
となりのトップランカー #41 | 夜の華の心得② ~性感覚~
夜の華として働き始めて最初の1年間で、
延べ400人弱のお客様と肌を重ねてきました。
そんな私が金銭感覚と同じくらい大切にし、
見失わないように守り続けているのが
「性感覚」です。
お仕事とプライベートの境界
私はもともと、
男性が得意な方ではありませんでした。
幼少期に相次いで痴漢被害に遭ったトラウマから、
男性の“性”に対して強い恐怖心を
抱いて育ちました。
学生時代は男女のリアルな恋愛から
逃げるように過ごし、
大人になって初めて「怖くない」と思えた
男性と結婚し、
限られた経験しか持たないまま生きてきました。
そんな私が、いまや夜の街で人気キャストとして
無数の男性と肌を重ねている。
人生とは本当に、何があるか分からないものです。
冒頭で述べた通り、2024年の1年だけでも、
驚くほどたくさんの男性と
肌で触れ合いました。
そんなある時、自分の貞操観念が
フッと心配になったのです。
「お客様の前で服を脱ぎ、
初対面で肌を重ねることに抵抗がなくなった私は、
プライベートでも誰とでもできる女に
なってしまったのだろうか?」
その疑問に答えが出たのは、
思いがけず参加することになった
既婚者同士の出会いの場で知り合った、
ある男性との出来事でした。
既婚者の失態
ランチ会だと友人に誘われて参加したその会は、
既婚者同士の合コンのようなもので、
出会いを求める男女が十数名参加していました。
私は恋人を作る気がないので、
申し訳なく思いながらつつがなく
過ごしていましたが、
一人の方と話が合い連絡先を交換しました。
恋愛がしたいというより、
婚外に出会いを求める方は家庭内に
どんな問題があるのか、
それをどう消化しているのかが気になったのです。
そして後日、二人で食事に行くことになりました。
その方は40歳で、
私と同じくらいのお子さんが2人います。
奥様とは学生時代からの長い付き合いで、
交際期間を含めるともう20年以上の付き合い
になると言います。
そうなるともう家族のようなもので、
レスも長く、そういう対象として
見られなくなったのが寂しい。
男としてこのまま終わりたくないという気持ちで
参加されていたそうです。
見た目も清潔感も悪くない方でしたが、
会話や食事の中で気遣いの足りない姿勢が
見え隠れし、たまに会う友人としては良くても、
男性としての魅力は残念ながら
感じられませんでした。
やっと2軒目から解放されて、
私はもう帰りたかったのですが、
もう少し話したいと言われ誘導されたのは、
あろうことか私のお店の近くにある
ホテル街でした。
見覚えのある景色に内心すごく焦り始め、
立ち飲みと歩き回ったおかげで
足も疲れていたので、
「絶対に何もしないから」という
言葉に押し切られ、断りきれずに
ホテルに入ってしまったのです。
もちろん「何もしない」わけはなく、
部屋に入るなり彼は服を脱ぎ、
キスを迫ってきました。
こうなることなんて、わかっていたのに。
簡単に引っかかってしまって、
私は自分のことが本当にバカだなぁと
思ってしまいました。
たくさんの男性と触れ合っていると、
唇の合わせ方だけでその方の手練手管が
なんとなくわかってしまいます。
お可哀想に。
こちらを百戦錬磨の夜の華と知らず、
軽率に手を出してくるなんて。
キスは耐えられました。
が、それ以上は無理だと
心のシャッターが完全に閉まりました。
彼が私の服を脱がそうと、
無遠慮に袖を引っ張った瞬間、
私はその方を突き飛ばしました。
「ごめんなさい!本当に無理です!」
その後、どれほどしぶられても、
絶対に一線を許しませんでした。
結局、1時間も経たないうちに
そのままホテルを後にしました。
アラフォーにして、
「ホテルに入ったのに何もせず拒絶して帰る」
という大失敗をやらかしたわけですが、
私にとっては非常に大きな意味を持つ出来事でした。
お仕事でどれほど男性と肌を重ねていても、
プライベートの私は、
心も身体も惹かれていない相手には
絶対に服を脱がない。
私の貞操観念は、
何一つ壊れていなかったのだとわかったからです。
夜の華の道しるべ
風俗嬢としての私が提供しているのは、
あくまでルールと対価に基づいた
「一時の性の発散」です。
お客様とのプレイで気持ち良くなることも、
身体が反応することもあります。
けれどそこに、
愛を含んだ「心」は含まれていません。
泡のように消えていく一時の欲求だからこそ、
割り切って提供できるのです。
性欲は食欲や睡眠欲と同じく、
過剰に摂取したからといって
永遠に満たされることはなく、
またすぐに欲しくなってしまうものです。
浮かんでは消えていくものだからこそ、
特別執着もせずいられるのかもしれません。
けれど、そこに「心」を含めてしまったら、
需要と供給のバランスが崩れてしまいます。
私は「心」まで売り物にしていないことに、
とても安心しました。
仕事として割り切る「かなちゃん」の自分と、
心と尊厳を守り続ける本当の自分。
その二人がきちんと明確に分けられているなら、
私はいつの日かきっと、一人の私に戻ることができます。
金銭感覚と、性感覚。
二つの道しるべを大切に抱えて、
夜の華は微笑んでいるのです。
2026年8月2日
KANA
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