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投資という言葉が広すぎる ——「貯蓄から投資へ」の前に考えたいこと

    こんにちは。
    最近安全保障とかの話が多めでしたがまだ続くので、ちょっと別の話ができればと思います。
     
    テーマは「投資という言葉が広すぎる」という話です!
    多くの方の関心が高い領域かと思うんですけど、たぶん私自身も含めて、少し誤解しやすい部分が多いところかなと思うので、改めて考えるきっかけになればいいかなと。
    (わかりやすくなるようにざっくり書いている部分が多いです!)


    1. 「貯蓄から投資へ」の投資とは?

    「貯蓄から投資へ」というスローガンはもう誰もが知っている言葉になったかと思います。
    マーケティングが功を奏して聞く機会が増えたというのもありますが、2025年はマーケットが過熱していたこともあり、多くの方の意識が実践に向いたきっかけでもあったのかなと思います。
     
    当然いい流れだと思います。
    現金だけで資産を持ち続けることには、明確なリスクがあります。
    物価が上がれば、同じ100万円でも買えるものは減ります。
    為替が円安に振れれば、海外から買うものは高くなります。
     
    名目上の金額は変わらなくても、実質的な購買力は下がっていきますよね。
    現預金の一部を投資信託、債券、海外資産などに置き換えていくことは、「このようなリスクから資産を守る」のには合理的な行動だと思います。
     
    ただ、その一方で、少し気になることもあります。
    それは、「投資」という言葉が広すぎることです。


    2. 「眠る現金を成長資金にする話」だと思った

    「貯蓄から投資へ」という言葉を聞いたときに、
    「眠っている現金を企業の成長資金に回そうとしている(日本経済を活性化させたい)のだろう」
    と受け取った方は少なくないのではないでしょうか。
    正直に言うと、私もそのように解釈しました。
     
    日本の家計には大量の現預金があるのは誰もが知っている話ですし、
    それを企業や産業の成長に回せば、経済が活性化するのもイメージしやすいですよね。

    だから、貯蓄から投資へなのか。
    非常に分かりやすい話です。
    NISAも整備されて、準備ばっちりです、と。
     
    ただ、少し考えると、すぐに違和感も出てきます。
    たとえば、NISAで上場株や投資信託を買ったとしても、そのお金がそのまま企業の設備投資や研究開発に使われるわけではありません。
    公募増資に応募する以外は、上場株の取引における買付代金は企業ではなく、売り手である既存株主に渡ります。
    別に成長投資に直接つながるわけではないんですよね。
     
    政府の公式説明を見ると、
    ・家計の安定的な資産形成
    ・企業価値向上
    ・その果実の家計への還元
    ・さらに消費や再投資につなげる
    という大きな循環が描かれています。
     
    つまり、国が単純に「NISAで株を買えば企業に直接お金が入ります」と言っているわけではないです。
     
    ただ、「貯蓄から投資へ」という言葉だけ聞くと、まるで眠っている現金がそのまま社会の成長資金に変わるように見えてしまう。(私だけですか?)
    このズレを生んでいるのが、無意識の中にある、「投資」という言葉の広さなのではないかと思います。


    3. そもそもなぜ今、「貯蓄から投資へ」なのか

    なぜ今になって「貯蓄から投資へ」がここまで言われるようになったのでしょうか。
     
    戦後の日本成長フェーズでは、今ほどアセットアロケーションを意識しなくても、資産形成ができた面があります。
    働いて、給料をもらい、現金を貯める。
    私たちのOS的には普通のことですよね。
     
    当時が極めて金融リテラシーが高かったのかというと、必ずしもそうではないはずです。
    少なくとも、
    ・人口増加(生産人口が増える)
    ・都市化、工業化(生産ニーズがある)
    ・賃金上昇(貯蓄に回せる余力が増える)
    ・居住用不動産取得(生活必需からきたアセットアロケーション)
    など、戦後からの復興・成長というマクロ的な要因も後押しして、ストックが積み上がりやすい環境がありました。
     
    一方で、今はかなり違います。
    ・人口は減り(出生率を見る限り数十年は労働人口減が確定)、
    ・国内市場は成熟し、
    ・賃金の上昇は限定的な中、
    ・社会保険料の負担も重く、
    ・物価は上がり、住宅価格も上がっています。
     
    普通に働いて、普通に貯めていれば、自然と資産が積み上がる時代ではなくなってきている。
    だからこそ、「投資で増やしましょう」というより、実態としては、
    現金だけで持っていると危ないので、自分の資産は自分で守りましょう
    という防衛的なメッセージであり、公式にも最初に「家計の安定的な資産形成」があるのですね。


    4. 「投資」を分けて考える

    ここで一度、「投資」という言葉を分けて考えたいと思います。
    日常では、株を買うことも、投信を買うことも、不動産を買うことも、スタートアップにお金を入れることも、全部「投資」と呼ばれ、会話は成立します。
     
    ただ、自分のお金が何に使われているのか、何を支えているのか、何を生んでいるのかを考えるときには、少し粗い気がします。
    ここでは、かなりざっくりですが、次の3つに分けてみたいと思います。
     
    資産運用:
    これは、自分の資産を守る、増やす、分散するために、現金、株式、債券、投信、不動産などへ配分する行為です。
     
    投機:
    これは、価格変動や期待値の変化を取りにいく行為です。
    短期売買だけが投機ではありません。
    時間軸が長くても、他の人が将来どう評価するか、需給がどう動くか、テーマ性がつくかに賭けているのであれば、かなり投機的な性格があります。
     
    投資(世間で使われているより狭い意味、元来のリスクマネー的な意味):
    将来の生産力やキャッシュフローを増やすために資本を投下する行為です。
    設備投資、研究開発、人材投資、スタートアップへのリスクマネー、新規事業への資金投入などが分かりやすい例です。
     
    もちろん、現実にはこの3つはMECEではありません。
    ただ、分けて考えることで、「貯蓄から投資へ」という言葉の中身はかなり見えやすくなると思います。

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    5. 指数連動型投資信託での「投資」の本質は?

    たとえば、オルカンのような指数投資を考えてみます。
    オルカンを買うことは、家計から見れば広い意味での投資です。
    ただ、表現を変えると、円現金を世界の上場企業群に連動する資産へ置き換える行為になります。
     
    個別企業の株式であれば、当たる会社もあれば外れる会社もあります。
    すごく成長する会社もあれば、競争に負ける会社もある。
     
    しかし、指数は自動的に分散投資されているものですので、この勝ち負けはならされます。
    (分散投資がリスク低減になる、という話のことです)
     
    その結果、残るのは、個別企業の当たり外れではなく、市場全体の大きな動きになります。
    その他で大きいのは、
    ・インフレによって伸びたのか?
    ・為替の影響によって伸びたのか?
    この辺りは同じ市場・通貨圏の会社には比較的共通して影響する要因です。
     
    もちろん物価指数そのものに連動するわけではありませんが、現金よりも市場全体の名目成長やインフレ、為替の影響を取り込みやすい資産に置き換えている、という見方はできると思います。
     
    「現金で持っているとインフレの影響や為替の影響に関係なく一定額」、になってしまいますが、
    「物価が伸びたら物価が伸びた分変動する資産」に変えていることになります。
     
    その対象を、vs世界中で見るか、vs米国で見るか、等の違いで、指数や投資信託を選ぶイメージになります。
    (厳密にはその中でもAI・半導体のウエイトが大きくなってきていたりしますが)
     
    そしてそれは、企業が成長のために使う資金を直接供給する意味での投資とは違うので、資産運用、と分けています。


    6. 個別株投資には投機的な性格もある

    個別株についても同じです。
    会社の事業を調べ、将来の利益成長やキャッシュフローを分析し、市場がまだ織り込んでいない実質的な成長を見つけようとする。
    これは、かなり投資に近い行為だと思います。
     
    一方で、おそらく誰もがやると思いますが、
    ・過去の株価チャートを見て考える。
    ・テーマ性があるかを考える。
    ・自己株買いをしそうかどうかを考える。
    これらは本質的には、かなり価格変動や期待値の変化を取りにいく行為です。
     
    一般に「投機」という言葉は、短期売買で利益を得るような、やや悪い意味で使われがちです。
    が、本来は時間軸の短さだけが問題ではなく、「何を見ているのか」です。
     
    企業の生産力や将来キャッシュフローの増加、市場の見落としを見ているのか。
    それとも、市場の期待値、需給、評価倍率、イベント、他人の見方の変化に賭けているのか。
     
    後者であれば、時間軸が長くても、かなり投機的な性格を持っていると言えます。
    もちろん、投機が悪いわけではありません。
    投機があるから市場には流動性が生まれますし、価格発見も進みます。
    誰かがリスクを取るから、他の誰かは売買できます。
     
    問題は、投機や資産運用まで全部まとめて「投資」と呼ぶことで、あたかも社会の成長に資金が流れているように見えてしまうことです。


    7.  「貯蓄から投資へ」ではなく、まずは「貯蓄から資産運用へ」

    そう考えると、「貯蓄から投資へ」という言葉は、とても響きがよいのですが、言葉の響きから、少し違うイメージで受け取られている面もあるのではないかと思っています。

    企業の設備投資、研究開発、人材投資、新規事業創出、あるいはスタートアップへの資金供給など、
    こうしたところに資金が向かって、初めて「眠っている資産が社会の成長につながる循環」と言いやすくなりますよね。

    もちろん、家計の資産運用が資本市場の厚みを作り、企業価値向上や資金調達環境に間接的に効くことはあると思います。
    ただ、その間にはいくつものステップがあります。
    そこを飛ばして全部を「投資」と呼んでしまうと、現金が金融商品に置き換わっただけでも、「投資」と言えてしまいます。
    しかし、それだけでは経済の活性化というより、個人の資産防衛で止まってしまうのではないかと思います。


    8. 資産を守るだけでよいのか?

    もちろん、個人が自分の資産を守ることは大切です。
    ただ、それだけで終わってよいのか、という思いもあります。
     
    「貯蓄から投資へ」という言葉を、単なる資産運用の話として捉えるなら、目的は自分の資産を守ることになります。
    政府としても第一の目的としては将来の不確実性に向けて資産を守ることを目的の1つにしています。
     
    しかし、「投資」というならば、その資産が投資として何を支えているのか、何を変えていくのか、ということを一歩踏み込んで考えるべきではないでしょうか。
     
    色々あると思います。
    誰の挑戦を支えているのか。
    どんな事業を育てているのか。
    次の世代に、どんな社会を残そうとしているのか。
     
    昔は、現金や土地を貯めて、子どもに遺すことが資産形成だったのかもしれません。
    しかし、今はそれ以外の道もあると思っています。
     
    「次の世代が生きる社会そのものを少しでも良くして遺すこと」
     
    これは本来社会を構成する全員で考えて、全員で行っていくべきことであって、
    だからこそ、過去から眠ってしまっている貯蓄を回すべき投資先は、ここなのではないかと思っています。
     
    ぜひ自分の投資ポートフォリオは、資産を守っている他に、「何を支えているのか」を考えてみてください。
     
    それでは。

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    証券会社、上場会社経営企画、スタートアップのマネジメント等経験し、現在は不動産仲介及び売買、事業承継コンサルティングの会社を経営しています。 トピックは絞らず、構造的な整理を中心に書いています。 趣味は釣り、アクアリウム、DIY、ゴルフ、など。 更新頻度は週2回~です。

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