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Photo bysono_note

「ジョーカーに憧れた」京王線刺傷犯と「鉄道病」

    犯人は「ジョーカーに憧れた」と言って、ジョーカーのコスプレをしていた。こんな男のたわごとに付き合うことはないが。

    ただ、ホアキン・フェニックスの「ジョーカー」のことだとすれば、あの映画は嫌いだった。前に書いたことがあるが。

    例によって「幼児体験」「生い立ちの不幸」に甘える男の話で、全然共感できなかったのだ。なぜあの映画や、ホアキンのナルな演技が評価されたのかわからない。

    だからといって、あれに感化されて悪人になる奴はさらにどうしようもない。

    *

    それにしても、電車内で襲われるのは恐ろしすぎる。死ぬ気で襲って来られたら、防ぎようも逃げようもないだろう。

    以前、私がパニック障害だった時、「電車恐怖」を伴っていた。電車に乗るのを恐れるのは、昔からあるノイローゼの症状だが、こういう事件が続くと、恐怖を抱く方が当然とも思えてくる。

    谷崎潤一郎も、汽車に乗ることを恐れるノイローゼにかかり、その体験を「恐怖」という短編に書いている。

    「馬鹿馬鹿しいこの病気は、Eisenbanhnkrankheit(鉄道病)と名づける神経症の一種だろうと云う。汽車に乗り込むや否や、ピーと汽笛が鳴って車輪ががたん、がたんと動き出すか出さないうちに、私の体中に瀰漫している血液の脈拍は、さながら強烈なアルコールの刺激を受けた時のごとく、一挙に脳天へ向かって沸騰し始め、冷や汗がだくだくと肌に湧いて、手足が悪寒に襲われたように震えてくる・・・」(「恐怖」)

    覚えがある人には、迫真的な描写であることがわかるだろう。

    現役時代は、私は「鉄道病」を抱えながらも、通勤していた。「冷や汗がだくだく」というのを何度も味わった。

    退職した今は、あの恐怖を味わわなくて済むだけで幸福に思えるが、こんな事件があると、また恐怖が蘇ってくる。


     
     
     
    会社を定年退職し、神奈川県は柿生の里に隠棲する。新聞社、出版社に勤め、記者や編集者をやっていた。独身、孤独を愛する。老人であることを自覚し、記憶力もあやしくなりつつあるので、ここに書き残したいことを書き残しておく。世間から引退したので、社交は望みません。

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