【第16話】30分以内に来てください
夕方、仕事が終わって、
少し残業していたとき。
病院から連絡がきた。
「手術が終わりましたので、30分以内にお越しください」
……え?
30分以内?
何かあった?
一瞬でいろんなことを考えた。
とにかく急いで病院へ。
すると、
特に緊急事態ではなく、
ドクターからの術後説明のためだった。
……あぁーーー。
びっくりした。
心臓に悪い。
手術は順調に終わったとのこと。
取り出した膀胱は検体に出して、
癌が残っていないか詳しく調べるらしい。
結果が出るまでは、まだ分からない。
そして、
「まだ少し麻酔が効いているので、
応答はないかもしれませんが、会っていかれますか?」
もちろん会う。
「5分だけです」
そう言われて病室へ。
主人は、たくさんの管につながれていた。
顔をしかめながら、
「痛い……痛い……」
と、辛そう。
そりゃ痛いよね。
今日、膀胱取ったんだもん。
そう思いながら主人を見る。
たくさんの管。
点滴。
いろんな機械。
そして、痛がる主人。
ここまで見て、
やっと実感した。
あ、本当に大きな手術したんだ。
……膀胱、なくなったんだ。
でも、しんみりする間もなく、
隣の患者さんが
ものすごく大きな声で何かを言っている。
主人は「痛い、痛い」。
隣は大声。
私は立ってる。
管はいっぱい。
機械もいっぱい。
……。
カオス。
病院って、
こんなにいろんなことが同時に起こる場所だったっけ。
なんだか現実感があるような、ないような。
さっきまで
「無事に終わった」とホッとしていたのに、
目の前には、
管だらけで痛がっている主人。
そして、もう膀胱はない。
……情報量が多い。
とりあえず、
「痛いね」
と言うしかなかった。
5分だけの面会を終えて、病室を出る。
手術は無事に終わった。
でも、
ここからが本番らしい。
……癌には癌の事情がある。
主人には主人の事情がある。
そして私は、
妻として、これから何をすればいいのか。
まだ、よく分からない。
そんな私、ちゃんと人間やってます。🌙
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