
となりのトップランカー #54 | かわりばんこなあなた【本指名様 90分コース(前編)】
「愛する」ことも、「愛される」ことも、
どちらも同じくらいの熱量で楽しみたい。
それはプライベートの恋人同士が交わす時間に、
最も近い空気を醸し出します。
今回は【本指名・90分コース】という時間の中で、
お互いの呼吸を覚え、重ね合っていくプロセスを
紐解いてみたいと思います。
本指名料の価値
ネット上の掲示板などを覗くと、
「フリー(新規)のお客様には手を抜く」
と公言するキャストの声を見かけることがあります。
ですが、
私はそうした線引きをしたことがありません。
そもそも私のお店では、お部屋に呼ばれた段階で
「本指名」か「新規」かは知らされても、
新規のお客様がフリーなのか、
指名して選んでくださったのかまでは
教えてくれません。
事前にHPをチェックしたり、
日記を読んで来てくださったのか、
スタッフに勧められたのか、それとも偶然なのか。
その経緯はお客様の口から聞かない限り
分からないのです。
初めての方であっても、
何度も通ってくださる本指名の方であっても、
出張で滅多に来ないと分かっている方でも、
目の前にいるお一人おひとりが
大切なご縁であることに変わりはありません。
どなたに対しても、
その時持てる全力で向き合っています。
そう書くと、
「では、わざわざ指名料を払って通い詰めている
本指名客は損をしているのか」
と思われるかもしれません。
ですが、決してそんなことはありません。
形式的には同じであったとしても、
その触れ合いの中身には
決定的に異なるものがあります。
それは、「二人の間の心の距離」です。
これは意識して演じ分けられるものではなく、
時間をかけて積み重ねた信頼があるからこそ、
肌の触れ合いを通して自然と滲み出てしまうもの。
誰でも同じという訳でもない。
その方としか生み出せない熱量の空間です。
指名料という対価の先にある、
目には見えない一段熱いその体温を、
本指名のお客様には確かに
受け取っていただけていると信じています。
今、この瞬間のあなたと私
シャワーを浴び終えてベッドに滑り込むと、
自然に差し出された腕を枕にして横たわります。
私は左側にいる方が心が落ち着くため、
胸の前から腕を回し、
あなたの右肩へそっと手を添えます。
何度も私を指名してくださる方は、
私のスイッチがキスから入ることを
すでにご存知ですね。
最初は唇を確かめ合うような、淡いキス。
そこから徐々に体温を分かち合う
深い口づけへと沈んでいくと、
あなたはゆっくりと身を起こし、
私の上に重なってきます。
最初は、私が愛される番です。
そっと首筋に触れられると、
自然と微かな吐息が零れます。
耳やうなじは、私の弱点です。
指で触れられても、舌先でなぞられても、
敏感に反応してしまいます。
キャストによっては顔付近を嫌がる方も
いるようですが、
私はショートヘアということもあり、
存分に愛でていただいて構わないと思っています。
日々の手入れを重ねているため、
肌の質感にはそれなりの自負があります。
けれど――
胸にだけは、
ずっとコンプレックスを抱えていました。
出産や育児を経たこと、
そして過去に体調を崩して体重がひと月に
7キロも落ちてしまった時期があったこと。
デコルテの骨が浮き出るほど痩せこけ、
かつてDカップあった胸は
Bカップまで削げ落ちてしまいました。
鏡を見るたびに、
女としての自信が崩れていくような、
言葉にできない悲しさを覚えたものです。
そこから人知れず、懸命に身体のケアに励みました。
失われた輪郭を取り戻そうと努力を重ね、
この夜のお仕事を始める頃には、
再びDカップまで戻すことができました。
ですが、現実を知る大人の男性なら
お分かりいただける通り、
下着の補正力で作ったDカップは、
決して豊かなものではありません。
私は体型そのものが小柄なので、特にです。
かつて、素の身体を晒した際に、
「これで本当にDカップなの?」
と言われてしまったことがあり、
とてもショックでした。
だからこそ、私の胸を触っても
男性はあまり楽しくないのではないか、
物足りないのではないかという引け目が、
心のどこかにずっと残っていました。
けれど、お客様の中には、
その胸をとても丁寧に愛撫してくださる方がいます。
先端だけをつまむような雑な真似は決してせず、
大きな手のひら全体で、包み込むように、
温めるように慈しんでくださるのです。
男性の大きな手に対して、
私の胸は決して豊かな柔らかさとは
言えないはずです。
それでも、そんなことはまるで関係ないかのように、
慈愛を込めて肌を滑るその手のひらに
触れられていると、
胸の奥に澱んでいた劣等感が
静かに溶けていくのを感じます。
このコンプレックスを、
私はお客様に打ち明けたことはありません。
きっと皆様は私の葛藤など露知らず、
ただご自身の優しい気持ちのままに
私の身体を大切にしてくださっているだけ
なのでしょう。
それでも、自分が長年悩み、
隠したかった場所に優しく触れてもらえることは、
女として何にも代えがたい救いになります。
誰しも、人には言えない傷や
コンプレックスを抱えています。
それは胸の形かもしれないし、
年齢を重ねたお腹のたるみや、
肌の質感かもしれません。
他の人から見れば気づきもしないことが、
本人にとっては大きな悩みであったりします。
衣服を脱ぎ捨て、
互いのありのままを慈しみ合うこと。
裸の人間同士が肌を重ね合うことの美しさは、
まさにここにあるのだと思います。
このお仕事を始めてたくさんの男性の素肌に
触れてきましたが、外見の造形など、
その人を形作るごく一面に過ぎないのだ
と痛感します。
身だしなみや清潔感は、
大人の嗜みとして努力で補うことができます。
私も一人の大人の女性として、
そして日々男性と触れ合う身として、
日頃から時間と手間をかけて
自分を磨くことを怠りません。
けれど、どれほど努力を重ねても、
消えない傷や変えられない現実があります。
そんな、
いつも頭から離れない頑固なコンプレックスも、
あなたの腕の中にいるときだけは、
どうでもよくなるのです。
そこにいるのは、
今、この瞬間のあなたと私。
変えられない傷を抱えたまま、
待ったなしで今を生きている二人の人間が、
互いの不完全さごと受け止め合おうとしている。
そんな尊い瞬間に、何かを隠してしまうなんて、
あまりにももったいない。
私のコンプレックスをその温かい手で
包み込んでくれたように、
私もまた、あなたのすべてを
ありのまま受け止めたい。
そんな祈りが届くように想いを込めながら、
私はあなたの逞しい背中にそっと腕を回し、
あなたに触れられる幸福にただ身を委ねるのです。
(皆様に大切に扱っていただけたことや、
日々の地道なケアの甲斐もあってか、
コンプレックスだった私の胸は
Eカップまで育ってくれました。
それは私にとって、女として密かで、
とても大きな喜びでした)
2026年9月16日
KANA
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