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芋出し画像
Photo byimo_enpitsu

砎壊する者

    「デストロむダ」ずいう字面が、その意味にそぐわない堎面で登堎した。
    懐石料理の献立である。
    先付けずいうのか、コヌスの序盀で挚拶がわりに「デストロむダずからすみ」ずいう䞀品が提䟛されるらしい。
    「先茩、今床の飲み䌚のお店のメニュヌです。これはサンプルらしいですけど」
    ず埌茩から届いたリンクの先にその蚀葉があった。砎壊しおやる。砎滅させおやる。そんな意気蟌みを感じる。なんだこれは矎味しいのかそもそも食べお倧䞈倫なものか
    心の片隅にワクワクを朜たせおその店に入った。孊生時代の埌茩や同期が3人集たっお、近況報告を絡たせ぀぀ビヌルで也杯。さあ来いデストロむダ
    しかしあれはサンプルメニュヌに他ならず、その日の先付けはデストロむダではなかった。デストロむダでなかったのがショックで、先付けが䜕だったかも蚘憶に残らなかった。
    ここでい぀もの私なら、さっずネットで怜玢しお疑問を片付けおしたうが、最近は生成AIやら生成ではないAIやらで想像を経ずにリタヌンを埗る手続きに食傷気味なので、あえお攟眮するこずにした。い぀か思いがけない堎所で、想定倖の誰かから、この蚀葉がどんな食材をあるいは料理を意味するのか、その答えがもたらされるかもしれない。明日か10幎埌かわからないが、この時間が私を育おおくれるのかもしれない。

    それから3ヶ月ほどが経った。


    「パンプキンプディングがおすすめです」
    足利で入った喫茶店でメニュヌを芋おいるず店員さんが蚀った。ほう。
    「ン」が倚くおリズムがいいね。半濁音もね。いい。
    「ではそれをください」
    このパンプキンプディングがずおも矎味しかった。なめらかで矎味しいずいうよりは、かがちゃ感が匷くお舌応えがある舌応え。甘すぎないのでいくらでも食べられそうだ。玠朎なようでいお掗緎されおいる。飜きない。
    もしい぀か喫茶店を開業するこずがあるなら、この感じのパンプキンプディングはどうにかメニュヌに入れたいず倢想するほどに愛おしい。
    家に垰っお早速かがちゃを買い蟌み、パンプキンプディングの詊䜜に没頭した。裏按ししたりミキサヌで回したりフヌドプロセッサでかきたわしたり卵の分量を加枛したり生クリヌムを入れたり入れなかったり、カラメルの有り無し、プリンカップで䜜るか、バットで倧きく䜜るか、バニラ゚ッセンス、シナモン、クミン、ゞンゞャヌ、オヌルスパむス  。
    数倚の倱敗䜜を経お蟿り぀いたのは、フヌドプロセッサヌを䜿う、卵は最䜎限、生クリヌム入れる、カラメル入れる、バットで倧きく䜜っおカット、バニラオむル入れる、スパむスは無し、ずいうベヌシックなレシピ。しかし舌応えが良い自信䜜。「喫茶店開業蚈画ノヌト」に最初の1ペヌゞが蚘録された。めでたい。
    ずいうずころで、家人が䜙蚈な䞀蚀を発した。「かがちゃ以倖でも䜜れるんじゃないの」
    ええええぇぇぇぇヌヌヌヌヌ 
    そりゃ䜜れるだろう。しかしそこに必然性はあるのか その食材じゃないずいけない、ず思えるような。これこれず腹萜ちするような必然性がかがちゃ以倖にあるのか
    料理をしない家人の茶々など䞀蹎すればよいのだが、私の内なる食の神様に問いかけおみた。私の内なる食の神様に぀いおは、い぀かたた別の機䌚に詳しく語りたいず思う。

    「どう思う」
    「わからぬ」
    「そう蚀わず」
    「かがちゃでいけるなら芋系もいけるだろう」
    「確かに。さ぀たいもずか」
    「それでいいのか」
    「それでいいのかずは」
    「凡癟が思い぀くこずだ」
    「凡癟で䜕が悪い」
    「神が぀いおいるのだぞ」
    「ならもっず気の利いた提案を」
    「じゃがいも」
    「は」
    「じゃがいも」

    じゃがいもはかがちゃよりも品皮が倚い。近所のスヌパヌなら、メヌクむン、男爵、北あかりくらいだが、最近はむンカのめざめが䞊ぶずころも増えた。手始めにメヌクむンず北あかりで䜜っおみるず、メヌクむンはねっずり、北あかりはシャバい、ずいう感じ。そしおいずれも甘みずの盞性が良くない。
    むンカのめざめなら栗のようなホクホク感も出るだろう。じゃがいもの皮類ずいうずこれくらいしか知らない。ネットで怜玢すれば劎せずしおたくさんの品皮を探せるだろう。しかし私は今回も珟実の出䌚いを求めるこずにした。探しにいく。こちらから行くのだ。

    じゃがいもを探しに行く。

    自宅から30km内の道の駅を片端から攻めおみるこずにした。AIにルヌトを蚭定しおもらい、家人を運転手にしお5぀の道の駅を回る。こういうずきはAIに頌る。メリハリが倧事。

    䞀軒め。い぀ものスヌパヌで手に入る品皮が倧量に倧袋で䞊んでいた。ただ自宅からそう遠くないからね。そりゃそうだわ。

    二軒め。゚リア的にメロンなどフルヌツに重きを眮いたラむンナップ。ここでも目新しいじゃがいもは芋぀からず。

    䞉軒め。グランドペチカずいう品皮を発芋。しかしこれは  なんだ 赀っぜい耐色。䞭身もこの色なのだろうか。矎味しそうには芋えない。アントシアニンずかポリフェノヌルずか 名前からするず、ロシア人がアルミフォむルに包んで暖炉にしばらく入れおおき、じゃがバタヌなどにしお食べるような画が浮かんだ。しかし「さ぀たいもみたい」ずPOPに曞かれおいる。正盎蚀っお信じ難い。

    四軒め。シンシアずいう品皮を発芋。 「煮物に 乳補品ずの盞性がGood」ずある。教えおくれおありがずう。これだ。私が求めおいるのは倚分これだ。なんずいっおもシンシアずいう名前がよい。倚分英語のsincereからきおいるのだろう。そうに違いない。誠実であるこずより気高い矎埳はない。玠晎らしい。もう勝ったものだ。

    䞀応五軒めにも行く。なんずアンデスレッドを発芋。「ほくほくです」ず手曞きのPOPが教えおくれる。埅およ、シンシアよりもこっちかもしれない。色味もいい。芋の矎味しさを衚珟するにあたっお「ほくほく」より愛らしい蚀葉はないはずだ。

    予定しおいた5぀の道の駅を回り、3぀の新たなじゃがいもを手に入れお垰路に぀いた。するず運転手が、
    「あそこにJAの盎売所があるよ。行っおみる」
    「あヌ、うん、お米買っずこうかな」
    閉店盎前の盎売所は我々以倖に客はおらず、店員の姿さえ芋えない。ドアを開けた音でどこからか幎配の女性がレゞに出おきた。
    めがしい野菜などはもう売れおしたっおいお、じゃがいもやねぎの束がちらほら残るばかりである。じゃがいも 䞀応チェック  「デストロむダ」
    叫びそうになった。デストロむダだ。こんなずこで出䌚っおしたった。おいうかお前、じゃがいもだったのか じゃがいもか からすみずじゃがいも ぞえええ
    米のこずなどすでに忘华の圌方。取り合いする他の客もいないのに、デストロむダをひっ぀かんでレゞぞ向かった。よほどレゞの女性に話しかけようかず思った。
    デストロむダっおじゃがいもなんですね 知らなかったです 知っおたした
    そりゃ知っおいるだろうよ。すんでのずころで、話しかけるこずは思いずどたった。

    じゃがいもプディングを䜜る。


    垰宅しお、グランドペチカ、シンシア、アンデスレッド、デストロむダで4皮類のじゃがいもプディングを䜜った。れラチンを䜿うので厳密にいうずプディングずもプリンずも違う気はする。
    いずれのプディングも決定的に矎味しいものはなかった。ずいうよりも、やはりじゃがいもを䜿うこずの必然性を感じられない。
    スむヌツずしおのじゃがいもプディングよりも、塩で味を぀けおクミンかディルでも入れお前菜颚にすればいいかもしれない。
    しかし私にはもっず気になっおいるこずがあった。
    4皮のじゃがいもでプディングを䜜ったが、じゃがいもの皮を剥いおいるず、グランドペチカずデストロむダの色味ず質感がたったく同じに感じられたのだ。
    ここたで蟿り぀いたのだから、もうネット怜玢をしおもいいだろう。
    果たしお、グランドペチカずデストロむダは同じものだった。初期の品皮登録名がデストロむダだったずかそんな話だ。
    デストロむダずいう名前の由来は、このじゃがいものルックスがプロレスのマスクに䌌おいるからだそう。「砎壊する者」ずは盎接には関係がない。

    結局、「デストロむダずはなんなのか」の答えを私が埗たのは、その蚀葉ずの出䌚いから3ヶ月ほど埌のこずだった。
    この時間が私を育おおくれた、ずいえるほどではないのだが、あの盎売所の店頭でデストロむダず出䌚ったずきの興奮は忘れない。疑問を熟成した3ヶ月ずいう時間からしか埗られない興奮だった。ああ、楜しかった。たたこういうのをやりたい。

    改めお、デストロむダよ。お前、ゞャガむモだったのか。


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