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Photo byokanokura

僕らはみんな「コロンブス」に征服された

    「コロンブスMV」の騒動も、早くも忘れられようとしている。

    わたしは、この話題、「小田急多摩線50周年」にひっかけて書いたけど、書き足りなかった。

    なんか、「コロンブス」の話を、みんな他人事のように論じている。それが不満だったのだ。

    それは、決して海の向こうの話ではないのに。

    以下、「出し遅れ」もいいところで、話もあまり共感されないかもしれないが、思いを書いておきたい。


    *


    ほんの2000年前、この日本の大地は、誰のものでもなかった。

    あなたの先祖は、好きなところに「タダ」で住むことができた。

    土地は、人が生きていくために、絶対に必要なものです。

    ところが、いつしか土地は「誰か」のものになり、あなたの先祖のものではなくなった。

    「コロンブス」に「発見」され、「征服」された歴史は、あなたの先祖にも起こったのだ。


    今や、あなたの一生は、あたかも不動産の代金を支払うためだけに費やされるようになった。

    いつからそうなったのか?

    何が起こったのか?

    二つのストーリーを想像してみよう。



    日本古代史A

    「こんにちは〜」

    「ほう、どちら様でしょうか」

    「ヤマトの大王(おおきみ)のほうから来ました〜。わたくし最近、このエリアの担当になりまして」

    「ああ、ヤマト。なんか、噂に聞いたことありますな。大変なご威勢だとか・・それが何か?」

    「最近、このあたりも物騒になりました。生活に不安はありませんか?」

    「はあ、確かに。ときどき流れ者が畑を荒らすので、棒っきれで追っ払っています。困ったものです」

    「わたくし共は、そういう方々に、セキュリティーのサービスをお届けしています。わたくし共の警備員は、最新最強の武具を携行しているので、どんな悪者にも負けません」

    「ほう、それは頼もしい」

    「それに、あなたにだけお話ししますが、実は海の向こうから、この国を狙っている者たちがいます。言葉が通じない奴らに、あなたの家族がいつ襲われるか分かりませんよ」

    「おお、なんと恐ろしい」

    「そういう外敵もふくめて、わがヤマトは、不測の事態からあなたの家族を守ります。どうです、当社と契約しませんか?」

    「よさそうですが・・でもお高いんでしょう?」

    「なあに、畑の作物の一部を毎年いただくだけです。その代わり、あなたの家族の命が守られるのです。命がいちばん大事でしょう? 周りのみなさんも、みんな当社と契約しました」

    「わかりました。それなら、契約しましょう」

    「ありがとうございます。・・ああ、それから、お子様が仕事をお探しなら、ぜひご相談ください。いろいろ公共事業をやっておりますし、大王のお屋敷でも仕事があります」

    「おお、それは助かる。子だくさんだと、ひもじい思いもさせますからね。畑が不作のときもありますし」

    「福祉全般、なんでもヤマトの大王にお任せください」

    「ヤマトの大王、心強いですな。いたれり尽せりではないですか」

    「ハハ、わたくし共は、顧客第一でやらしてもらってます。これからもヤマトの大王をよろしく〜」


    日本古代史B

    「おら、おら、おら、おら! 誰かいるか?」

    「なんですか、いきなり。どなたですか」

    「ヤマトの大王のほうから来た者だ。お前がここの主人か」

    「はい、そうですが・・ヤマトとやらが、どうしましたか」

    「ここの土地は最近、ヤマトの大王のものになった。お前らは出て行け」

    「そんな無茶な。家族とずっとここに住んでるんです」

    「知るか。すぐ出て行け。みなごろしにするぞ」

    「なんとか、なんとか許していただけないでしょうか」

    「そんなら、畑の作物をよこせ。お前らの家族が生きるのに必要な分以外は、全部よこせ。毎年な」

    「・・分かりました。ころされるよりはマシです」

    「あと、娘に美人が生まれたら、大王に差し出せ。息子が生まれたら、農作業に必要な奴以外は、大王の兵隊になれ」

    「そんな・・」

    「大王に隠し事をしたらころす」

    「分かりましたよ・・」

    「これからもヤマトの大王をなめんじゃねえぞ。いつでもころすぞ。わかったな!」

    「ヒィーっ」


    どちらも極端なストーリーかもしれませんが、わたしは「B」のほうが真実に近いと思っております。


    *


    「おおやけ」という言葉は、もともと天皇家のことです。

    「大家んち」ということ。日本という国土の「大家」。


    なぜ天皇制が続いたか。日本の国土は「大家」のもので、それが天皇家から貴族やサムライに下げ渡された形になっている。

    それで土地の権利が複雑になったが、究極的には天皇家に紐づいているから、貴族もサムライも、自分たちの土地の権利を主張するため、天皇家をなくせなかった。

    天皇家をなくすよりも、「大家」にぶら下がって、日本全国から上がってくる莫大な「家賃」を山分けしたほうがよかったのです。


    そういうわけで、日本史上、住むところに困らず、「家賃」を払わずに済んできたのは天皇家だけです。唯一の「大家」ですから。

    ほかの権力者は、いくら政治権力を持っても、ずっと不動産を維持できた者はいない。ずっと同じところに住み続けられた者はいない。どっかの時点で土地を手放すはめになる。しょせん「店子」だから。


    「日本史」と言われているものは、「大家」の一族の「社史」みたいなもので、「店子」のわれわれの視点から書かれていません。

    「大家」企業の都合のいいことばかり書かれていて、都合の悪いことは書いていない。われわれには基本、関係ない話です。

    わたしの祖先も、土地を奪われた悔しさを記録に残したかったのですが、残念ながら、その頃は「文字」がなく、記録に残しようがありませんでした。


    まあ、歴史はーーおそらく人類の「定住革命」ののちは、土地の奪い合いになってしまっている。今のウクライナ戦争だって、イスラエル・ガザ戦争だって、もとの原因はそうでしょう。


    *


    うちの先祖は、「家賃」をもらう側に回ったことは一度もなく、ずっと「家賃」を払い続けてきました。

    ヤマトの大王に1500年間・・。

    でも、それまでは何千年も、いや何万年も、この大地に「タダ」で自由に生きていたのです。


    1500年は、長いようですが、全体から見れば10分の1以下です。

    それなのに、1500年続いたから、これはスゴイことだ、これからもそうしなければならない、と主張される。

    500年前の「コロンブス」も、1500年前の「ヤマト」も、そんな変わりません。


    いまだに、うちの先祖霊たちは、住んでいる土地の代金を、誰かに払わなければならないのが、納得できていません。

    だって、大地はタダですから。自然は、誰のものでもないのですから。


    *


    わたし個人の一生も、「家賃」を払うためだけに、何十年も働いただけの人生でした。

    退職金で、やっと郊外に中古マンションを買い、「家賃」からは卒業できましたが、もう人生の残り時間はほとんどありません。

    そして、家賃の代わりに、今は固定資産税という「家賃」を払わされています。死ぬまで払わされます。

    (ちなみに、少子化も、家賃が高いところで起きる。家賃が高すぎて、生活に余裕がないのが問題の本質だ。カネではなく土地を配れば問題は解決する)


    うちの近所に、縄文中期、約4000年前の遺跡(片平中町遺跡公園、敷石住居趾)があります。

    そこに行くたびに、「ああ、この人たちは、家賃を払わなくてすんでいた」と思う。


    「コロンブス」問題は、他人事ではない。

    それを忘れてはなりません。



    <参考>


     
     
     
    会社を定年退職し、神奈川県は柿生の里に隠棲する。新聞社、出版社に勤め、記者や編集者をやっていた。独身、孤独を愛する。老人であることを自覚し、記憶力もあやしくなりつつあるので、ここに書き残したいことを書き残しておく。世間から引退したので、社交は望みません。

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