
【ショートショート】半透明ハイキング|仮想ハイキング
昔は緑豊かな地を歩き、自然の空気を吸うという『ハイキング』というレジャーがあったという。
しかし今は、全てがビルばかりだ。
そんな中、ある企業が『仮想ハイキング』なるものを打ち出した。
俺はさっそく出かけてみた。
「いらっしゃいませ」
案内されるままに俺は大きなスクリーンの前に立った。
映し出されるのは、緑豊かな山の景色。
浄化された空気が室内を満たす。
俺はゆっくりと足踏みをする。
頂上を目指して。
歩を進めると景色も変わり、空気が薄くなる。
徐々に意識が遠くなりだし、俺は映像を止めてくれと叫んだ。
だが、誰もいない室内に俺の声だけがむなしく響く。
――止めてくれ!
――助けてくれ!
俺の身体がスクリーンに吸い込まれて行く。
ドアが開き、男たちが入ってきた。
「今回も失敗だったか」
「人間を透明化させるのは難しいなぁ」
「どうしても半透明で終わってしまう」
男たちの呟きが俺の脳に後悔の念を湧き起こさせる。
こんなところに来なければよかった、と――。
(410文字)
🌸作者コメント🌸
本作品は【毎週ショートショートnote】お題『半透明ハイキング』を元に書きました。
前回書いたのは「ハイキング」なら「おにぎり」という想像からでしたが、今回は未来のハイキングってどんなもんだろうか?
という視点です。
緑がなくなり、ビルだらけの中、人間はかつてのハイキングを経験したいと思っています。
そこで打ち出された「仮想ハイキング」。
ところが行ってみたら、恐ろしい罠が潜んでいた。
なんと実験材料にされてしまうというオチです。
本来なら、素直にハッピーエンドにできそうなものですが、作者はへそ曲がりのようで、ハッピーエンドじゃつまらないと思ってしまうのです。
そこで実験に巻き込まれた一般人としたわけです。
ところでこの男たち、一体どうして人間を透明化させようとしているのでしょうか?
私が思うに、人口が増えすぎているので、透明人間にしちゃえば家がなくてもいいんじゃない? という考えなのではないかと思うのですよw
そんなバカなと思うけど、そこは物語。
科学者なのだから、もっとましな発想かもしれないけどねw
でも、結果は半透明。
なかなかうまくいかないようですw
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