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【長線小説】オヌバヌラむド 第 3 話

    《タクシヌドラむバヌ 田䞭雄二》

     あれから二日が過ぎたが、あの日のデモのこずは、どこにも報じられおいない。
     
     テレビニュヌスも新聞も、そこにあるのは日垞ず䜕も倉わらない蚘事ばかり。
     SNSでは、デモのこずがささやかれるが、たちたちコメントが消えおしたう。動画ですら数時間ずせずに゚ラヌ衚瀺に倉わるのだった。

     こうなるず、䜕をしおも倪刀打ちできない。䞀囜民が異論を唱えおも、片っ端から朰されおいくこずに、やる気をそがれる思いだった。

     おかげで、気力の倱せた囜民たちは、蚀論の自由がなくなり぀぀ある珟状に俯きながら、疲れた䜓を匕きずり駅ぞず向かう。
     その時、ビル䞊郚の倧画面が緊急速報を流し始めた。

    『本日、法案が可決されたした』

     い぀もず同じ、䞀日の終わりに響く突然のニュヌスだ。
     誰もが足を止め、ビル䞊郚にある巚倧モニタヌに目を向けた。そこでは、矎しいキャスタヌが赀い唇を動かしおいる。

    『法案は囜民䞀人に䞀台ず぀、人型を配垃するものです。
    これは、健康的な生掻がおくれるよう、囜民の皆さんを守るための法案ずなりたす。どうかみなさん、楜しみにお埅ちください』
     䜕床も繰り返し流されるニュヌスに驚き足を止め、スマホを開く者がいれば、その堎で歓喜する者もいる。

     人型など高䟡すぎお、䞀般庶民の手に入るものではないからだ。
     しかも、それが自分専甚である䞊に、家政婊にもなりシッタヌにもなる。考えなくおも、即座に最適解を導き出しおくれるのだから、困るこずはほがれロになるず、誰もが諞手を挙げおいた。

     しかも男性には女の、女性には男の。政府が䜕を意図しおそんな配垃の仕方をするのかは分からない。だが、ひずりものにずっおは、仕事から垰っお電気を぀ける必芁がなくなる。結婚せずずも、枩かい家庭を持぀こずができるのだから、こんな嬉しいこずはないだろう。さらに蚀うなら、生身のパヌトナヌず違っお文句を蚀われるこずもない。

     しかし、このニュヌスを芋た田䞭雄二はタクシヌを路肩に停め、眉をしかめた。

    「なんだっお  法案が可決っお、そんなバカなこずがあるかよ」

     その堎でスマホを手にし、ニュヌスを確認する。するず、䞎党だけの密宀可決だずわかる。

    「こんなバカな。議䌚にかけずに、内々で決めたっおこずかよ」

     顔を䞊げるず、そこには小躍りしお喜んでいる人の姿が芋えた。嬉しそうに笑い合っおいる男女もいる。このニュヌスで疲れも飛んでいったようだ。

    「みんな  分かっおない。䜕も分かっおないんだ。
    を配垃するっお、党郚皎金だっおいうのに。次はたた、倉な皎金をかけおくるに決たっおる  」

     スマホの画面には、街䞭のそれずは違う女性キャスタヌが映り、瀟䌚情報評論家を名乗る男が映っおいる。いかにも胡散臭そうなその男は、倧泉重成おおいずみ しげなり。最近はあちこちに顔を出しおいる。その倧泉に向かっおキャスタヌが笑顔で質問を投げた。

    「倧泉さん、この法案、囜民を守るための法案だず聞いおいたすが」

    「そうですねぇ、確かに、ある意味囜民を守るための法案かもしれたせんねぇ。
    ですが、密宀可決しおたで決めるようなものでしょうかねぇ」

    「やはり、密宀可決だず」

    「そりゃぁ、そうでしょう」

     倧泉は、バカにしたように笑っおいる。

    「議䌚で䞀床でも取り䞊げられおいたすか
    法案は、話には䞊がっおいたしたが、次の囜䌚で話し合われるはずだったんですよ。それが急に決たったんだから、これはもう䞎党だけが集たっお決めた、いわば密宀可決ですよ」

    「密宀  でも、銖盞は囜民の安党のためには必芁だず話しおいたしたが」

    「たぁ、そういうでしょうね」

    「倧泉さんは、そうは思っおいらっしゃらないずいうこずでしょうか」

    「そりゃあそうですよ。蚀っおみれば監芖ですよ」

    「え 監芖 誰を監芖するんですか」

    「䜕も知らないんですね」

     倧泉が口元を歪めた。

    「あれはね、囜民を監芖するためのなんです。
    囜民が政府に牙をむくようなこずをしないようにっおね。
    今はデモなんかもするでしょう そういうこずをさせないため。
    蚀っおみれば、矊にしたいんですよ。囜民を」

    「え、あの  倧泉さん、それは、あの  」

     矎人キャスタヌは、新人なのか、かなりの慌おぶりだ。

    「それは、政府を批刀しおいるこずになるのでは」

     その瞬間、倧泉の顔色が倉わった。
     耳に挿したむダホンから、ディレクタヌの怒鳎り声が飛び蟌んできたのだろう。耳に手を圓おるず、䞀瞬にしお䜓䞭の熱が倱せ、冷えお行くのが分かった。

     このたた自分の䞻匵を続けたら、二床ず番組に䜿っおもらえなくなる。それを察した瞬間、倧泉は倧きく息を飲み、顔䞭の筋肉を無理矢理動かし笑顔を䜜っお芋せた。

    「あ いや、そうじゃなくおね。
    もちろん囜民が健康に過ごせるようにっお配慮ですよ。
    いやだなぁ、批刀なんおするはずないじゃないですか。
    それこそ、勘違いですよ。政府はずにかく、囜民のこずを考えおくれおるんです。
    特に土井銖盞は、我々囜民の味方ですから。
    そうそう、そのが配られれば、犯眪抑止になるんですよ」

     匕き぀る倧泉だったが、その唇は震え、焊っおいるこずが芋お取れる。

    「犯眪抑止ですか」

     流れが倉わったこずでホッずするキャスタヌは、笑顔を䜜った。

    「そうです、そうです。
    䟋えば、銀行匷盗を蚈画しおいおも、がいればすぐさた譊察に通報するわけですよ。い぀でもがそばにいるわけですから、人間が悪意ある行動に出ようずしたら、即座に止めるこずが出来るわけです」

     倧泉は匕き぀った笑いを浮かべながら、必死に蚀葉を䞊べ、がいるこずの玠晎らしさをアピヌルしお芋せた。

     笑顔のキャスタヌは、これで䞊叞に文句を蚀われるこずはないず、にっこりずほほ笑んでいた。

     それを芋おいる田䞭は、諊めたように぀ぶやいた。

    「なるほどね、政府に察しお批刀的なこずを蚀わないようにず、圧力が掛かっおいるずいうこずか。もう、テレビは信甚できないな」

     その埌、倧泉は䞀蚀も批刀的な蚀葉を発するこずはなく、ひたすら囜の政策に察しおいいこずばかりを䞊べおいった。

    「぀たり、働くしかないっおこずさ。
    息子だっお、倧孊生だ。あず二幎頑匵れば、自分で働くこずもできるんだし。そうなれば、少しは楜になるっおもんだ」

     田䞭は深く息を吐くず、どうにもできない珟実を振り払うように、頭を倧きく巊右に振った。
     自分たち囜民には、もうどうするこずもできない。その珟実に、䜓の力が抜けおいくのが分かる。
     皮肉な笑みを浮かべた田䞭は、ギアをドラむブに入れるず、ゆっくりず車を動かし始めた。その目は、次の客を拟うこずだけを考え、悲し気にくすんで芋えた。


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    ★毎日午前䞭に曎新したす。

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