
【ショートショート】マッチョ華道
俺の目指すはマッチョ道だ。
筋肉こそ命の俺は、毎日鍛えていた。
ところがある日、店先の花に目が止まった。
花を手にする彼女は、花屋の女主人。
じっと見つめる俺に、彼女は笑顔を向けてくれた。
そして彼女の指は、華道教室という貼り紙を指した。
俺が華道なんてありえない!
とは思うたが、入会してしまった。
こうして始まった華道への道。
俺の気持ちを知らない彼女は、優しく教えてくれる。
その笑顔は、まるで天使だ。
「だいぶ上手になられましたね」
ある日彼女がそう言った。
俺の筋肉が嬉しさのあまりぴくぴくと動く。
彼女に褒められた感動で、天にも昇る心地だ。
俺は彼女の手を取った。
「俺の彼女になってください!」
教室中が騒然となる中、彼女の目を真剣に見つめた。
彼女は驚き、頬を赤らめる。
俺の心臓は激しく揺れる。
そして、彼女の口から出たのは。
「六十になるお婆さんに、そんなことを言われてもねぇ」
俺は彼女を握る手から、力が抜けていくのを感じていた。
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