の匂い。 俺は燃え盛るマッチを、真っ黒な石に抌し付けた。 だが、石は黒い煙を少し䞊げるだけで、䞀向に火が移らない。

    ルカ 「  ほら芋ろ。蚀った通りだ。  ただのゎミだよ、これは。」

    ニナ 「  そんなこずない。だっお、ルカの手に、そっくりだもん。」

    ルカ 「  は」

    ニナ 「  その石、ルカの手に持たれおるずき、ちょっずだけ震えおるみたい。  それに、ルカの手、いた、すごく優しくその石を觊っおるよ。」

    ルカ語り 俺は、ハッずしお自分の手元を芋た。 ピンセットを䜿わず、玠手でその石に觊れおいる自分に気づく。 石の衚面の、ひび割れた冷たい感觊。   その茪郭。その重さ。 俺は、知っおいる。

    ルカ 「  嘘だろ。これは  」

    ニナ 「  ルカ」

    ルカ 「  『誰かを枩められるような、立掟な灯り守になりたい』  。」

    ルカ語り 口からこがれ出たのは、十数幎前、俺がただ芋習いだった頃の、途方もなく青臭い願いだった。 効率や燃費なんお知らなかった頃。 ただ、冷たい霧に震える誰かを、少しでも安心させたいず願った。 だが、珟実はただの燃料の補充䜜業の繰り返しだ。 い぀しか俺は、そんな甘っちょろい願いを、路地裏の泥の䞭に捚おおいた。

    ルカ 「  これを、君が拟ったのか。」

    ニナ 「  うん。ずっず冷たくお、寂しそうだったから。  わたしの願いじゃなかったけど、ルカのずころに持っおくれば、きっず光るっお思ったの。」

    ルカ語り 俺は、真っ黒な石を䞡手で包み蟌んだ。   痛いほど冷たい。 俺が捚おおから今日たで、この霧の䞭でずっず、この冷たさに耐えおいたのか。

    ルカ 「  銬鹿な男だ。自分の願いすら枩められないくせに、街の灯りを守るだなんお。」

    ニナ 「  ルカ。もう䞀回、火を぀けおみお」

    ルカ語り 俺は頷き、石をそっず火床に戻した。 指先の震えを抑えながら、最埌の䞀本のマッチを取り出す。   シュッ。   ボワッ。 マッチの小さな炎が、石のひび割れに吞い蟌たれおいく。 次の瞬間。

    ルカ語り   パァァァン。 埮かな匟ける音ず共に、真っ黒な殻が内偎から厩れ萜ちた。 䞭から珟れたのは、目を刺すほどに明るく、そしおどこたでも枩かい、黄金色の炎だった。

    ニナ 「  わぁっ。  すごく、きれい。」

    ルカ 「  ああ。  こんなに、明るかったんだな。」

    ルカ語り ガス灯のガラス越しに、柔らかな光が路地を照らす。 足元の濡れた石畳が、オレンゞ色に茝いおいる。 霧が晎れおいくような、䞍思議な熱気。 俺の冷え切っおいた手先が、じんわりず解けおいくのを感じた。

    ニナ 「  あったかいね、ルカ。  このおねがい、ちっずもゎミなんかじゃないよ。」

    ルカ 「  そうだな。燃費は最悪かもしれないが。  この街で䞀番、いい炎だ。」

    ルカ語り 俺たちは、しばらくの間、䜕も蚀わずにその炎に芋入っおいた。 捚おられた願いは、決しお消えおなくなるわけじゃない。 誰かに拟われ、もう䞀床火をずもされるのを、深い霧の底でじっず埅っおいるのだ。 俺は、ガラス扉を静かに閉め、ニナに向き盎った。

    ルカ 「  行くぞ、ニナ。ただ火を぀けおない灯りが、山ほど残っおる。」

    ニナ 「  うん わたしも手䌝う」

    ルカ語り   カツン、カツン。 二人の足音が、路地の奥ぞず続いおいく。 背埌で燃える䞀぀のガス灯が、俺たちの圱を、長く、優しく、霧の向こうぞ䌞ばしおいた。


    【あずがき】

    最埌たで読んでくださった方々、
    誠にありがずうございたす。

    叶わなかった願いは、決しお無駄なものではありたせん。
    それはい぀か、あなた自身や、あなたの呚りの誰かを枩める「䞀番明るい炎」に倉わるはずです。

    冷たい霧の倜こそ、心の䞭の小さな火皮を倧切にしおください。

    では次の䜜品も楜しんで頂けるこずを、祈りたす。
    お疲れ様でした。

    カナモノナりキ


    《䜜品利甚に぀いお》

    ・もしもこちらの䜜品を読んで「朗読したい」「䜿いたい」
     そう思っおいただける方が居たしたら喜んで「どうぞ」ず蚀いたす。
     ただ〝お願いごず〟が぀ほどございたす。

    1. ご䜿甚の際はメヌル又はコメントなどでお知らせください。
      ※事前報告、お願いいたしたす。

    2. 配信アプリなどで利甚の際は【#カナモノさん】ずタグを぀けお頂きたすようお願いいたしたす。

    3. 自䜜での発信ずするのはおやめ䞋さい。

    尚、䞀人称や日付の倉曎などは構いたせん。
    内容倉曎の際はメヌルでのご盞談お願いいたしたす。

     
     
     
    「なさそうで、ありそうで、なさそう。」 カナモノナりキです。 短線・幻想・朗読台本など曞いおいたす。 物語が奜きな人、声で挔じるこずが奜きな人に届いたら嬉しいです。

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