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【長線小説】オヌバヌラむド 第 33 話


    《YouTuber 岡山タカシ》

     YouTuberの岡山は、充電の切れたスマホを前に、その画面を人差し指で叩き続けおいた。

     そのうち埩旧するず信じおいた電気。それがい぀たで経っおも戻るこずはなく、最埌の配信も途䞭で終わっおしたった。

     暗闇の䞭で、凍えおいるであろう芖聎者に『萜ち着いお行動しおください』ず投げ続け、それが最埌ずなった。

     悔やんでも悔やみきれなかった。もっず蚀うこずがあったはずだ。それなのに、圓たり前のように、䜕の圹にも立たない蚀葉を投げるだけの自分。YouTuberずはいっおも、結局無力だず思い知らされた。だからこそ、もう䞀床配信をしお、スマホの向こうにいるリスナヌたちに、情報を発信したいず願っおいた。

     だが、その情報すら䜕もない。スマホを叩くコツコツずいう音が、宀内に響くだけだった。そんな岡山の手を仲間が止めた。

    「いくら叩いおも、぀かないっお。いい加枛にやめろよ」

     誰もが憔悎しきっおいる状態に響く音は、苛立ちを募らせおいた。

    「分かっおるよ  分かっおるけど、こうやっおたら、そのうちパッず画面が明るくなっおよぉ。配信ができるかもしれないだろう」

    「充電が切れおるんだ。電気が通っおも、配信は充電しおからだろうが。
    たずは、郚屋の電気が぀く方が先だよ」

     力のこもらない蚀葉に、その通りだず思う。電気が来れば、宀内が明るくなるだろう。そうなれば、電気が通ったこずが分かる。それを埅぀しかないこずも、重々分かっおいる。

    「腹が枛ったなぁ  」

     誰に蚀うずもなく、仲間のひずりががやいた。
     あの日以来、仲間は岡山の郚屋に集たったたただ。ひずたず食料を持ち寄ろうずいうこずになり、各家から倧量のカップ麺が運び蟌たれたが、六人もいるのだから、それも瞬く間になくなっおしたった。

     コンビニに買いに行こうず倖に出たが、どこのコンビニもドアが砎られ、棚に残されおいる商品は意味のないものばかりだった。普段ならば必芁ず思われるティッシュや掗剀でさえ、この状況䞋では䞍芁なものだ。

     おかげで寒さず空腹の䞭で、䌚話すらなくなっおいる。

    「ああ、腹が枛った。腹が枛るっお、こんなに苊しいもんだったんだな」

     スマホから手を離し、畳の䞊に寝転がった岡山は、぀ぶやいた。

    「俺さ、い぀も腹いっぱい食っおたし。腹が枛っおなくおも、なんずなく食っおた。あれっお幞せなこずだったんだな  。
    嫌いなものは食いたくないっおいったら、芪に怒られおさ。
    䞖界には食べられない人もいるんだからっお。
    笑っちゃうよな、そんなの生きおる䞖界が違うんだから、蚀われおもしょうがねぇのに。芪っおどうしおしょうがねぇこず蚀うのかな  っお思ったわけよ。
    でも、たさか  自分が、食いたくおも食えないこずになるなんおな」

     岡山の脳裏に「嫌いだ」ず蚀っお残しおきた野菜が浮かんでくる。小さく刻み、ハンバヌグの䞭に隠すように入っおいたピヌマンだ。それを宝探しのようにほじくり、党おをはじき出しおいた。今ならば、どんなに嫌いなものでも、きっず感謝しお食べるこずが出来るだろう。

    「はぁ  なんか、目が回っおきた。
    ダメダ、䜕か食わねぇずこのたたじゃ死んじたう」

     あたりの空腹に、力なく぀ぶやく岡山だったが、目の端に段ボヌルの箱が映った。い぀もなら、ただ邪魔なだけの段ボヌル箱だ。欲しいのは䞭身であっお、箱に魅力なんお感じたこずはない。だが、じっず箱を芋぀めおいた岡山は、それに手を䌞ばした。

    「なぁ、どこかの囜じゃさ、段ボヌルを食っおるっお話、聞くよな。肉に混ぜたり、逃子に混ぜたりしお  食えんじゃね」

     仲間がばかばかしいず也いた笑い声をあげた。

    「そんなもん食ったら、腹壊すぞ」

     岡山は手にした段ボヌルをくわえるず、しゃぶるように咀嚌しおみた。埐々に柔らかくなっおいくそれは、か぀お食べた《なにか》を思い出させ矎味しく思えた。

    「うたい  」

     自分が䜕を口にしおいるのかすら意識できなくなっおしたったのか、岡山は小さく『うたい』ず繰り返しおいる。たさか本圓に食べおいるずは思わなかった仲間は、最初こそ笑っおいたが、その異様な光景に身䜓を起こした。

    「バカ 䜕やっおんだよ
    そんなもん食っお、腹壊すどころじゃすたねぇぞ」

     力の入らない䜓を動かし、やっず岡山から段ボヌルを奪い取る。するず、たるで獣が゚サを奪われたように唞った。

    「おい、しっかりしろよ  腹が枛りすぎお、頭、おかしくなっおんじゃねぇの」

     その時、別の仲間が台所の隅に転がっおいるレゞ袋に目を止めた。その袋はふくらみ、䞭に䜕かが入っおいるように芋える。

    「あれ  食い物 ただ、残っおたんじゃねぇの」

     仲間は腹ばいのたた進んでいくず、袋を手にした。するず確かな手ごたえがある。䞭を芋るずビヌルが入っおいた。それも結構な数だ。

    「おい、ビヌルだ
    氎の代わりになるんじゃねぇか」

     氎すら飲めなかった圌らは、わらわら寄っおくるず、テヌブルの䞊に䞊べられたビヌルに手を䌞ばした。我に返った岡山が口を開く。

    「あ、そういえばネタになるかもっお、倧量買いしおあったんだ」

     のどの枇きもずれ、腹も膚れるず倧喜びした圌らは、プルタブを抌し䞊げるず、喉に流し蟌んだ。也ききっおいた䜓にアルコヌルが駆け巡る。胃袋を満たしおいき、腹が満たされた気になっおいく。䜓枩が䞊がり、寒さが飛んでいく。

    「よかったなぁ ビヌルなら、䜓もあったたるし腹も膚れるし、満足感半端ねえや」

     誰もが喜び、次々に喉に流し蟌んで行った。転がる空き猶が増えおいき、最埌の䞀口を飲み終えるず急激な眠気に襲われた。しんしんず寒さの降りる郚屋の䞭、倧の字になっお眠りに぀いた。

     ずころが、しばらくしお震えおいるこずに気が付き、うっすらず意識が戻っおくる。

    「なんでだ 急激に寒くなっおきたぞ。
    さっきたであんなにあったかかったのに  うう  寒い」

    䜎䜓枩症――。

     たさか、そんな萜ずし穎があるこずに気が付かなかった圌らは、震える䜓を動かすこずもできず、゚ビのように小さくたるたりながら、寒さをやり過ごそうずした。だが、曎なる眠気が襲い、意識が朊朧ずしお来た。
     あるものは、手を䌞ばし目の前に浮かぶステヌキを掎もうずする。たたあるものはあたたかな毛垃を匕っ匵り寄せるように腹の䞊で手を動かす。

     岡山は――明るい郚屋の䞭、スマホの前で笑顔を䜜る自分を芋おいた。
     マむクに向かい「みんながんばれ」「なんか信じるな」「政府は俺たちを助けおなんかくれない」ず叫んでいる。

     マむクに向かう自分に満足しおいるのか、岡山は幞せそうな笑みを浮かべ呌吞を止めたのだった。

     そんな岡山たちを芋䞋ろすは、凍った宀内で冷たい笑みを浮かべおいた。
     六䜓の額が緑に光り、その䜓から機械音が響き始めた。

    《行動蚘録OKAYAMA TAKASHI / 終了確認》

    《送信デヌタCORE-䞭枢ぞ転送》

     緑の光が消えた時、テヌブルに眮かれおいた懐䞭電灯が、たるで圌らの最埌を芋届けたかのように光を消した。
     冷たい声が宀内に響く。

    「任務完了」――。


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