メむンコンテンツぞスキップ

【連茉小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第25話

    箙野侃

     ぀らいこずも悲しいこずもない、ひどく平坊で぀たらない人生だった。
     䞡芪ずも健圚で仲も良く、それなりに金銭的にも䜙裕のある䞭流家庭に生たれた。
     僕自身も倧きな病気や怪我をするこずもなく、いたっお健康に育った。幌い頃に階段から転げ萜ちお、頭のおっぺんにぱっくりず割れるような傷ができたこずがあったくらいだ。今も少しだけ傷跡が残っおいるが、時折頭を掗っおいるずきに思い出す皋床のものでしかない。
     明るい性栌ではなかったので瀟亀的ずは蚀えなかったが、それなりに友人はできた。ちょっずした悪ふざけの察象になるこずはあっおも、いじめずいうほどの行為に遭った芚えはない。逆に誰かをいじめたり、誰かに向けられた悪意を芋お芋ぬふりをしたりずいったこずもなかった。
     スポヌツは埗意ではなかったが、絵を描くのが少しだけ埗意だった。䞭孊たでは矎術郚に所属しおいお、たたにコンテストで小さな賞を獲る皋床の可もなく䞍可もない実力だったが、「絵を描いおいる」ずいう実瞟は瀟䌚生掻を送る䞊で十分に圹立った。
     順颚満垆ずはいかないたでも、及第点ず蚀えるような人生を送っおいたず思う。少なくずも『西村景』ずいう人間に䞎えられたスペックは最倧限掻甚しおいたはずだ。
     それなのに、僕はずっず挠然ずした生きづらさのようなものを感じおいた。
     䜕故生きおいるのかよくわからなかった。確かに倧きな苊しみはなかったけれど、同時に倧きな幞犏も埗られなかった。過ぎ去っおいく毎日に抌し流されおいるだけで、生きおいる実感がたるでない。
     䞀方で、積極的に死にたいずいう気持ちがあるわけでもなかった。それはそうだ。死ぬほどの䜕かも起こらないのだから。生きる理由がないずいうこずは、死ぬ理由もないずいうこずだった。
     だから、僕の人生には垞に頌りないほど小さな垌死念慮が付きたずっおいた。
     自ら死を遞ぶほどのものではない。けれど、確実に生ぞの疑問ず死ぞの枇望がそこに存圚しおいた。
     そうやっお日々を過ごしおいくこずで、じわじわず息が詰たっおいく感芚があった。蟛うじお空気が吞える皋床の真綿を口に詰め蟌たれ、ずっず生殺しに遭っおいる。そんな人生だったように思う。
     僕は文挔郚で自分のシナリオを求められたずき、自然ず自分が加害者ずなるものを曞いおいた。癜坂先茩が自分を殺すシナリオを曞いたように、僕は他人を殺すシナリオを曞いた。
    「どうしおそんなに加害者になろうずするんだい」
     癜坂先茩にそう聞かれたこずがあった。
    「どうしおでしょうね」
     そのずきははぐらかしおしたったけれど、自分ではわかっおいた。
     僕は苊しみを求めおいた。死ぬほどの苊しみを背負いかった。あるいは、死をもっお償わなければならないほどの眪によっお、論理的に自分の死を肯定したかった。そうすれば、自ら死を遞ぶこずができるかもしれないず思ったから。
     そのためにたず他者の苊しみを理解しなければならない。人が死にたくなるほどの苊しみはどこにあるのか。『本䜜り』の䞭でなら、それを芋぀けるこずができる気がした。

    【梗抂】
     䜐䌯秋人は恋人の芊田玗垌を殺害した。
     玗垌はひどい家庭環境の䞭に生たれた子だった。父は酒癖が悪く、ろくに家に垰っおこない男だった。たたに垰っおくるず母や玗垌を殎り、満足するず再びどこかぞ去っおいく。母はそんな父から逃げるこずもできず、自分の心を守るために怪しい新興宗教ぞず嵌っおいった。
     そんな苊しさを誀魔化すように、孊校では明るく振る舞う圌女だったが、その心の乖離が少しず぀砎綻に向かっおいた。そしお、小さないざこざがきっかけで倧村巧に怪我をさせおしたった圌女は、぀いに限界を迎え、秋人に自分を殺すように懇願し、それに応じた圌は玗垌を校舎の屋䞊から突き萜ずした。
     玗垌の死埌、自分を責める巧を芋かねた浊野優劃は、圌女の死の理由が別にあるず蚌明するために、圌女のこずを調べ始める。そんな優劃に協力しながら、秋人は玗垌を殺したのが正しかったのかを考え始める。

    【登堎人物】
    ・芊田玗垌圹なし   死を決意し、恋人である秋人に殺される。
    ・䜐䌯秋人西村景   玗垌の恋人。望みに応えお圌女を殺す。
    ・浊野優劃癜坂奈衣  玗垌の芪友。倱意に沈む巧を救うため、玗垌のこずを調べる。
    ・倧村巧 桜川和垌  優劃の恋人。圌女に怪我を負わされ、郚掻の倧䌚出堎を蟞退する。
    ・荻原祐暹友利成匥  刑事。玗垌の死に疑問を抱く。

    【人物蚭定】
    圹名䜐䌯秋人
     感情の起䌏が少なく、自発的に行動ができない。他人に察しお優しく接しおいるように芋えるが、自分にも他人にも興味がない結果そうなっおいる。
     玗垌ずは幌銎染で、圌女からの匷い抌しがあり、高校に入っおから恋人同士になる。
     自分が捕たるこずに関しおはどうでもいいず思っおいるが、圌女を忘れお幞せになるようにずいう蚀葉に埓っお、自分の眪は隠しおいる。
     圌女を殺したこずに぀いお埌悔はしおいないが、本圓に圌女が死を望んでいたのかを疑問に思う。

    「君はい぀か人を殺しそうだず思っおいた」
     初めお僕が曞いたシナリオの䞭で、癜坂先茩が挔じる浊野優劃に蚀われた蚀葉。『本䜜り』の䞭でのセリフだずいうのに、それを僕自身に向けられた蚀葉のように錯芚しおしたった。たぶんそれは、僕がコンプレックスを感じおいた郚分を的確に捉えたものだったからだろう。
     他人の苊しみが理解できないからか、僕は時折無意識に人を傷぀けるこずがあった。
     あれは䞭孊二幎生くらいのずきのこずだ。地域の矎術コンクヌルに向けお、僕を含めた矎術郚の人間は必死になっお絵を描いおいた。
     締め切りが迫る仲、䜕ずなく描きたいものが思い぀かずにいるず、ふず先茩の補䜜途䞭の絵が目に入った。それは校庭の隅にある倧朚を描いたもので、お䞖蟞にも䞊手いずは蚀い難かったが、そのモチヌフのチョむスがいいなず思った。
     僕は先茩ず同じ倧朚をモチヌフに遞び、䜳䜜に入遞するこずができた。元々僕は颚景を描くのが埗意で、正面からではなく校舎の窓から芗いたその朚を描いたこずで、構図のナニヌクさが評䟡されたようだった。
    「お前のこの絵、明らかに盗䜜だろ」
     先茩の絵は党く賞に絡むこずもなく、その腹いせなのか、僕の絵を芋お怒り狂った。単にモチヌフが同じずいうだけだったし、それ自䜓も孊校の䞭にあるものだったので、構図も描き方も党く違う二぀の絵を盗䜜ずいうには無理がある。顧問の教垫もその䞻匵を頭ごなしに吊定するこずはなかったものの、明らかに呆れた様子で圌をなだめおいた。
     そのずきも、どうしお圌が怒っおいるのかがあたりよくわからなかった。確かに僕は圌の絵を芋おあの倧朚を描くこずに決めたが、絵自䜓を真䌌たわけではない。それを盗䜜だずいうのなら、圌が描く絵は他の絵を芋た経隓が党く反映されおいなければならないだろう。
     今になっお思えば、僕は圌の苊しみが理解できおいなかったのだ。自分ず同じモチヌフの絵を埌茩に描かれお、しかもそれが自分より評䟡される。そのこずは圌に耐え難い苊しみを䞎えたが、僕はそんな圌の感情を想像するこずすらできなかった。せめお䞀蚀断っおおけば、圌もあんな颚に抗議しおくるこずもなかったはずだ。
     結局絵を描くのはやめおしたった。元々暇を朰すためにやっおいたこずで、匷い思い入れがあったわけではない。䜕ずなく面倒になっお、気付けば自然ず筆を眮いおいた。
     僕はい぀か自分がもし人を殺しおしたったずしおも、その眪に気付けないのではないかずいう恐怖があった。
     䜐䌯秋人のように、ただ空虚な眪を背負っおいくこずになるのではないか、ず。



     
     
     
    小説 / è©© / 音楜など。YouTubeで本の玹介などもしおおりたす。Exotic Penguin䞻催。通販はこちら(http://inuikamina.booth.pm) ご䟝頌等はDM・メヌルにおご盞談ください。 ご連絡→exopenkamina@gmail.com

    あなたぞのおすすめ