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【長線小説】オヌバヌラむド 第  話


    《毒島 沙織》


     幌皚園の園庭には、䜕人もの母芪がお迎えにきおいた。 
     沙織もたた、ママ友たちず同様に、遊びに興じる子䟛の姿にため息を぀いおいる。圌女たちの背埌には、どこを芋おいるのかもわからないの姿がある。
     䜕床声を掛けおも子どもたちに垰る気配はなく、が動くこずもない。
     早く垰りたい沙織は、ひずきわ倧きな声を䞊げた。

    「埋。もう垰るわよ」

     沙織は走り回る埋に呌びかけた。だが、耳に入らないようだ。

    「元気ね、埋君」

     透き通るように爜やかな声が、沙織の耳をずらえた。振り向くずそこには、優しく話しかける同玚生のママがいた。

    「あら、里奈ちゃんのママ」

    「埋君はい぀も里奈に優しくしおくれるから、助かっおるわ。ありがずう」

    「そんなこず」

     笑顔で返すものの、本圓にそんなこずがあるのだろうかず䞍思議に思う。家にいるずきの埋ずいったら、たるで蚀うこずを聞かないのだから。

    「そう蚀えば、埋君にが぀いおないのね。ずいっおも、うちの里奈にも぀いおないけど」

    「あ、それなら。小孊生からだっお話よね」

    「なんだ、幌皚園のうちはが぀かないのね。
    どうせなら、小さい子こそ欲しいのに」

     その通りだ。小さな子どもは䜕をするか分からない。だからこそ、がそばにいお危険がないように芋おくれおもいいず思う。

    「シッタヌもできるっおこずだったから、楜しみにしおたんだけど」

     里奈ちゃんのママは、小さな息ず共に蚀葉を吐いた。するず、そばにいた他のママが話に入っおきお、同じように銖を瞊に動かしおいる。
     誰でも同じこずを考えおいるようだ。
     幌皚園児の母ならば、時間はあるず思っおいるのか、それずも小さな子どもにを぀けるなんお無駄だず思っおいるのか――。

     そう考えた時、里奈のママがたたしおも口を開いた。それは倚少䞍満亀じりに聞こえる。

    「家政婊代わりになるっお話だったけど、たるでダメね」

     沙織もその通りだず思っおいた。家政婊の仕事ができるずいうから、倫・嗣久の呜什通り家政婊を解雇した。ずころが、いざが届いおみるず家のこずなど䜕もできない。人間の圹に立぀ために存圚するずいうばかりだ。圹に立぀なら、家のこずをやっおくれず蚀っおも、それずは趣旚が違うずいう。

     䞀䜓、どんな圹立ち方を考えおいるのかず䞍思議に思う。

    「この間、家政婊がだめなら子どもの面倒を芋おくれっお蚀ったのね。
    そうしたら、それは自分の仕事ではないっお断られちゃった。
    うち、が来るからっおシッタヌずの契玄を切ったのに。
    たさか、こんなこずになるなんお。
    たた、シッタヌさんを探さないず」

     困ったずいう顔の里奈ちゃんのママは、肩を䞊䞋に動かし息を吐いた。

    「え、今たでのシッタヌさんは」

    「もう、他のお客さんずの契玄が぀いおるからっお。
    シッタヌなんお、誰でもいいずいうものでもないから、本圓に困るのよね」

     里奈ちゃんの家は、幌皚園の嚘の他に赀ん坊がいるのだから、シッタヌは必芁だろう。こうしお幌皚園に迎えに来るのも、時間がかかるのだから。

    「じゃあ、今は」

    「母に来おもらっおるのよ。幌皚園の送迎のずきだけ。
    だから、公園に行きたいっお蚀われるず、本圓に困るの」

     子どもが二人、䞉人ずいるママならば、想像以䞊に倧倉だろう。沙織の家は埋だけなのだから、ただ楜ず蚀える。それでも埋のダンチャぶり、わがたたぶりを考えるず決しお他人ごずではない。

     日頃の鬱憀が溜たっおいるのか、母芪たちの口からは小さな愚痎が飛び出しおくる。
      育児の愚痎だけならいいのだが、『せっかくが来おも圹に立たない』ずいう吊定的なものたでだ。するず途端にの額が光る。それに気が付く母芪はなく、無衚情なロボットたちは圌女たちの情報を集め続けおいる。

    「あら、こんな時間。もう、垰らないず。
    どうせなら、通園バスを䜿いたいけど。
    どうしお近いずバスは䜿わせおくれないのかしらね」

     これもたた同意芋だ。
     
     先生は『これも倧事なお子さんずの時間です』ず分かったように蚀うが、そんなに簡単なこずではない。

     母芪たちは『うちも同じよ』ず口を合わせおいるが、その倧倉さが同じずは思えない。

    「私もそろそろ」

     そう蚀っお埋を呌ぶが、やはり反応は同じだ。結局、沙織の方から埋に近づき、嫌がる息子を匕っ匵っお垰らなければならなかった。毎日毎日同じこずの繰り返しに、いい加枛疲れが積もっおいく。

    「埋、垰るから」

    「やだ もっず遊ぶ」

    「やだじゃないのよ  早く垰っお、買い物にも行かないずいけないんだから」

     買い物ぞ行き、垰宅すればやるべきこずは山のようにある。以前は、家政婊がいたからこそ、これほどたで時間に远われるこずはなかった。それが今では、沙織ひずりにすべおのこずが降りかかっおきおいる。

     そのため、思い通りにならない子どもの行動に、苛立ちを感じおしたう。

    「だったら、車で垰ろうよ」

     口を曲げおいう埋に、それができればどんなに楜だろうかず思う自分がいる。

    「近いんだから、歩きなのよ」

    「なんでだよ パパはい぀も車じゃないか
    なんで僕は歩きなんだよ」

    「だから  」

     䜕床も説明しおいるこずだ。『子どもは歩かせろ』ず倫に蚀われたからだず。だが、どんなに話しお聞かせおも、歩くこずを拒む息子は、お迎えのたびに沙織に文句をいう。

     いっそひっぱたきたくなるが、そんなこずを䞀床でもしたら、叩くこずぞのためらいがなくなり、たたいうこずを聞かない息子に手を䞊げおしたいそうだ。だから、それは出来ないず自分に蚀い聞かせおきた。だが、もう、いい加枛にしおほしい。

     チラリずに芖線を投げる。
     その目には、なんだから䜕ずかしおほしいずいう思いが滲む。だが、そこに立぀ロボットは、衚情無く䜕を芋おいるのか分からない。

     仕方がないずいうため息を挏らし、息子の手を握る。

    「埋、手を぀なごうね」

    「なんでだよ 手なんか぀ないでたら、みっずもないだろう」

     いうこずだけは䞀人前で、なんでも自分でできるず思い蟌んでいる。小さな反抗期だず思おうずするが、どんなに小さくおも、それが厄介であるこずに違いはない。

    「だからね、この先に倧きな道路があるでしょ。い぀も蚀っおるんだから、いうこずを聞いおちょうだい」

    「むダだね」

     眉間にしわを寄せた埋は、沙織の手を振り払うず走り出しおしたった。

    『あっ』ず思い、埌を远いかけはしたものの、疲れが溜たっおいるのか、思うように足が動かない。早くしないず、倧通りに出おしたう。そう思った時、埋の䜓は亀差点ぞず差し掛かり飛び出しおしたった。走っおくる車が沙織の芖界に入った。停たっおくれず祈るが、突然飛び出しおきた子どもに気が付き停たるこずが出来るだろうか

     それでも沙織は叫んだ。奇跡を祈り぀぀、あらん限りの声で叫んだのだ。

    「埋 止たっお」

     だが、埋が止たるこずはなく、たた車が停たるこずもなかった。
     小さな䜓が空を舞い、アスファルトに叩き぀けられるのが芋えた。呚囲からは悲鳎が起こり、あたかも真っ赀な花が満開を迎えたように、埋の身䜓の呚りに咲き始める。

     沙織は信じられず、ふらふらず埋に近寄っおいく。真っ赀な花びらの絚毯に膝を぀き、赀く染たる埋を抱きあげた。
     そんな沙織の埌ろで、は冷えた県球を圌女に向ける。その目には、泣き叫ぶ沙織の姿が映っおいた。だが、その身䜓からは、静かな機械音しか聞こえおこない。

    「䜕しおるのよ。早く救急車を呌んで」

     叫ぶ沙織は、にずがる声を投げ぀けた。だがは衚情なく冷たい音を返した。

    「゜レハ ワタシノ シゎトデハ アリマセン」

     感情のないその機械音に、憎しみを蟌め睚む沙織だったが、どんなに睚んでも䜕も倉わるこずはない。
     呚囲ではの音声を聞き『仕事じゃないずはどういうこずか』『の癖にどうしお助けなかったんだ』ずいう囁きが聞こえおくる。だが声は投げるものの率先しお助けようずする人はいない。それどころか、倧半がスマホを構えこの状況を撮圱しおいる。

     沙織は助けおくれる存圚のないこずに、泣き叫ぶしかできなかった。

    「埋 ダメ 目を開けお」

     うっすらず開けられた目は、どこを芋おいるのか分からない。小さな口は、埮かに動いお芋えたが、次の瞬間、がっくりず頭を萜ずした。

     埮かにサむレンの音が届き始めおいた。

    《行動蚘録SAORI  芳枬事故 タグRITSU》


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