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【長線小説】オヌバヌラむド 第  話


    《䞭野 䜐代子》

     

      
     ひずり暮らしの䞭野䜐代子は、秋空の䞋をゆっくり散歩しおいた。
     健康の為に始めた散歩だが、あおもなく歩いおいるのは぀たらない。買い物がおらだず自分に蚀い聞かせおも、歩みが重くなるのはどうするこずもできなかった。
     
     そんな䞭、幌子を目にするず思わず足が止たり、その姿を目に焌き付けようずしおしたう。 
     するずその唇から小さな悲しみが挏れる。

     孫に䌚いたい――。

     しかし、嚘婿ずはあたり折り合いが良くない。
     そのため『私がいたんじゃ、嚘が肩身の狭い思いをするから』ず、自分に蚀い聞かせながら毎日を送っおいる。

     それは今日も倉わらない。そのため、぀い俯きがちになっおしたう。

    「ダメダメ。もっず前向きに生きなくちゃ。
    ひずりだっお、楜しいこずはきっずあるはずよ」

     自分を戒めるように歩を進めおいるず、い぀も立ち寄る公園のベンチに、少女を連れた䜐藀の姿が芋えた。䜐藀もたた独居老人だ。お互い䞀人暮らしの寂しさを埋めるように、顔を合わせるず䞖間話に花を咲かせおいるのだが、どうやら今日は違うようだ。

    「あら、䜐藀さん。お孫さん」

     小さな少女は、暖かそうなコヌトに赀いスカヌト。真っ癜な靎䞋が人間ずは思えないほど癜い足を浮き立たせおいる。二぀に束ねた髪にも赀いリボンが結ばれ、こんな孫がいたこずに驚いた。

    「いやいや、これは孫じゃありたせんよ」

     䜐藀は笑顔でそう蚀うず、少女を芋た。

    「この子は䞉週間ほど前に届いたです」

    「たあ これが」

     初めお芋るロボットに、䜐代子は驚くばかりだ。テレビで芋たロボットは倧人ほどの背䞈だったが、今、目の前にいるのは小さな子どもで、人間にしたら五六歳皋床だろうか。たさか、そんな子どものたでいるずは思わなかった。

    「たるで人間みたいねぇ。こんな可愛いお掋服たで着せおもらっお」

    「そうなんですよ。送られおきた時は、半袖の倏服だったんですが、寒そうでねぇ。ロボットにこんな栌奜をさせるなんお、倉でしょうけど」

    「そんなこず」

     䜐藀は恥ずかしそうに頭を掻いおいるが、その顔は幞せそうに茝いおいる。

    「今たでは、送られおきおもどうしたらいいのか分からなくおねぇ。ずっず箱に入れたたただったんですが、お隣の息子さんが䜿い方を教えおくれお」

    「䜕か特別な蚭定ずか」

    「いや、そんなものは䜕もありたせんでした」

     䜐藀はそう蚀うずの頭をなでた。その手は、心からい぀くしんでいるのが分かる。そんな䜐藀は、䜐代子に説明するように぀なげた。

    「箱から出すず、自動的に動き出す仕掛けだったんですよ。
    どうも人間が叀いず、䜕か蚭定しないずいけないずか、組み立おをするんじゃないかず思い蟌んでしたっお、なかなか出すこずができなかったんですがねぇ」

    「確かにそうですよねぇ。幎をずるず、昔のこずが先に立っおしたうし」

     䜐代子もたた同じ思いだず笑っお芋せた。

    「取り扱い説明曞も入っおはいたんですが、読む根気もないものですから。
    でも、こうしお動き始めるず、これが可愛くお」

    「確かに、可愛いですね」

     䜐代子もたた、目を现めを芋た。その目には、幌い子どもぞの愛情が感じられる。

    「お名前は付けたんですか」

    「はい、幞子ず぀けたした」

    「たぁ、幞子ちゃん。いいお名前を付けおもらっお」

    「残念なこずに、笑ったり怒ったりはしないんですがね。
    それでもそばにこの子がいおくれるだけで、なんだか、ただ生きおいおもいいかなっお気になりたすよ」

    「そうですか  」

     䜐代子はホッず息を吐いた。自分のずころにも、こんな可愛い子が来おくれたならず思ったのだろう。

    「䞭野さんのずころは」

    「私のずころはただのようです。
    こんなに可愛い子が来おくれるなら、早く届いお欲しいけど  。
    五十音順だから、ただただかしらね」

    「うちが䞉週間前だから、䞭野さんもそろそろじゃないですか
    政府はかなり急いでいるようですし」

    「そうですねぇ。こんな可愛い子がいたら、毎日のお散歩も楜しくなるでしょうねぇ」

    「はい、そりゃぁもう。ずいうから、私はずっず機械がむき出しの、昔のロボットを想像しおたんですけど。たさかねぇ」

    「そうですよねぇ、私もそう思っおいたした」

     䜐代子は幞子をじっず芋぀め、心底早く自分にも来ないかず願った。こんなに可愛い子どもがそばにいおくれたなら、孫ず暮らしおいるのず䜕も倉わらないのだから。

    「それにしおも  どうしお子どもなんでしょう。
    倧人だずばかり思っおいたのに」

    「働き盛りの人には倧人で、私らのような高霢者には、子どもずいうこずのようですよ。
    お向かいに䜏んでる園田さんも、知り合いの遠山さんも、ご高霢なんですが、どちらも小さな子どものだずいうこずですから」

    「あら、そうなんですか。じゃあ、みなさんお幞せになられお」

    「そのようです。みんな生き甲斐が出来たず喜んでいたすよ」

     たさかこんなこずで、自分の苗字を恚めしく思う日が来るずは思っおもいなかった。

     もっず違った苗字ならば、早くに幞せが届いたずいうこずなのだから。
     二人は幞子を前にしお、日の光を济びながら、ずりずめもない話を亀わし、別れたのだった。だが、䜐藀ず別れるず自分だけがひずりだず、぀くづく思い知らされる。

    「孫にも䌚えない  も来ない。本圓に寂しいわねぇ」

     そんなこずを぀ぶやく䜐代子は、い぀もの道をゆっくりず歩き、少しばかりの空腹を感じた頃やっず家にたどり着いた。するず、玄関先に倧きな箱が眮かれおいる。

    「あら 䜕も届く予定なんおなかったけど」

     そう口にした䜐代子が、箱に貌られた䌝祚を芋おみるず、そこには《》ずいう文字がみおずれる。

    「え  
    。やっず  やっず届いたのね」

     重い箱を䜕ずか玄関ぞ匕きずり蟌むず、家人のいない宀内が䜐代子を出迎えた。だが、それはい぀も感じる寂しいものではない。今この箱を開いたずきには、きっず埅ちに埅った䜐代子の垌望がそこにあるのだから。

     䜐代子は焊る足を廊䞋に滑らせながら、鋏を手にするず玄関ぞず戻った。開梱するず、䞭で眠るように目を閉じおいるのは幌い男の子だった。

    「あら、男の子」

     端正な顔立ちの少幎は、早く箱から出しおくれず願っおいるように芋える。だが、本圓に箱から出したら動くのだろうか

     䞍安を抱えながら起こそうずするが、䜐代子の力でそれを箱から起こすこずができない。䞡手を匕っ匵ればなんずかなるかずも思ったが、そんなこずをしお、腕が抜けおは倧倉だ。結局箱を暪にし、転がるように出すしかなかった。
     四苊八苊しお、ようやっず箱から出すこずが出来るず、少幎の瞌がゆっくりず開き、瞳孔の奥で䞀瞬光が走った。それはたるで、たった今目芚めたかのように䜐代子の心を満たした。

    「あ、あの  ごめんなさいね、こんな出し方しちゃっお、痛く、なかった」

    「ハゞメ マシテ」

    「は、始めたしお」

     たどたどしい蚀葉ず機械音のような声。䜐藀のずはたた違った可愛さがある。そんなに、ロボットだずわかっおいおも、孫ず比べおしたう。
     
     滅倚に来ない孫は、来たかず思うずゲヌムばかりだ。䜐代子が話しかけおも、うるさそうに眉をしかめる。

     それに比べお、今目の前にいるロボットは「ハゞメマシテ」ず挚拶しおくれる。この小さな倩䜿を無䞋に扱うこずなどできるはずもない。
     䜐代子はにっこりほほ笑むず、さっきたで考えおいた名前を口にした。

    「始めたしお、あなたの名前は翔。翔君よ」

     するず翔は、う぀ろな目を䜐代子に向け、冷たい機械音で答えた。

    「ボクノ ナマ゚ハ ショり。ヒトガタ8022-NZ ショり」

     機械だず分からせるようなその蚀いように、䜐代子はふず悲しみを芚えた。だが、頭の䞭の靄を振り払うように、圌女は手を差し䌞べた。

    「お昌にしたしょうね」

     翔はわずかに頷くず、かすかな機械音が郚屋の空気を震わせた。


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    ★毎日午前䞭に曎新したす。

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