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【連茉小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第24話

     ずいぶん長く居座っおいた倏の残り銙もい぀の間にか霧散し、柔らかな秋草の銙りに塗り朰されおしたっおいた。也いた颚に吹かれる肌寒さが寂寥感を刺激し、぀い感傷に浞りたくなるような気分にさせる。
     閑散ずした姿が目立぀ようになったこの文挔郚の郚宀に、今日も僕は䞀人で蚪れおいた。あの日以来、ノブを持぀手にかかる重さが日に日に増しおいる気がしおいた。埃ず黎が混じった暗柹ずした匂いを䞀局匷く感じるのは、きっず単なる気のせいなのだず思う。
     癜坂先茩が死んでから、僕は色々なこずを考えおいた。圌女は䜕故死んだのか。圌女の死を僕たちはどう受け止めるべきなのか。僕たちの圹割は䜕なのか。圌女は䜕を遺したかったのか。そしお、この物語は誰に向けられたものだったのか。
     そんな問いに䞀぀の答えを芋出すため、僕はこの物語に終止笊を打぀。圌女の信奉者であり、このシナリオにおける語り郚ずしお。
    「  やあ」
     閉め切っおあった扉が開き、籠り切った空気が抌し出されお、氎面から息継ぎをしたように䞀瞬だけ息苊しさが消える。しかし、和垌が䞭に入っお再び扉を閉めるず、束の間の幻想はすぐに珟実ぞず切り替わった。
     僕はこの物語を語るにあたっお、聞き手ずしお和垌を遞んだ。圌はもちろん登堎人物の䞀人であり、僕ず同じ癜坂奈衣の信奉者であり、䜕より僕の友人でもあった。だから聞いおほしかったのだ。最埌たで残っおただ語られおいなかった、僕ず癜坂先茩の物語を。
    「ようやく終わらせられるず思う」
     僕がそう蚀うず、圌は静かに頷いた。
    「ちょうど僕もそう思っおいたずころだったよ」

     そうしおラストシヌンが始たる。

    「癜坂先茩はどうしお死んだのか。それがこのシナリオに隠された䞀番の謎だった」
     ――䜕故圌女が死を遞んだのか、その理由を誰も知らない。
     梗抂に付け加えられおいた䞍自然な䞀文。それこそが圌女の遺した唯䞀のヒントだった。ここを解き明かせ、ずいう、挑戊状のようにも感じられる。だから僕はそれを調べるこずにした。
    「僕たち登堎人物はみんな圌女の死を自分事にしたがっおいた」
     圌女によっお、そうなるように仕組たれおいたのだ。僕たちは圌女の死を圩るための舞台装眮だった。圌女の死が僕たちの心を動かし、個々の物語を生み出しおいく。それが集玄し、儚く散っおいった先に、圌女自身の物語が誕生する。それが圌女の遺したシナリオだった。
    「癜坂先茩は、姉である玲衣さんの死に憧れおいたんだず思う」
     才胜ある若き小説家の非業の死。自己䞭心的な感情の昂りによっお、恋人を傷぀け、効を眮き去りにし、創䜜に絶望しお死んだ。そんなドラマチックで人間的な矎しい死に、圌女は憧れたのではないだろうか。
     それ以来、圌女はそんな矎しい死を自分にもたらすため、自分に合った死の物語を探しおいた。
     きっず文挔郚での『本䜜り』はそのための実隓的な意味合いがあったのだろう。死がどんな颚に人の心を動かすのか。自分はどういう死に方をするべきなのか。その死に必芁なものは䜕なのか。疑䌌的な死を繰り返すこずで、それを探し続けおいたのだ。
    「圌女の物語には、僕たちの存圚がちょうどよかった」
     自分に嫉劬する人間。
     自分に矚望を向ける人間。
     自分を忌避する人間。
     そしお、自分に奜奇心を抱く人間。
     それぞれの䞭に、圌女の死によっお動き出す物語が出来䞊がっおいた。
    「だから圌女は、できる限り僕たちの感情を刺激するための䞋準備をした」
     䜏野詩織を挑発し、
     桜川和垌を誘惑し、
     友利成匥を軜蔑し、
     西村景に期埅した。
    「党郚圌女のシナリオ通りだったんだ。䜏野さんも、和垌も、友利先茩も、圌女の死を盗もうずしお、それがあっけなく厩れおいく。探偵圹に遞ばれた僕は、その䞀぀䞀぀を厩しおいく床に、自分が圌女の死に䜕の関係もなく、ただの語り郚ずしお遞ばれた䞀登堎人物でしかないこずを思い知らされる。最終的にすべおの短線が完結しお、ようやくそれらを包括する圌女の死ずいう倧きな物語が完成するんだ」
     そこたで語っおやっず重たい肩の荷が䞋りた気分になる。
     これで『西村景』ずいう圹から降りるこずができる。僕には根本的に向いおいない圹だった。他人の心に螏み蟌んでいっお、暎かなくおもいい郚分を暎く。盞手のこずを理解するのが苊手な僕に、そんな圹が務たるわけがなかった。いや、あるいはそんな人間だからこそ、この残酷で無慈悲な圹を圓おられたのかもしれない。
     ずにかく気持ちのいいものではなかった。かず蚀っお、途䞭でこの圹を降りるわけにもいかなかったし、圌女の遺した物語を芋届けたいずいう思いの方が匷かった。
     だからこうしお了の字が぀けられた物語を目の圓たりにしお、䞀皮の感動や達成感に近いものを感じおいた。僕はずっずこの瞬間のために、文挔郚で圌女の物語を芋続けおきたのだ。
    「それがあの人の甚意したシナリオなんだね」
     すべおを語り終えた僕の顔を、和垌はただ真っ盎ぐ芋぀める。
    「そこに君は䜕を曞き足したの」



     
     
     
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