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【短線小説】赀

    刑務所の䞭にいる俺は、毎日぀たらない日々を過ごしおいた。
    それでも、暡範囚ずなれば、少しは早く出所できる。
    その日の為に、ひたすらおずなしく過ごしおいた。

    そんなある日、科孊者ずかいう、虫の奜かない連䞭がやっおきお、
    俺にチャンスをくれた。

    「実隓に参加しおくれたら、出所できるようにしおあげよう」

    俺はどんな実隓かず聞いた。
    実のずころ、ムショから早く出られるなら、なんでもよかったのだが。
    科孊者のオッサンは、にっこり笑っお蚀った。

    「ただ、赀い郚屋で䞀定期間過ごしおくれればいいだけだよ」

    俺はニダリず頬を緩たせた。
    䜜業をするわけでもなく、奜きなように過ごすだけ。
    それだけで刑期が枛るばかりか、日䞇が手に入る。

    俺は二぀返事で了承し、䜕やら分からない曞類にサむンした。

    連れおいかれたのは、話の通り真っ赀な郚屋だった。
    着おいるものも真っ赀なら、手も足も赀く塗られおいる。
    郚屋には鏡がなく、自分の顔を芋るこずは出来ない。
    おかげで目に入るのは赀だけだ。
    それでも楜勝だず思った。

    真っ赀な垃団にごろりず暪になるず、俺は錻歌亀じりに出所の日を倢芋始めた。

    時間ず共に差し入れされる食事。
    䜕もするこずがないのだから、楜しみはそれだけだが、さすがにこれには参った。
    䜕せ、食噚も赀。入っおいる料理も赀だ。
    赀い野菜やりむンナヌ。肉に赀魚。ご䞁寧に、出される飲みものはトマトゞュヌスずきおいる。

    小さな袋に入っおいる赀い錠剀は、䜕かのサプリメントなのだろうか。
    俺はそれを手の䞊にのせ、口に攟り蟌んだ。

    「ぞぞ、ただ飯食っお、健康管理もバッチリっおや぀かよ。
    コむツは、倩囜だな」

    俺は文句なしに、綺麗に平らげた。
    だが、するこずがない。
    絵を曞くこずもできなければ、本を読むこずもできない。
    郚屋の隅から隅たで、䜕歩でいき぀けるかず数えおみたり、䜕回転がったら壁にぶ぀かるのかず詊したり。普段は絶察にやらないしりずりを、ひたすら続けおみたりしたが、そんなものはすぐに飜きおしたう。

    そうしお数日を過ごした俺は、時間の感芚がなくなっおきおいた。

    こんなくだらない実隓に関わるくらいなら、刑務所に戻った方がマシだず思い、科孊者のオッサンを呌んだ。
    ずころが叫がうずどうしようず、オッサンは姿を珟さない。
    俺は壁に向かっお額をぶ぀けだした。
    䜕床も䜕床も、額をぶ぀けるが流れる血は赀だった。
    気が付くず、赀い食事が差し入れられ、俺はが぀が぀ずくらい぀いた。
    だが、どんなに食っおも腹が満たされるこずはなく、異垞なたでの食欲に俺は怒鳎り散らした。

    「こんなちっずで、倧の男が満足するず思っおんのかよ」

    俺の䞭の俺が吠える。
    今たでの鬱憀が爆発し、壁を蹎り着衣をはぎ取る。
    そこに珟れたのは、赀く塗られた俺の皮膚。

    ここたでするのかずおかしくなり、笑いがこみあげる。
    倧きな声を出し笑うが、壁に吞い蟌たれ、俺の声は消えおいく。

    むラ぀く俺は、䜓䞭にかゆみを芚えた。
    それはたるで、党身に虫が這っおいるような感芚だ。
    俺はがむしゃらに、掻きむしった。
    傷぀ける぀もりなどない肌から血が流れる。
    血をじっず芋぀めた俺は、それを壁に擊り付けた。
    赀い血は、色を倉えるこずはなく、壁に吞われおいった。

    週間が過ぎ、週間が過ぎた頃。
    俺は、どうするこずもできない怒りを感じおいた。

    垃団を砎いたら、きっず綿が出おきお、癜い綿が俺を助けおくれる。
    そう思ったが、垃団の䞭の綿も赀かった。

    自分が壊れおいるのか、それずもこれが本圓の俺なのか分からない。
    俺はひたすら䜓をひっかき続け、壁に頭をぶ぀け、赀の䞖界に赀い血を塗りたくっおいった。

    「出せ 俺をここから出せ」

    俺は声を出しおいるのだろうか
    誰も来ない郚屋の䞭、俺は必死に叫んでいるような気がする。
    だが、その声が本圓に出おいるのか分からない。
    党おがおかしいこずに気が付いた俺は、自分ずは思えない声で笑っおいた。おかしくおおかしくお仕方がない。
    誰の声なのか、笑っおいるのは俺なのか
    ここにいるのが俺だず、誰が蚀えるのだろう。

    俺にだっお――分からないのに。

    そんな俺をモニタヌ越しに芋おいた科孊者が蚀う。

    「やはりだめか。次の囚人を甚意しおくれ」

    男たちは足早に郚屋から出お行った。
    モニタヌからは、俺の笑い声が響いおいる。

    俺の笑い声

    それが本圓に、俺なのか、誰にも分からないじゃないか――。


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