
ORDIEL -試練-
【あらすじ】
在日クルド人の父を持つハーフの青年。
彼は同級生の妊娠の責任を擦りつけられてしまう。
世間の偏見の目は強くなり彼と家族は生活が困難になってしまう。
しかし彼は屈する事なく、聖書に書かれた「忠実な者は多くの祝福を得る」という聖句をもとに忠実である事を決意する。
【登場人物】
イルマズ箴(18):日本とクルドのハーフの高校3
年生。
イルマズ・コチェル(57):箴の父親。
イルマズ愛菜(15):箴の妹で高校1年生。
イルマズ練(4):箴の弟で幼稚園児。
瀬戸裕也(18):箴の同級生。
山中俊介(18):箴の同級生で揶揄って来る。
草間玲(18):箴の同級生で箴の憧れ。
池松神父(40):キリスト教の神父。
その他
【本編】
○メインタイトル
《ORDIEL -試練-》
○川口市 私立高校 礼拝堂 (朝)
池松神父(40)、ステージで両手を広げ祈る。
池松「イエスは、神を愛し、教えに忠実に従って
生きるならば、神から多くの祝福を受けるとお
っしゃいました。どうか、私たちが何ごとにも
忠実で、また、神の祝福を受けるにふさわしい
人になれますように。アーメン。」
オルガンの音が静かに響く。
池松の背後のプロジェクターには聖句が写さ
れていた。
以下、画面上
× × ×
《今日の御言葉『忠実な人は多くの祝福を得る 箴
言 28:20』》
× × ×
礼拝が終わった後、生徒たちは聖書を閉じて
外へ出ようと歩く。
イルマズ箴(18)、前を歩く生徒がペンを落と
したのを見る。
前の生徒、歩いていく。
箴、ペンを拾い追いかける。
箴「待って」
前の生徒、振り向く。
箴、ペンを差し出す。
箴「落としたよ」
生徒「ども……」
前の生徒、そそくさと走り去る。
そして前方の友人と合流し笑顔を見せ談笑を
始めた。
すると瀬戸裕也(18)、後ろから箴の肩を組
む。
裕也「ぅいお疲れ〜」
箴、裕也が持つ教材に目が行く。
箴「おっす、あれ、何で教科書とか持ってん
の?」
裕也「いや1時間目から移動だろ、忘れてた?」
箴「やべ、取ってくるわ」
裕也「あいよー」
箴、駆け足で礼拝堂を出る。
○川口市 私立高校 3-B教室 (朝)
箴、息を切らし教室に入る。
自分の席に山中俊介(18)が座り近くの席の友
人と談笑していた。
箴、ゆっくりと俊介に近付く。
箴「あ、あの……」
俊介「マジかよ! ぶはは!」
箴「えっと……」
俊介の友人、箴に気付き合図する。
俊介、振り返る。
俊介「あぁごめん、席借りてたわ」
箴「いやぁあの、荷物取ったらすぐ行くから」
俊介、座ったまま箴の肩を叩く。
俊介「そんなビビんなくて良いだろ。大丈夫だっ
て、俺が嫌いなのは純粋なクルド人だけだか
ら!」
箴「俺の親父……純クルド人だけど」
俊介「やっぱ訂正、悪いクルド人な」
俊介、立ち上がり友人たちと教室を出て行
く。
箴、席に座り机の中を漁った。
すると草間玲(18)、箴に声を掛ける。
玲「大丈夫……?」
箴「あぁうん、大丈夫だよ慣れっこだし」
玲「慣れるまで言うって酷いよね。私から言っと
こうか?」
箴「いや良いよ、無理に草間さんが言う必要
は……」
玲「そう? じゃあ行くね、イルマズも急いだ方
がいいよ」
玲、去って行く。
箴「うんっ……!」
箴、玲の長い髪を見つめた。
○川口市 私立高校 3-B教室 (夕)
放課後、箴と裕也は鞄を背負う。
裕也「今日このあと暇?」
箴「ごめんバイト。父さんが早上がりだからさ、
その分俺が働かなくちゃいけなくて」
裕也「そっか練のお迎えかー、愛菜じゃダメな
の?」
箴「部活。スポーツ推薦だから休む訳にはいかな
いって」
裕也「そんでお前に損が回って来てると」
箴「別に損じゃねーよ、必要な事だし」
裕也「青春できる内にしといた方が良いぜー?
ホラ、バイトさえ無ければ草間さんデートに誘
えるかもだろ」
箴「はぁ⁈ 何で草間さんなんだよ?」
裕也「山中に揶揄われてよ、いつも慰めてもらっ
てるだろ。それで好きになんねーの?」
箴「そんなんじゃないって……」
○川口市 コンビニ (夜)
箴、制服を着てレジに立つ。
箴「いらっしゃいませー」
酔っ払った男、来店する。
フラフラとレジ前にやって来る。
男「クールボックスカートンで」
箴「えっと……」
箴、タバコの棚を探す。
男「チッ、260だよ260! 早くしてくれっ……」
箴、クールボックスを手に取り在庫を確認す
る。
箴「申し訳ありません、只今こちら5つしか在庫
がなくて……」
男「んだよ待たせた挙句、じゃあ良いよ5つで」
箴、レジに打ち込む。
男、箴の"イルマズ"と書かれた名札を見る。
男「こっち長ぇの?」
箴「え? あぁ、生まれも育ちも日本です。父が
こっち来てから生まれて」
男「最近増えたよなぁクルド人。何なんだろう
な」
箴「さぁ、何なんでしょう……」
箴、タバコ5つとレシートを渡す。
男「レシートいらね、じゃ」
男、コンビニから去る。
箴「ありがとうございましたー」
店長、レジに入る。
店長「イルマズ君、大丈夫だった?」
箴「はい、慣れっこなんで」
店長「ああ言う人も増えてるからねー。大丈夫だ
よ、イルマズ君は他と違うって知ってるから」
箴「ありがとうございます……」
○川口市 アパート イルマズ家 玄関 (夜)
箴、アパートの部屋の扉を開ける。
箴「ただいまぁ」
イルマズ練(4)、よちよち走ってくる。
そのまま箴に飛びついた。
箴、練を抱き上げる。
練「おかえりー」
箴「練、まだ起きてたのか」
イルマズ愛菜(15)、練の後ろから来る。
愛菜「兄ちゃんに会うまで起きてるってうるさい
の。ホラ練、もう寝るよー」
練、箴に強くしがみ付く。
練「嫌だー」
箴、練の頭を撫でる。
箴「いい子は9時には寝るんだぞー?」
練「うん……」
練、箴から降りる。
箴と手を繋ぎ家の中へ。
○川口市 アパート イルマズ家 居間 (夜)
居間、テレビで夜のニュースが流れている。
テレビ台の横には日本人女性の遺影が。
イルマズ・コチェル(57)、床に座りちゃぶ台
に置かれた履歴書に記入している。
箴の姿が見え手を振る。
コチェル「おーお疲れー」
箴、ちゃぶ台の履歴書を見る。
箴「父さん、まさかまたクビ?」
コチェル「本当に申し訳ない、人件費削減だっ
て」
箴「だから資格とかある仕事すりゃ良いって言っ
たじゃん」
コチェル「勉強してる間お前が苦労するだろ」
箴「それは良いって言ってるじゃん、父さんが不
安定な方が心配だよ」
練、おもちゃを出そうとする。
箴「あ、練。寝なきゃだって」
練「えー」
箴「ホラ、布団行くよ」
箴、練の背中を押し寝室へ連れて行く。
コチェル、箴の背中を見つめ溜息を吐いた。
× × ×
練、寝室で眠っている。
箴、床に座りコチェルと向かい合う。
箴「資格ならすぐ取れるものもあるから、そーゆ
ーの要らない仕事やってたらまたすぐクビだっ
て」
コチェル「でも資格取るのにも金かかるだろ?
その間はどうすんだよ」
箴「だから俺が稼ぐって。バイトも増やすから
さ、俺を楽にするって考えたら頑張れるでしょ?」
コチェル「まぁそうだけどさ」
するとテレビのニュースで新たな報道がされ
る。
以下、画面上
× × ×
キャスター「本日未明、埼玉県川口市のコンビニ
エンスストアに強盗が入り店員に暴行を加えた
後、商品を数点盗み、その他商品を金属バット
で破壊したとの情報が入りました。被害者の証
言から犯人は複数名でクルド人であったと思わ
れます」
監視カメラの映像が映る。
クルド人男性の2人組が金属バットを店内で
振り回している様子が映された。
× × ×
コチェル、リモコンでテレビを消す。
そのまま立ち上がった。
コチェル「お前晩飯まだだろ? 今温めるから」
コチェル、冷蔵庫を開けラップのかかった料
理を電子レンジに入れて温める。
箴、唇を噛んだ。
× × ×
箴、温められた食事を前に手を合わせる。
箴「天に在られる我らの父よ、今日もこの食事を
感謝します。どうか父の仕事が見つかり安定し
た日々が過ごせますように、練の幼稚園での
日々もお守り下さい。そして愛菜の学校生活も
上手く行きますように、部活で大変だとは思い
ますがしっかり心を安らげるようにお願いしま
す。主イエス・キリストの御名によってお祈り
します、アーメン」
箴、食事を始める。
愛菜、その様子を見ていた。
愛菜「ねぇ、自分の事は祈らないの?」
箴「え? あぁ忘れてた。まぁいいや」
愛菜「たまには自分も大事にしなよ、兄ちゃんが
しんどいの見てられないからさ」
箴「別にしんどくねぇよ、お前らが大変な思いす
る方がしんどいって」
愛菜「はぁ、いっつもそれだね。じゃあ私寝るか
ら」
愛菜、立ち上がる。
箴「明日も朝練?」
愛菜「そ、せっかく推薦で行かせてもらえたんだ
から」
愛菜、寝室へ向かう。
箴、食べ進めた。
○川口市 アパート イルマズ家 寝室 (夜)
家族4人、同じ寝室で布団の上で寝ている。
○川口市 教会 礼拝堂 (日替わり朝)
箴、コチェル、練の3人、礼拝堂の席に並ん
で座る。
近くに座る参列者に軽く会釈をした。
池松、壇上に上がる。
池松「本日も日曜礼拝にお集まり頂き感謝しま
す。では皆さんでお祈りを捧げましょう」
参列者たち、両手を握り祈りの言葉を聞く。
池松、両手を上げ祈る。
池松「天に在します我らの父よ、今日ここに皆が
集められた事を誠に感謝致します。今日も皆が
神の御言葉を聞き天の道に近付けるようお導き
下さい。そしてイルマズ兄弟のご家庭をお救い
下さい、母を亡くし困難な道を歩んでいる所だ
と思いますがどうか忠実な彼らに祝福があらん
ように……」
箴、目を閉じ両手を強く握った。
× × ×
礼拝の終了後、箴たちは池松の所へ。
練、箴の足にしがみ付いている。
コチェル、池松と握手する。
コチェル「先生、ありがとうございます祈ってく
れて」
池松「いえいえ、お仕事の方は見つかりました
か?」
コチェル「それがまだで……面接もしたんですけ
ど全部落ちました」
池松「そうでしたか……我々も祈っておりますの
で、この試練を乗り越えればきっと明るい未来
が見えますよ」
コチェル「ありがとうございます」
しかしコチェル、顔を下げる。
コチェル「でも未だに私は洗礼を受けてないで
す。箴はとっくに信仰を告白してると言うの
に、私はまだ迷ってるんでしょうか……?」
池松「……まだ同胞を裏切ったとお考えです
か?」
コチェル「えぇ、その悩みは消えてないです。私
がイスラムをやめてこちらに来たからクルドか
らも追い出されて子供たちも居場所がな
い……」
池松、コチェルの肩に手を置く。
池松「居場所ならありますよ。神も我々もあなた
方を受け入れてます、優菜姉妹がここに連れて
来た時からね。受け入れられる事を受け入れる
のも立派な信仰の一歩ですよ」
コチェル「はい、ありがとうございます……」
池松、箴を見る。
池松「そういえば箴くん、大学の方は?」
箴「明日結果を教えてくれます、池松先生も後押
ししてくれたので大丈夫だと思いますけど」
池松「なかなかあそこの推薦は厳しいけどね、ク
リスチャンだって事は大きいから。それまで祈
ってなさい」
箴「はい、そうします」
池松、コチェルを見る。
池松「愛菜ちゃんは部活ですか?」
コチェル「はい、やっぱ土日も忙しいみたいで」
池松「たまには教会にもいらっしゃいって言って
おいて下さい」
コチェル「いつも言ってるんですけどね」
箴、壁に掛けられたキリストが十字架に架け
られる絵画を眺める。
池松、そこに近付く。
池松「大丈夫だよ、君は神の試練に忠実に向き合
ってる。そういう人は必ず祝福されるから」
箴「前に学校で言ってた聖句ですね。分かってま
す、クルド人ってだけで警戒されちゃうのは仕
方ないから……せめてそこはちゃんとしない
と」
池松「そうそう、君はいつもちゃんと聞いてくれ
て嬉しいよ。神はしっかり見てくれてるから。
安心しなさい」
箴「はい」
○川口市 街中 道路
イルマズ家の3人、歩道を歩く。
するとマクドナルドが見えた。
練、そちらを指差す。
練「あれ食べたい!」
コチェル「えー金ないからなぁ、それに日曜だか
ら混んでるぞ?」
練「嫌だ食べたいー!」
コチェル、泣き出す練を抱き上げる。
コチェル「帰ったらパパがもっと美味いもん作っ
てやるからな、急ぐぞ!」
コチェル、練を抱き上げながら走り出す。
箴、慌てて走り出した。
○川口市 アパート イルマズ家
箴、食べ終わった食器をキッチンへ持って行
く。
コチェル、洗い物をしていた。
練、玩具で遊んでいる。
箴「はいこれ」
コチェル「あいよー」
箴、練の方へ向かい床に座る。
するとスマホに通知が、確認すると愛菜から
だった。
家族のグループにメッセージが。
以下、画面上
× × ×
愛菜「年明けの新人戦あるでしょ? レギュラー
に選ばれましたー!」
× × ×
箴、飛び上がり報告。
箴「すげぇ、愛菜がレギュラーだって!」
コチェル「マジ⁈ 新人戦で⁈」
箴「そう!」
コチェル「うぉー!」
コチェル、洗い物を中断し泡がついたままの
両手で箴の頬を触る。
箴の頬に泡がついた。
箴「おいやめろって……」
しかし箴、笑っている。
コチェル、次に練を抱き上げる。
コチェル「姉ちゃんがやったぞー!」
練、服が泡まみれになる。
コチェル、練を抱き上げたまま踊った。
○川口市 河川敷 (日替わり)
コチェル、スーツ姿で肩を落とし歩いてい
る。
スマホに電話が掛かってきた。
コチェル、応答する。
コチェル「もしもし?」
電話の相手、箴だった。
箴「父さん? 推薦してくれるってさ! 受かれ
ば奨学金も出るって!」
コチェル「マジかやったな!」
箴「で父さんは? 面接どうだった?」
コチェル「あーこれは絶対落ちたわ……反応で分
かる」
箴「そっか……でも俺は上手くやるからさ、もう
ちょいゆっくり決めなよ」
コチェル「でもお前の負担増やしちまう
ぞ……?」
箴「池松先生も言ってただろ、これは試練なんだ
よ。忠実に受け止めて乗り越えれば祝福される
って。だから今は頑張る期間なんだよ」
コチェル「はは、そーゆー理解ね」
箴「そうそう、俺の解釈。だからあんま心配すん
なよ」
コチェル「あぁ、それじゃ」
コチェル、電話を切る。
そのままスマホで家族のグループを見た。
そこには愛菜がレギュラーに選ばれたという
メッセージ。
コチェル、静かにガッツポーズをした。
すると橋の下にクルド人たちが集まっている
のを見つける。
コチェル、彼らと目が合った。
コチェル、手を振ってみるが無視されてしま
う。
そのまま歩き去った。
○川口市 私立高校 3-B教室
箴、教壇に立つ。
隣で玲が黒板に文字を書こうとしている。
箴「ではクリスマス特別礼拝の讃美についての話
し合いを始めます」
箴の視線の先では机に座る同級生たちが話を
聞かず談笑している。
裕也だけが真剣に聞いていた。
箴「おーい、話始まってるぞー」
クラス内の談笑、止まらない。
裕也、溜息を吐く。
玲、声を上げた。
玲「ちょっと皆んな! 真面目に聞かないとずっ
と終わらないよ⁈」
同級生たち、前を向く。
箴「あ、ありがとう草間さん」
玲「良いよ、やんなきゃいけない事だし」
玲、箴に微笑む。
箴、仕切り直す。
箴「じゃあまずピアノ伴奏を決めたいと思いま
す。例年通りだと草間さんだけど……」
箴、玲を見る。
玲「私で良いよ、他にピアノ出来る人いないでし
ょ?」
箴「じゃあ曲だけど候補の中から何か歌いたいの
ありますか?」
玲、候補曲を黒板に書いていく。
候補はきよしこの夜、もろびとこぞりて、神
の御子は今宵しも、荒野の果てに。
しかし誰も発言しない。
裕也、見かねて発言した。
裕也「もろびとこぞりてなら有名だし皆んな歌え
るんじゃない? 去年も3年生歌ってたし」
箴「いいね、じゃあ1票」
玲、もろびとこぞりてに正の字の一角目を書
く。
すると俊介を始めとした同級生たちが小声で
会話を始める。
箴、それに気付き俊介に問う。
箴「じゃあ山中くん、なんかある?」
俊介「俺? いやーその辺はガチクリスチャンの
イルマズが決めた方が良いんじゃない? 俺ら
が考えた所でねぇ?」
箴「いやでもクラスの発表だから俺個人の意見じ
ゃ決められないよ」
俊介「俺らはお国柄そーゆーのには疎いからな、
分かってる奴がいるなら任せた方が良いよ。だ
から学級代表にも選ばれたんだろ?」
俊介、席が近くの同級生たちとまた小声で話
し始める。
箴、それを見て顔を下げる。
玲、ゆっくり前に出た。
玲「皆んな! 真面目に聞いて!」
クラス内、一斉に玲を見る。
玲「何でもイルマズに押し付けて、彼が文句言わ
ないからって良い気になり過ぎ!」
俊介、座りながら伸びる。
俊介「ま、しゃーないか玲が言うなら」
玲、箴に振り向く。
玲「今回は私に任せて、書記やってもらおうか
な」
箴「ありがと……」
箴、チョークを手に取った。
○川口市 ゴミ処理場 外観 (日替わり)
コチェル、スーツを着て出て行く。
スマホに電話が、応答する。
コチェル「もしもしイルマズです……え、はい、
すぐ向かいます」
コチェル、走り出す。
○川口市 保育園 空き教室
コチェル、椅子に座り保育士と向かい合う。
練、コチェルの隣に座る。
頬には絆創膏が貼ってあった。
保育士「何度か揶揄われる事はあったんですがと
うとう限界が来たみたいで……」
コチェル「そうですか……」
練、涙目で語る。
練「だってふうが君がいっつもパパのことバカに
するから……」
コチェル「俺のために怒ってくれたのはありがと
な。でも殴っちゃダメだ、そしたら同じになる
だろ?」
練「でもずっと嫌だったんだもん……」
練、静かに泣き出してしまう。
コチェル、練の頭を撫でる。
コチェル「今日はもう帰らせます。練、明日ちゃ
んと謝れるか?」
練「うん……」
○川口市 保育園 外観
コチェルと練、保育園から出る。
コチェル、少し立ち止まる。
コチェル「なぁ、ちょっと寄り道しないか?」
練「寄り道?」
コチェル「パパと遊ぼうよ」
コチェル、練の手を取り歩き出す。
練「どこ行くの?」
コチェル「そうだなぁ。あ、マック行ってみる
か?」
練「いいの⁈」
コチェル「平日だから混んでないでしょ」
練、スキップしながら歩く。
○川口市 マクドナルド 店内
練、ハンバーガーを頬張る。
テーブルにはハッピーセットの玩具が開封さ
れていた。
コチェル、ポテトだけを食べながら練を眺め
る。
コチェル「美味い?」
練「うん! パパも食べる?」
コチェル「はは、ケチャップ付いてるぞ」
コチェル、ナプキンで練の口を拭く。
コチェル「パパはいいよ、練が食べなさい」
練「でもパパ、ポテトだけでいいの?」
コチェル「いやー実はさ、さっき食べて来ちゃっ
たんだ。お腹いっぱいなんだよ」
練「残念だねー、せっかくなのに」
練、また頬張る。
コチェル「おいまた付いてる」
コチェル、再度ナプキンで拭いた。
すると入口から新たな客が来てコチェルはそ
ちらを見る。
それはクルド人たちだった。
コチェル、顔を下げる。
するとクルド人の中の1人がコチェルに気付
いた。
※以下、クルド人とのやり取りはクルド語
クルド1「よぉ、最近はどうだ?」
コチェル「まぁ普通かな……」
クルド2「普通ね、イエスって奴に縋ってソレ
か」
コチェル「そんなこと言うなよ、今は試練の最中
だ」
クルド1「ガキにも信じさせてんのか?」
コチェル「子供たちは自分から信仰してる、迷っ
てんのは俺だ」
クルド1「フン、裏切った割にソレか。ヘリンは
未だに独身なんだぞ、親父の介護しながらな」
コチェル「言ったろ、ヘリンにはもっと良い人い
るって」
クルド人たち、コチェルを強く睨む。
すると番号が呼ばれた。
店員「281番のお客様ー」
クルド人たち、商品を取りに向かう。
無言でコチェル達の所から去った。
コチェル、練を見る。
練、不安そうにコチェルを見ていた。
コチェル「食ったらさっさと帰るぞ」
コチェル、ポテトを数本取り頬張った。
○川口市 コンビニ (夕)
箴、売り場に出て品出しをしている。
するとお菓子コーナーでキョロキョロする男
児を見つけた。
箴、不思議そうに男児を見ている。
すると男児、ポケットにお菓子を入れてコン
ビニから外へ出る。
箴「うわっ……」
箴、慌てて追いかける。
店長、箴に問う。
店長「どうした⁈」
箴「万引きです!」
箴、コンビニから出て追いかける。
○川口市 道路 (夕)
箴、男児を追いかける。
箴「君! 待って!」
男児、走っているとポケットに仕舞ったお菓
子を落としてしまう。
男児、振り返り拾おうとするが箴に腕を掴ま
れる。
男児「あっ……」
箴「これお会計してないよね?」
男児「うっ……」
男児、振り解こうと暴れる。
箴、何とか押さえつけようとする。
すると男児、泣き出してしまった。
男児「うぇぇぇんっ……」
箴、慌ててしゃがみ目線を合わせる。
箴「あっ、えっと……」
すると角を曲がって来た通行人が電話をして
いる。
通行人「えぇ、外国人が子供を……はいっ」
箴、周りを見る。
スマホで動画を撮っている人までいた。
箴「ち、違いますっ! 万引きなんです……!」
箴が人に近付いても誰もが遠ざかった。
その隙に男児は逃げてしまった。
○川口市 コンビニ 外観 (夕)
箴と店長、パトカーで去る警察に頭を下げ
る。
パトカーが去った後、頭を上げた。
店長「監視カメラ万々歳だね」
箴「焦りましたよマジで……」
店長「疲れたでしょ、もう帰って良いよ」
箴「え、でもまだ時間……」
店長「怒られるかもだけどボーナス出しとくか
ら、お金は心配しないで」
箴「……すみません、じゃあ失礼します」
○川口市 アパート 外観 (夜)
箴、アパートの前で愛菜と鉢合わせる。
愛菜、バレーボールを持っていた。
箴「愛菜、今帰ったの?」
愛菜「ちょうど部活終わったから」
箴「そっか」
2人、階段を登る。
○川口市 アパート イルマズ家 (夜)
箴と愛菜、共に帰宅。
箴「ただいまー」
練、駆け寄る。
練「あー、兄ちゃんと姉ちゃん一緒だ!」
箴、練を抱き上げる。
頬の絆創膏を見た。
箴「ほっぺのソレどうした?」
練「んー、喧嘩しちゃった」
箴「マジかよー」
三兄弟、居間に入る。
コチェル、テレビでニュースを見ていた。
以下、画面上
× × ×
キャスター「本日未明、川口市内の商店に強盗が
入りました。店主に暴行を加えた後、商品数点
を盗んだ模様です。証言から犯人はクルド人で
あったとされます」
× × ×
箴、テレビを消す。
コチェル「あ」
箴「こんなニュースばっかで嫌になるだろ、何で
わざわざ見てんだよ」
コチェル「今日早くね?」
箴「まぁ、色々あってさ……」
コチェル「じゃあ今日は久々に全員で飯食える
な」
箴「そうだね、もう出来てる?」
コチェル「あぁ、盛るわ」
コチェル、立ち上がる。
コチェル「今日は自信作だぞー、優菜にもあげる
か」
コチェル、少量のパスタを小皿に盛り遺影の
前へ。
コチェル「そっちはどうだー? 俺たちは絶賛試
練乗り越え中だぞ」
箴、そんなコチェルの姿を見ていた。
○川口市 アパート イルマズ家 (夜)
箴、練と遊んでいる。
コチェル、洗い物をしていた。
愛菜、スマホでSNSを見ている。
するとある投稿を見かけた。
以下、画面上
× × ×
『クルドが小学生カツアゲしてて草』
× × ×
動画が添付されておりそこには箴が万引きし
た男児を押さえつける様子が切り抜かれて
た。
愛菜、箴を一瞬見てスマホを消す。
立ち上がり風呂場に向かった。
愛菜「じゃあ私風呂入ってくるから」
箴「練も早めに入れなきゃだから急ぎでなー」
愛菜「分かってるー」
箴、練と遊び続けた。
○川口市 私立高校 外観 (日替わり朝)
翌朝、生徒たちが登校している。
箴の姿もあった。
○川口市 私立高校 廊下 (朝)
箴、教室に向かって歩く。
生徒たち、箴をジロジロ見ている。
箴、視線を気にする。
○川口市 私立高校 3-B教室 (朝)
箴、教室に入る。
賑わっていた教室、一瞬で鎮まる。
箴「え、何……?」
裕也、箴に近付き机に座らせる。
裕也「おい、これ知らないのか?」
裕也、スマホを見せる。
画面には箴が万引きした男児を押さえつける
動画が映されていた。
箴「何でこれ……」
裕也「お前が小学生に暴行したって拡散されてる
ぞ……」
箴「いやいや! 万引きしてたから捕まえただけ
だって!」
裕也「分かってるよ、俺は分かってる。でも悪い
切り取り方されたから誤解が凄い事なってん
だ……」
裕也、箴に見えないようにコメント欄を確
認。
心無い言葉で溢れていた。
すると担任が入ってくる。
担任「座ってー、出席取るぞ」
男子生徒が1人手を上げる。
生徒「先生ー、俊介が来てません」
俊介の机、空いている。
担任「山中はな……ニュース見たか?」
生徒「え、まさかあの商店って……」
担任、静かに頷く。
担任「あとイルマズ。ホームルーム終わったら職
員室に来てくれ、理由は分かってるな?」
箴「は、はい……」
箴、膝が震えていた。
○川口市 私立高校 職員室 (朝)
箴、担任から質問されていた。
担任「じゃあ本当に万引き犯を捕まえただけなん
だな?」
箴「はい、そうです。俺そんな事しませんもん」
担任「じゃあ1つ聞くが、この学校がバイト禁止
なの分かってるか?」
箴「あ……」
担任「お前の家庭の事情は知ってるけどな、この
学校に通う以上はルール守ってもらわないと」
箴「はい……」
○川口市 コンビニ 事務所 (夕)
箴、事務所で店長と向かい合い話す。
店長「本当に悪いけど、店のイメージのためだか
ら……君が頑張ってくれたのは分かってる」
箴「いえ、でも父の仕事が見つかるまでどうすれ
ば良いか……」
店長「次の給料までは払えるからさ、何とか頑張
ってとしか言えない……」
箴「すみません、ありがとうございます……」
箴、立ち上がり去る。
○川口市 コンビニ 外観 (夕)
箴、トボトボ歩き出す。
店長、袋を持って追いかけて来た。
店長「待って!」
箴、振り返る。
店長、息を切らしながら袋を渡す。
中には弁当が入っていた。
店長「廃棄のやつ、本当はダメだけど家族で食べ
てよ」
箴、店長に向き直り頭を下げる。
箴「ありがとうございます、頂きます」
店長、箴の肩に手を置く。
店長「本当に頑張って。今度は客として来てよ」
箴「はい……っ」
箴、振り返り歩き出す。
○川口市 山中家 商店 (夜)
俊介、荒らされた商店を中から眺めている。
警察、中を調べている。
所々に警察のつけた印があった。
警察、俊介の肩に手を置く。
警察「大丈夫、犯人は絶対捕まえるから」
俊介「でも意味あるんすか? まだまだクルドは
残ってますよ……」
警察「そこは政治家の人達に任せるしかない
な……でも新しい知事が難民対策について動い
てるから」
俊介「……待つしか無いっすよね」
すると俊介の母、家の中から呼ぶ。
母「俊介ー、ご飯ー」
俊介「はーい」
俊介、家の中に入る。
○川口市 山中家 居間 (夜)
俊介、両親とテーブルを囲い食事。
テーブルには松葉杖が立てかけられている。
父の左足には包帯が巻かれていた。
母「いつ営業再開できそうなの?」
父「分からん、警察の取り調べが終わらんと」
母「じゃあそれまで収益は? 何で私たちがこん
な……」
俊介、顔を落としている。
俊介「政府が難民なんか受け入れるからだ」
俊介、途中で箸を置いて去ってしまう。
母「ねぇご飯は⁈」
○川口市 道路 (夜)
俊介、ポケットに手を入れ歩いている。
ある一軒家に辿り着いた。
○川口市 草間家 外観 (夜)
俊介、スマホを見ている。
玲が扉を開けて出て来た。
玲「ん、入って」
俊介、中に入る。
○川口市 草間家 玲の部屋 (夜)
俊介と玲、ベッドに座る。
玲「家の方は……?」
俊介、首を横に振る。
玲、顔を落とす。
俊介、の隣に座った。
俊介「全部最悪だよ、店のものはぶっ壊れるし親
父は足怪我して杖必要だし。クルドなんかクソ
だ......」
俊介、顔を押さえて涙を流す。
玲、俊介の背中を摩る。
玲「泣かないで、私がいるから」
俊介、玲に勢いよく抱き付く。
俊介「なぁ、慰めてくれんのか.......?」
俊介、玲に口付け。
舌を入れて行く。
玲「んっ、ちょっと待って......」
俊介、一度離れる。
玲「今日ゴムないよ……?」
俊介「知るかよ……」
俊介、再度口付けした。
○川口市
枯葉が落ち、雪が降り始める。
○川口市 草間家 外観 (数日後朝)
外、雪が少し積もっていた。
○川口市 草間家 居間 (朝)
玲の両親、朝食を取っている。
父「そういえば玲は?」
母「起きて来ないね……」
父、大声で呼ぶ。
父「玲! 起きろ! 学校だぞ!」
数秒後、静かに扉が開く音が聞こえる。
階段をゆっくり降りる音がする。
父「もっと急ぎなさい! 遅刻するぞ!」
階段から転がり落ちる音が聞こえた。
両親、慌てて向かう。
○川口市 草間家 廊下 (朝)
玲、階段から転がり落ちていた。
母、駆け寄る。
母「玲! 大丈夫⁈」
母、玲を抱き上げる。
玲「気持ち悪い……」
玲、そのまま嘔吐。
父、立ち尽くしている。
母「ちょっと! 拭くもの持って来て!」
父「あ、あぁ……!」
父、タオルを持って来た。
母「こんなんじゃダメでしょ! あなた本当何も
わかってない!」
父「いや俺だってなぁ、色々やってんだよ……」
母、立ち上がり洗面所へ向かって歩いた。
○川口市 草間家 玲の部屋 (朝)
玲、ベッドに寝ている。
○川口市 草間家 居間 (朝)
母、電話している。
母「はい、じゃあお願いします……」
母、電話を切る。
父「なぁ、本当に欠席で良いのか? 回復したら
遅刻でも……」
母「何言ってんの! こんな時まで成績⁈ 多分あ
なたのソレが追い詰めたんでしょ!」
父「何言ってんだ、俺は……っ」
その時テレビのニュース番組が8時を知らせ
た。
父「……俺は仕事行くぞ」
父、家を出た。
母、溜息を吐く。
○川口市 私立高校 3-B教室 (朝)
女子生徒たち、話している。
女子1「今日玲休みだってー」
女子2「風邪かなー、季節の変わり目だしね」
箴と裕也、聞いていた。
裕也「残念だな」
箴「何でだよ……」
○川口市 草間家 居間
母、洗い物をしている。
玲、階段から降りて来た。
○川口市 草間家 トイレ
玲、片手に妊娠検査キットを持っている。
反応を見て頭を抱えた。
○川口市 草間家 居間 (夜)
玲、家族と夕食。
父「良くなったなら行けば良かったな」
母「まだ言ってる……」
父「だってこの時期だぞ? 成績落としたら大変
だろ」
母「そんなに学歴が大事? 体調崩してまでやら
せる事?」
玲、食べずに俯いている。
震えながら口を開いた。
玲「あの、さ……っ!」
父「どうした?」
玲、父と目が合い冷や汗を流す。
顔を下げた。
玲「……明日は学校行けると思うから、心配しな
いで」
父「そうか良かった」
父、食事を続けた。
玲、震えていた。
○川口市 草間家 玲の部屋 (夜)
玲、ベッドで横になりスマホを見ている。
検索履歴には『高校生 妊娠』などの言葉が
連なっていた。
画面をスクロールしているとあるニュースが
目に止まる。
以下、画面上
× × ×
「度重なるクルド人による被害。高まる住民たち
の不安」
× × ×
玲、息を呑み画面を眺めた。
○川口市 私立高校 グラウンド (日替わり)
強い雨が降っていた。
雨が少し積もった雪を濡らす。
箴、上着を羽織り器具を体育倉庫へ持って行
く。
その間、雨に濡れていた。
箴「はぁ……」
箴、外を見る。
すると玲も器具を持ってやって来た。
全身が濡れている。
玲「ふぅー、冬なのに凄い雨だね」
箴「草間さんも任されたんだ……?」
玲「代表だからってね、これじゃ昼休み終わっち
ゃう」
箴「まだまだ残ってるよね……」
箴、跳び箱の上に座る。
溜息を吐いた。
玲「大丈夫……?」
箴「いや、久々にマトモに喋ってもらえたなと思
って」
玲「あぁ……みんな酷いよね、悪くないって証明
されたのに」
玲、箴の前に立つ。
箴「うん、本当に……」
箴、顔を上げる。
玲、上着を脱ぐ。
体操着が濡れて透けていた。
玲「動いたら汗かいちゃってさ、寒いのに暑い感
じ」
下着の色や形が分かる。
箴、目を逸らす。
すると玲、箴の隣に座る。
手が触れるほど近い。
玲「色々聞いたよお家の事情。バイトも続けられ
なくなって大変だね……」
箴「本当何でなんだろう、俺ずっと頑張ってんの
にな……神様、見ててくれてないのかも……」
玲「私は見てるよっ、だからえっと……」
玲、息を呑む。
玲「私に何か出来る事、あるかな……?」
玲、恐る恐る箴の手に触れる。
冷や汗が流れていた。
箴「いや良いよ、俺なんか助けたら君まで悪く思
われちゃうよ……?」
箴、立ち上がる。
玲、唇を噛み箴の手を掴んだ。
箴「え、何……?」
玲「あの、あのさ……私これくらいしか出来ない
けど……何かさせて……?」
玲、震えた手で箴の手を掴み胸を触らせる。
箴「ちょっ、何してんのさ……⁈」
箴、慌てて手を離す。
玲、立ち上がり箴の頭を掴む。
そして自らの胸に顔を押し付けた。
箴「んむっ……」
玲「遠慮しないでお願い……本当は辛いんでし
ょ? 辛かったら泣いて良いからね?」
箴、抵抗するが力が抜けて行く。
そのまま静かに涙を流した。
箴「何でだよぉ、忠実にしても全然報われな
い……っ! 何が試練だよっ……」
玲「よしよし……」
玲、箴の頭を撫でる。
そのままマットに優しく押し倒した。
体育倉庫からはしばらく誰も出て来なかっ
た。
○川口市 アパート イルマズ家 (日替わり)
カレンダーには土曜日まで印がつけられてい
る。
箴、洗い物をしていた。
すると練が走り回る。
箴「練、下の人いるからね!」
練「はーい」
練、落ち着く。
すると電話が鳴る。
箴「練、兄ちゃん手泡だらけだから取ってくんな
い?」
練「はーい」
練、応答する。
練「もしもしイルマズです。はい、はい」
練、電話を箴に渡そうと歩くがコードが張っ
て転んでしまう。
練「うぇぇぇんっ」
箴「おいどうした⁈」
箴、慌てて水で泡を落とし練を抱きかかえ
る。
同時に受話器も取った。
箴「もしもし⁈ すみません弟が……はい、え、今
からですか……?」
○川口市 私立高校 廊下
箴、練と手を繋ぎ廊下を歩く。
するとユニフォームを着た愛菜と会った。
愛菜「兄ちゃんどうしたの? 練も連れて」
箴「ちょっと呼び出しあってさ、父さん居ないか
ら練連れてくしかなくて……」
愛菜「そう、じゃあね」
愛菜、部活に戻る。
箴、階段を登った。
○川口市 私立高校 3-B教室。
箴、練と教室に入ると担任と玲が机に座って
いた。
箴「えっと……」
担任「座って」
箴、向かい合って座る。
担任、練に気付き椅子をもう一つ用意する。
練、そこに座る。
箴「何ですか話って……」
箴、玲をチラリと見る。
玲、下を向いていた。
担任「正直かなり言いづらいんだけどな、草間が
妊娠した」
箴「え、何で……」
担任「この間の体育の時な、体育倉庫で無理やり
って教えてくれたんだ」
箴、玲を見る。
玲、無反応。
箴「いやそんなっ! 無理やりだなんて……!」
担任「でも草間は妊娠した。何もしてないなら何
でだ?」
箴「それは……」
担任「認めるんだな?」
箴「それは認めますけど……でも草間さんの方か
ら誘って来てそれで……」
担任「草間、思い出させるようで悪いが本当
か?」
箴、玲を見る。
玲「違いますっ、体育倉庫でいきなり触って来て
それで無理やり……っ!」
玲、泣き出した。
箴「いやいやそんなっ……あっ」
箴、練を見る。
箴「すみません、ちょっと弟に聞かせるの
は……」
担任「はぁ……確か妹の方が部活で来てるよ
な? そっちに見ててもらえるか?」
箴「はい……」
× × ×
教室は練を除いた3人になった。
改めて話す。
箴「本当のこと言ってよ、そっちから誘って来た
んじゃん……」
玲「そんな事しないよ! 別にイルマズのこと好
きじゃないもん!」
箴「いや、でも俺からなんて……」
玲「いっつも私のこと見てたじゃん。怖かった、
前から相談してれば良かった……!」
箴「いや、でも本当に……」
沈黙。
担任、話を進める。
担任「とりあえず後は弁護士と話す事になる。慰
謝料とか養育費の相談だな」
箴「そんなお金無いですよ! あと推薦は⁈」
担任「まだ話してないけど……難しいかもな」
箴、崩れ落ちる。
○川口市 アパート イルマズ家 (日替わり)
翌日、弁護士が訪れた。
静かに慰謝料や養育院などの資料を差し出
し、それを見たコチェルは頭を抱える。
箴、隣で放心状態だった。
× × ×
弁護士、帰宅。
箴、コチェルと話し合う。
コチェル「本当に向こうから誘って来たんだ
な?」
箴「うん、間違いない」
コチェル「クッソ、嵌められたか……」
箴「信じてくれるの?」
コチェル「何年お前の親父やってると思って
る? そんなヤツじゃないってくらい分かる
よ」
箴「ありがとう、でもどうするのさ……凄い金か
かる」
コチェル、資料を見通す。
コチェル「えーと慰謝料と産んで育てる場合の養
育費、中絶する場合はその費用と母親の医療費
ね……ウチに払える金額じゃねぇ」
箴「ごめん、こんな時に迷惑かけて……」
コチェル「何言ってんだ、本当にお前からじゃね
ぇんだろ? なら証明できれば何とかなるか
も」
箴「無理だよ……体育倉庫だし、監視カメラとか
もない。周りに誰も居なかったし」
コチェル「じゃあどうする、こんな意味わかんね
ぇ金払うのか?」
箴「うーん、それは……」
沈黙。
箴、口を開いた。
箴「学校行くよ。何とか説得してみる」
コチェル「本気で言ってんのか? こんな事する
ヤツ説得出来ねぇって!」
箴、立ち上がる。
家を出ようとした。
コチェル、腕を掴み止める。
コチェル「おいやめとけ! 酷い目に遭う
ぞ……」
箴、振り返る。
箴「それも試練だから……」
箴、そのまま家を出た。
○川口市 私立高校 廊下
箴、私服で歩いている。
すれ違う生徒たち、箴を見てヒソヒソと話し
ている。
○川口市 私立高校 3-B教室
俊介、同級生たちと談笑している。
すると箴が入って来た。
裕也、真っ先に反応する。
裕也「箴! 大丈夫か……⁈」
裕也、箴に駆け寄る。
同級生たち、静まり帰る。
箴「あれ、草間さんは……?」
裕也「今日は休みだよ、てかお前大丈夫なの
か?」
すると俊介と取り巻きたち、箴の所へ来る。
俊介、箴の胸倉を掴んで壁に叩きつけた。
俊介「てめぇ! 何してくれてんだ俺の彼女
に!」
裕也、止めようとするが取り巻きたちに押さ
えられる。
箴「え、彼女……?」
俊介「さっさと言っときゃ良かった、あーでもや
るヤツはやるか」
裕也「おいっ!」
俊介「玲はな、今日休んでんだよ……お前にどん
だけ怖い想いさせられたか……! 将来ま
で……!」
裕也、取り巻きたちを取っ払い割って入る。
裕也「おい待て! まずコイツの話を聞こう、そ
んな事するヤツじゃないって!」
俊介「何言ってんだ、玲が嘘ついてるっての
か?」
裕也「いや、でもさ……コイツがそんな、レイプ
だなんて……」
俊介、箴から手を離し裕也の頬を掴む。
俊介「おい、二度と口にすんな。玲は傷付いた、
その事実があんだよ」
裕也「で、でも……」
箴、裕也の肩に触れる。
箴「いいよ、もう。ありがとう」
箴、教室から去る。
裕也「待てよ!」
裕也、追いかけようとする。
その際、誰かに足を引っ掛けられ転倒。
しかしすぐに立ち上がり箴を追いかけた。
○川口市 私立高校 廊下
箴、歩いている。
裕也、走って箴に追い付き肩を掴んだ。
箴、振り返る。
裕也「おいっ……本当に大丈夫かよ……全部正直
に聞かせてくれねぇかっ……?」
箴、唇を噛む。
○川口市 コンビニ 飲食スペース
箴と裕也、席に座っている。
箴「それで推薦も取り消しだって、本当最悪だ
よ……」
沈黙。
裕也、頭を抱える。
裕也「そんで、これからどうすんだ……?」
箴「さぁ……正直想像もしてなかったから何も浮
かばない……」
裕也「何とかして証明できれば良いんだけど
な……」
箴「草間さんの証言しかないよ、だから絶望的な
んだ」
裕也「……とりあえず学校は来ない方が良い」
箴「で、でも……」
裕也「でも何だよ? こんな時にまで家族のため
か? 今は自分の心配だろ」
箴「大事な時期だろ、ここで休んだりしたらどん
な高校も行けないよ!」
裕也「あのなぁ、今は証明する事を……」
箴、割り込む。
箴「それが出来ないからせめてもの誠意を見せる
んだよ、金払うにも借金しなきゃだけど返すた
めに良い職就かなきゃ……!」
裕也「おまっ……それ認めるって事だぞ……?」
箴「でも出来ちゃったのは事実だし……それでも
し産まれたとしたらその子が……」
裕也、強い溜息を吐く。
箴「やっちゃった事はせめて忠実にしない
と……」
裕也「また聖書の言葉かよ?」
箴「これも試練なら向き合わないとだし……」
裕也「それはただのバカだ、忠実なんてもんじゃ
ねぇよ。騙されて金取られて、試練っつうなら
それに立ち向かう事だろ?」
箴「う〜ん、でも責任は俺も断れなかったからあ
るし……」
裕也「あーもうっ、俺は俺でやれる事やるぞ?
お前は勝手にしてろよ……」
裕也、立ち去る。
箴、俯いて座る。
○川口市 教会 礼拝堂 (夕)
池松、教壇で聖書を読んでいる。
扉が開く音が聞こえそちらを見た。
箴、俯いて立っている。
池松、聖書を閉じて箴の所へ歩いた。
池松「箴くん、心配してたよ……!」
箴、池松の前で立ち止まる。
箴「……懺悔がしたいです」
池松、目を見開く。
○川口市 教会 懺悔室 (夕)
池松と箴、向かい合い座る。
池松「最後に懺悔をしたのは?」
箴「2年前、バイトで嫌な事があってサボった時
です」
池松「では神の声に心を開いて下さい。父と子と
精霊の御名によって、アーメン」
池松、胸の前で十字を切る。
池松「神の慈しみを信頼し、貴方の罪を告白して
下さい」
箴、息を呑む。
箴「意中の女性に誘惑されて……断れず関係を持
ってしまいました。結果彼女は妊娠してしま
い、心と体に深い傷を負わせてしまいまし
た……」
池松、黙って聞いている。
箴「今日までの罪を告白しました、赦しをお願い
します」
池松「それでは神の赦しを求め心から悔い改めお
祈り下さい」
箴、両手を組み目を閉じる。
箴「天に在られる我らの父よ、今日私は罪を告白
しました。どうか豊かな憐れみにより赦して下
さい、罪深い私を清めて下さい」
池松「全能の神、憐れみ深い父は、御子キリスト
の死と復活により世をご自分に立ち返らせ、罪
の赦しのために聖霊を注がれました。神が教会
の奉仕の務めを通してあなたに赦しと平和を与
えてくださいますように。私は父と子と聖霊の
御名により、あなたの罪を赦します」
箴「アーメン」
○川口市 教会 礼拝堂 (夕)
箴、扉に向かう。
池松、箴の背中を見つめる。
池松「これからどうするつもりだい?」
箴、ゆっくり振り返る。
箴「罪に向き合います。赦しを得るためにも忠実
でなきゃいけませんから」
箴、教会を出る。
○川口市 私立高校 3-B教室 (日替わり朝)
玲、席に座っている。
生徒たち、玲を囲う。
女子1「もう大丈夫なの?」
玲「うん、流石に進学に関わるし……」
女子2「ちょっとお父さん厳し過ぎない? 何も
思ってないんじゃないの?」
玲「でも流石に取り乱してたよ、ただ今は出来る
事やらないと……」
箴、扉を開け入って来る。
教室、静まり返る。
玲、顔を下げる。
裕也、目を見開く。
箴、無言で席に座る。
教室、徐々に談笑を始める。
俊介、箴を睨む。
裕也「箴……」
裕也が立ち上がったタイミングで担任が入っ
て来る。
担任「はいホームルームやりまーす」
担任、箴と玲の顔を交互に見て一瞬眉を顰め
る。
担任「出席取りまーす」
一人ひとり名前が呼ばれて行く。
担任、次の名前で声のトーンが下がった。
担任「イルマズ箴」
箴「はい……」
教室、ヒソヒソと声が聞こえる。
担任「はい静かにー!」
出席確認、続けられた。
箴、俯いている。
× × ×
箴、席に座っている。
俊介と取り巻きたち、そこにやって来た。
俊介「よぉ、よく来れたな」
箴、俊介と目を合わせるが立ち上がり去ろう
とする。
俊介、箴の肩を引いた。
箴、勢いでふらつく。
俊介「おい待てよ、せっかく話しかけてやってん
のに」
箴「トイレだよ……」
俊介「お、今度は誰を連れ込むんだ?」
俊介、女子生徒たちの顔を見て行く。
取り巻きたち、クスクス笑う。
箴「違うって……!」
裕也、割って入る。
裕也「おいやめろ、てかそれ普通に草間さんにも
失礼だろ」
玲、唯一顔を背けている。
一部女子生徒、玲を見る。
俊介「まだコイツの味方してんのかよ、やめとい
た方がいいぞ」
裕也「どういう意味だよ」
俊介「さぁ、すぐ分かるよ」
俊介たち、自分の席に戻る。
箴、教室を出る。
裕也、自分の席に座った。
○川口市 私立高校 廊下 (朝)
箴、歩いている。
周囲の生徒たち、ヒソヒソと話している。
箴、男子トイレに入る。
○川口市 私立高校 男子トイレ (朝)
箴、扉から入る。
すると不良たち、屯っていた。
不良1「出た、噂の」
箴、無視して小便器の前に立つ。
用を足し始めた。
不良の1人、覗いて来る。
不良2「確かにデカいな、子供もデカくなるか
な?」
不良3「外人の遺伝は凄いな、親もデカいの?」
箴、終えるとトイレを出ようとする。
不良の1人、箴の肩を掴む。
不良1「教えてくれよ、草間って子は何人目?」
箴、そのままトイレを出る。
○川口市 私立高校 3-B教室 (朝)
箴、戻ると裕也しかいない。
裕也、情報の教科書を手に持っていた。
裕也「パソコン室だぞ、早く準備しろ」
箴「うん……」
箴、準備を始めた。
○川口市 私立高校 パソコン室 (朝)
ホワイトボードには『クリスマス礼拝のフラ
イヤー』と書かれていた。
教師「一般参加のお客さん向けだから真面目にね
ー」
箴、パソコンを操作する。
画面には作りかけのフライヤーが映されてい
た。
キリストと礼拝堂の画像を使っている。
俊介、隣の男子生徒に画面を見せてクスクス
笑っている。
俊介、手を上げた。
俊介「先生ー、出来ました」
教師、俊介の画面を見にくる。
教師「どれどれ?」
俊介の画面には笑顔のクルド人の周囲に多く
の女性が並んでいる卑猥な様子が映されてい
た。
教師「おいふざけるなよ、倫理的にダメだ」
教師、箴をチラッと見る。
俊介「ちぇ、リアルなキリスト教の文化だろう
に」
教師「それ以上言うな、作り直しなさい」
教師、俊介の所から去る。
すると箴、手を上げた。
箴「先生、ちょっと聞きたいんですけど……」
教師「今行く」
教師、箴の所へ。
箴の画面を覗く。
箴「ここのフォントが上手く変換できなくて」
教師「あぁこれはね」
教師、箴の代わりに操作し教える。
俊介、その様子を見ていた。
× × ×
教師、前に立ち話す。
生徒たち、聞いている。
教師「では今年のフライヤーですがイルマズのに
しようと思います、やっぱりキリスト教の文化
をよく理解できているので」
俊介、手を上げる。
俊介「本当に良いんすか? 犯罪者の使うなんて
イメージ悪くなって人集まらないと思うんです
けど」
生徒たち、クスクス笑う。
教師「やめなさい、その話はするな」
俊介「CMとかもタレントが不祥事起こしたら降
板させら れるじゃないすか、それと一緒っす
よ。イメージ悪くなって売れなくなるみたいだ
し」
教師「ここは学校だ、それにまだ断定されてない
だろ」
俊介、箴を指差す。
俊介「コイツが罪を認めないからでしょ?」
教師、溜息を吐く。
教師「この話は終わりだ、フライヤーはイルマズ
のに決まりっ」
チャイムが鳴る。
○川口市 私立高校 3-B教室
箴と裕也、向かい合って座り弁当を開く。
箴、おかずを口に運んだ。
するとボールが飛んで来て箴の頭に当たる。
おかずと箸、衝撃で吹き飛んだ。
箴「うっ……」
裕也「大丈夫かっ⁈」
箴「うん、あー勿体ない……」
箴、落ちたおかずを拾う。
すると俊介、箴の弁当を手に取る。
俊介「これお前が作ったのか? 味見してやる
よ」
俊介、自分の箸で箴の弁当を食べ始める。
裕也「おいっ」
俊介「まぁ悪くないな、でもほぼ冷凍じゃん」
裕也「コイツ妹の分も作ってんだよ、別に良いだ
ろ。てか返せよっ」
裕也、箴の弁当に手を伸ばす。
取り巻き、裕也の腕を掴んで止めた。
俊介「お前のも美味そうだな」
俊介、箴の弁当を置き裕也の弁当を食べ始め
る。
箴、おかずだけ無くなった自分の弁当を見
た。
裕也「おい俺の飯っ」
俊介「うん普通」
俊介、裕也の弁当を戻す。
取り巻きたち、笑っている。
箴、俯いている。
裕也、俊介を睨んだ。
俊介「お、なになに? 怖っ」
箴、割って入る。
箴「裕也、良いよ俺は……」
俊介「だってさ、余計な事しない方が良いよ」
俊介たち、席に戻る。
裕也「いやいやダメだろこれじゃあ!」
裕也、歩き出し玲の所へ。
裕也「本当のこと言ってくれ! 箴はそんなヤツ
じゃないんだよ!」
玲、目に涙を浮かべる。
女子1「やめなよ!」
女子2「玲泣いてるじゃん!」
裕也、玲の肩を掴み揺らす。
裕也「頼むから! お願いだよ……っ!」
俊介、裕也の顔面を殴る。
裕也、鼻血を流し地面に倒れた。
箴、裕也に駆け寄る。
俊介「玲に思い出させるようなこと言うんじゃね
ぇ! ただでさえキツいんだぞ⁈」
箴、裕也と肩を組み教室を出る。
箴「保健室いこう……」
俊介「もう戻って来んな犯罪者共!」
○川口市 私立高校 保健室
箴、教員に手当てされる裕也の隣に座る。
箴「ごめん、俺のせいで」
裕也「お前のせいじゃ無いって、本当に違うんだ
ろ?」
箴「うん、でもやっぱ不利だよ。裕也まで巻き込
まれる」
箴、立ち上がり扉へ向かう。
箴「もう関わらない方が良いよ」
箴、扉を開けて外へ出る。
裕也、立ち上がるが教員に止められる。
教員「まだ終わってないよ」
裕也、歯軋りした。
○川口市 私立高校 3-B教室
玲、女子たちに慰められる。
俊介、その様子を見ていた。
女子1「大丈夫だからね、絶対守るから」
すると箴、戻って来て席に座る。
俊介、嫌な顔をする。
女子2「どーゆー神経してんのアイツ?」
玲、箴を見つめた。
○川口市 私立高校 下駄箱 (夕)
箴、帰宅する生徒たちの波の中で下駄箱に着
く。
しかし外履が無かった。
箴、学校内に逆戻りする。
○川口市 私立高校 礼拝堂 (夕)
箴、池松神父と向かい合って座り話す。
箴「ここに寄れって神様が言ってる気がし
て……」
池松「そう……災難だったね」
沈黙。
しばらくして箴が口を開く。
箴「大丈夫ですよね、神様いますよね?」
池松「どうしたの急に?」
箴「ここに寄れって感じたから……絶対見てくれ
てますよね……?」
池松神父、震える箴の背中を摩る。
池松「大丈夫だから、一緒に祈ろう」
すると扉が開く。
箴と池松神父、そちらを見る。
裕也、入って来た。
裕也「やっぱここにいた」
箴「何で……」
裕也、箴の隣に座る。
裕也「靴どっちも無かったから。隠されたんだ
ろ?」
箴「関わらない方が良いって言ったじゃん……」
裕也「実はさ、俺の靴も隠されてた。だったら今
更じゃん」
箴「じゃあ尚更今からでもやめた方が良いよ、ち
ょっとずつ信頼されてくかもだし」
裕也、深呼吸。
裕也「嫌だね」
箴「何で……」
裕也「あんなヤツらに信頼された所でねぇ? 忠
実な奴に信頼された方が良いよ」
箴、俯く。
池松神父、笑顔になる。
池松「丁度今から祈ろうとしてたんだよ、君も一
緒にどう?」
裕也「信じてないけど良いんすか?」
池松「大歓迎だよ、神様は懐が深いお方だから
ね」
3人、手を握り祈る。
池松「天に在られる我らの父よ……」
○川口市 私立高校 (夕)
箴、裕也、池松神父の3人、靴を探す。
下駄箱、廊下、様々な教室まで探し回った。
箴「あった……」
箴、教室の掃除用具入れの上に靴があるのを
見つける。
手を伸ばすが高くて取れない。
裕也、椅子を持って来た。
裕也「これ乗って」
箴「ありがと」
箴、椅子に乗り靴を取った。
椅子から降りて裕也に渡す。
箴「裕也の分もあったよ」
裕也「纏めてたのか、ははっ」
箴「何で笑ってんの」
裕也「いやーわざわざ隠すためにこうやって椅子
乗ったのかなって想像すると笑えて」
箴「確かに」
箴も少し笑った。
○川口市 私立高校 下駄箱 (夕)
箴、裕也、玄関扉の前に立つ。
池松神父、見送った。
池松「それじゃあ、元気でね」
箴「ありがとうございました」
池松「裕也くんも良ければまた遊びに来なさい」
裕也「はい、それじゃ」
2人、玄関から出た。
○川口市 道路 (夕)
箴、裕也、歩いている。
裕也「明日からどうすんの?」
箴「え? 普通に行くよ。何、休みたかった?」
裕也「バレたか、お前が休むなら俺も休む口実に
なったのになー」
箴「サボるなよ、お前も大学行くんだろ?」
裕也「あいよー」
○川口市 私立高校 体育館 (夕)
バレー部、練習をしている。
愛菜、タオルで汗を拭いた。
愛菜「ちょっと休憩しまーす」
愛菜、コートから出てステージの上に置かれ
た鞄を開ける。
中から巾着袋を取り出した。
開けると中にはラップに包まれたおにぎりが
入っていた。
すると別に入っていた手紙を見つける。
手紙にはこう書かれていた。
『気にせず頑張れ 兄ちゃん』
愛菜、微笑みおにぎりを頬張った。
× × ×
愛菜、練習を再開。
しかし愛菜、転んでしまった。
先輩「大丈夫⁈」
愛菜「いったぁ……」
愛菜、足首を押さえている。
先輩「保健室行った方が良いんじゃない?」
愛菜「すみません、そうします……」
愛菜、立ち上がる。
先輩「歩ける?」
愛菜「大丈夫です、練習続けて下さい」
愛菜、体育館を出る。
○川口市 私立高校 廊下 (夕)
愛菜、保健室のドアノブに手を掛ける。
すると中から会話が聞こえた。
愛菜、耳を澄ます。
○川口市 私立高校 保健室 (夕)
俊介、エチケット袋に吐いた玲の背中を摩
る。
俊介「スッキリした?」
玲「うん、少しは……」
俊介、憐れむ表情で玲を見る。
俊介「なぁ、本当に俺の子ではないのか?」
玲「え、そうだって言ったじゃん……」
俊介「でもさ、俺も前にゴム無かったじゃん。本
当に大丈夫か? もし俺だったらマジでヤバい
ぞ……」
玲「だから大丈夫だって」
俊介「でもDNA鑑定とかされたら分からない
ぞ?」
玲「それにもお金掛かるし、慰謝料とかでもう残
らないでしょ……それに慰謝料は私いらないか
ら俊介の家のために使って」
俊介「何でだよ……」
玲「お店大変でしょ、そのお金で立て直して」
俊介「玲……っ」
俊介、玲を抱きしめる。
すると扉が開き愛菜が入って来た。
俊介、玲、肩を振るわせる。
俊介「あ、えっと先生なら今いないけど……職員
室じゃない……?」
愛菜「そうですか……」
愛菜、扉から出ていく。
俊介「……聞かれたか?」
玲「さぁ……」
○川口市 私立高校 体育館 (夕)
愛菜、早歩きでステージに向かい鞄からスマ
ホを取り出す。
箴のメッセージを開き文を送った。
以下、画面上
× × ×
愛菜「もしかしたら兄ちゃんとの子じゃないか
も! たまたま話してるの聞いちゃった、彼氏
との子かもだって!」
× × ×
愛菜、送信した。
○川口市 アパート イルマズ家 (夜)
箴、コチェル、愛菜の3人、ちゃぶ台を囲
む。
コチェル「彼氏との子だとして生まれるのはいつ
だ?」
箴「聞いた時点で妊娠1ヶ月って言ってたから9月
頃かな」
コチェル「DNA鑑定って生まれないと出来ないも
んなのか? 妊娠中でも出来るやり方と
か……」
箴「あるみたいだけど10万〜15万くらい掛かるっ
て」
コチェル「思ったより安いな、貯金どれくらいあ
ったっけ?」
コチェル、立ち上がり棚を調べる。
箴「待ってよ、リスクがデカい……! もしそれ
で俺との子だった場合さ、余計にお金が飛んじ
ゃう……」
コチェル、手を止め振り返る。
コチェル「あのなぁ……」
すると愛菜、割って入る。
愛菜「そんなの良いじゃん。手紙に気にするなっ
て書いてあったけどさ、気になるって!」
箴「いやいや、お前にも迷惑かかるだろ……」
愛菜「今更遅いよ、私が高校バレーの書き込みで
何て言われてるか知ってる? 犯罪者の妹だっ
て。このままじゃ部活にも影響出るかも知れな
い、だったら戦ってよ」
箴、絶句。
愛菜「やれる事はやろうよ、私たちのためにも
さ」
箴、俯いてしまう。
箴「でも違った場合がさ、やっぱり俺の子だった
場合は俺に責任があるから……」
愛菜「その時はその時で責任果たせば良いじゃ
ん、やってみない事には何も言えないよ」
箴「でもお前たちの人生に影響が出ちゃうだ
ろ……? そのために頑張って来たのに」
愛菜「兄ちゃんの人生は? 他人のためだけのも
のなの?」
箴「この際俺はもう良いよ、余計にお金が飛べば
お前たちがヤバいって話してんの!」
愛菜「あーもう、言っちゃうけどさ……兄ちゃん
に負担か けてまで私上手くやりたくな
い……」
箴「……何だよそれ」
愛菜「どんなに部活で上手くやってもさ、やりた
いこと出来ててもさ、苦労する兄ちゃんがチラ
つくの……そんなんで幸せになれると思
う……?」
箴「いや、俺は家族の事を想って……」
愛菜「だからっ……」
箴、ゆっくりと立ち上がる。
上着を羽織り財布だけ持ち家を出た。
愛菜「兄ちゃん!」
すると寝室から練の声が。
練「うぅぅんっ……」
コチェル、寝室へ向かう。
その際に愛菜に言った。
コチェル「声デカいよ……」
愛菜「ごめん……」
愛菜、その場に座り続けた。
○川口市 道路 (夜)
箴、雪の降る中を歩いている。
周囲には幸せそうな家族やカップルが大勢い
た。
箴、彼らとは逆方向に歩いて行く。
○川口市 ネットカフェ (夜)
箴、ネットカフェのドリンクバーで飲み物を
注ぐ。
ブースに戻り椅子に座ったが飲み物には手を
つけなかった。
箴、またすぐに立ち上がりネットカフェの本
棚を物色する。
しかし何も取らずにまたブースへ戻った。
○川口市 私立高校 礼拝堂 (日替わり朝)
箴、扉から入る。
池松神父、迎えた。
2人、椅子に座る。
池松「今日はどうしたんだい?」
箴「……箴言28:20の聖句を聞いてからずっと忠
実に頑張って来たつもりなんです、でもそうす
るほど上手く行かなくて。家族も責任も両方ち
ゃんとしなきゃなのに……」
池松「お父さんから連絡あったよ、君がどっちを
取るかで悩んでるってね」
箴「そうですか……」
沈黙の後、箴が口を開く。
箴「もし本当に俺の子なら責任は果たさなきゃい
けないと思います。でもそれで家族の迷惑にな
るのは避けたくて、お金が掛かる事はしたくな
いんです……」
池松「DNA鑑定の件だよね、確かにお金が掛かる
事だね」
箴「しかもただでさえ草間さんは苦しんでるのに
余計に負担の掛けるような事も……」
池松「そっか、君は本当に神様の御言葉を守ろう
としてる」
箴「そうなんです、だからこそ不安で……本当に
このままで救われるのかどうか……言いづらい
んですけど、神様の存在も怪しく思えて来たっ
て言うか……」
池松「箴言28:20、忠実な人は多くの祝福を得
る。ご両親が君の名前をつけるきっかけになっ
た聖句だよ」
箴「聞いてます、箴言から取ったって言ってまし
た」
池松「本当に相応しい人に育ってくれたね、お母
さんも喜んでると思うよ」
箴、少し笑みを浮かべる。
池松「後は忠実であるべき対象を見極める事だ
ね」
箴「……はい」
池松「人1人に出来る事は限られてる、全部に忠
実である事は現実的に不可能だ。神様もそこま
では求めない、君に出来る最大限をやれば良い
と思うよ」
箴「そうですね、ありがとうございます」
池松「じゃあ祈ろうか」
池松と箴、祈った。
○川口市 私立高校 校舎裏ゴミ捨て場
愛菜、教室のゴミ箱を持って中身を捨てる。
すると背後から声を掛けられた。
俊介「なぁ、イルマズの妹」
振り返ると俊介と取り巻きたちがいた。
愛菜「何ですか……」
俊介「昨日保健室に来たよな? 俺と玲の話聞い
てたか?」
愛菜「何の話ですか……?」
俊介「そんで兄貴に何か吹き込んでないか? そ
れだけ確認させてくれよ」
俊介、愛菜に迫る。
愛菜、俊介の顔を見た。
愛菜「別にそれで不利になった所で自業自得じゃ
ないですか?」
俊介「チッ、やっぱ聞いてたか……」
愛菜、隙を見て走って逃げ出す。
俊介「おい待て!」
俊介たち、愛菜を追う。
愛菜、足が痛くて上手く走れない。
すぐ捕まってしまう。
俊介「落ち着け!」
愛菜「離してっ!」
愛菜、俊介の股間を蹴り上げまた逃げる。
俊介「ぅがっ……」
俊介、股間を押さえて蹲る。
取り巻きたち、愛菜を追いかけた。
愛菜「はっ、はっ……」
愛菜、足を引きずり走る。
そのまま勢いで敷地外の道路へ出てしまっ
た。
愛菜「あっ……」
迫る車。
愛菜、撥ねられてしまう。
取り巻きたち、立ち止まり絶句した。
○川口市 総合病院 診察室 (夜)
箴、コチェル、練の3人、医師から話を聞
く。
医師「スピードも出ていなかったので命に別状は
ありません、後遺症も残らず徐々に回復するで
しょう」
箴「大会は……? 年明けにバレーの大会がある
んです……!」
医師「年明けまでは……難しいですね、少なくと
も半年は見積もった方が良いかと」
箴、項垂れる。
箴「あぁ……」
コチェル、箴の肩に手を置く。
○川口市 山中家 俊介の部屋 (夜)
俊介、布団に包まる。
母の呼ぶ声がする。
母「ご飯いらないのー?」
俊介「いらないって!」
俊介、震えている。
するとスマホに玲から着信が。
俊介、応答する。
俊介「もしもし……」
玲「俊介、大丈夫……?」
俊介「全然……」
沈黙。
俊介、口を開いた。
俊介「なぁ、これでもし俺との子だったらどうす
んだ?」
玲「え……」
俊介「俺、とんでもねぇ事した……冤罪だったら
って思うと怖くて……DNA鑑定した方が良いん
じゃねぇか?」
玲「えぇ……? でも家の事あるんでしょ? お
金必要だって……」
俊介「そうなんだよな……やっぱり家の方も大事
なんだよ、でも罪悪感が……」
玲「俊介……」
俊介「ごめん、切るわ」
俊介、通話を切る。
また布団で震え始めた。
○川口市 総合病院 病室 (夜)
愛菜、ベッドで眠っている。
箴、コチェル、練の3人、椅子に座る。
箴「……忠実に生きてきたつもりだった、その結
果がコレだよ」
コチェル「箴……」
箴「何でこんな事になるのかなっ……こんなに祈
ったのにっ……」
コチェル、何も言わない。
すると愛菜、目を覚ます。
愛菜「ん……」
箴「愛菜っ!」
愛菜、ゆっくりと箴を見る。
愛菜「ごめん、部活ダメっぽい……」
箴「俺に謝る事ないだろ、何で……っ」
すると池松神父、入って来た。
コチェル「先生、わざわざありがとうございま
す」
池松「いえいえ、ご様子は?」
コチェル「意識は戻りました、多分大丈夫だと思
います」
池松神父、愛菜を見る。
箴、愛菜の手を握っていた。
愛菜「ごめんなさい、またお金かかっちゃ
う……」
箴「いやいや、それくらい何とかするか
ら……!」
愛菜「でも兄ちゃんしんどいでしょ……?」
箴「お前がしんどい方がしんどい、これお返し」
愛菜「本当だ……」
愛菜、弱々しく微笑む。
愛菜「ねぇ兄ちゃん」
箴「なに?」
愛菜「もう好きにして」
箴、目を見開く。
愛菜「もう十分だから」
箴「でも……」
池松神父、箴を見る。
池松「箴くん、意味分かったかい?」
箴、沈黙。
しばらくして口を開いた。
箴「……はい、でもお金も掛かるし……」
池松「それは心配しなくて良いよ、驚かせようと
思って黙ってたんだけどね」
箴「何です……?」
池松神父、鞄から書類を取り出し箴に渡す。
池松「教会の皆さんが箴くんを信じて献金を使っ
てくれだって。愛菜さんの治療費もDNA鑑定の
費用も十分あるよ」
箴、献金に関する事とメッセージが書かれた
書類に目を通す。
メッセージにはこう書かれていた。
『いつも忠実な箴くんを信じてます、どうか使っ
て下さい』
箴、瞳が潤む。
池松「皆んな箴くんがどんな人か知ってるから協
力してくれたんだよ、あとこの中には裕也くん
もいる」
箴「はい……」
池松「その人たちに応える事も大事な試練だよ。
彼らは君に忠実さを見せたんだから」
箴、顔を上げる。
箴「忠実に応える事が忠実って事ですか」
池松「その通り、やっと分かってくれたね」
箴「はい、分かりました」
池松「その結果は君自身で感じてね」
池松、箴の頭を撫でた。
○川口市 産婦人科 (数日後)
玲、箴、俊介、採血を受ける。
職員、その血液から検査をした。
○川口市 アパート イルマズ家 (1週間後朝)
テレビでニュースが流れている。
以下、画面上
× × ×
リポーター「今日はクリスマスイブ、夜には綺麗
なイルミネーションが見られる事でしょう」
× × ×
箴、制服に着替える。
すると郵便受けに封筒が届く。
箴、手に取り居間で座った。
コチェル、隣で見ている。
箴、封筒を開けた。
中の書類にはこう書かれていた。
『鑑定の結果、イルマズ箴との親子関係は否定さ
れました』
箴、安堵の溜息を吐く。
コチェル、小さくガッツポーズした。
○川口市 私立高校 礼拝堂
3-Bの生徒たち、壇上で讃美歌「もろびとこ
ぞりて」を披露する。
席にはコチェルも座っていた。
箴が歌っているのを横目で俊介が見ていた。
玲の姿は無かった。
○川口市 私立高校 3-B教室 (夕)
放課後、誰もいない教室で箴と俊介が話す。
俊介「結局玲は転校だってさ、後味悪いな……」
箴「まぁ仕方ないよ、俺も行きづらかったし」
俊介「俺も悪かった本当に、何も考えずにやっち
ゃってた……」
箴「もう良いよ終わった事だからさ。草間さんも
ちゃんと慰謝料もすぐ払ってくれたし、これ以
上言う事ないよ」
俊介「アイツん家金はそこそこあったからな、大
したダメージじゃないんだろ」
俊介、俯く。
俊介「でもお前のダメージは凄いよな、本当にご
めん」
箴「だから良いって」
俊介「それじゃ俺の気が済まないんだよ、何かさ
せてくれないか? 例えばウチの店で雇うと
か……あぁでも立て直さなきゃ……」
箴「大丈夫、俺の事は俺でやる。これは俺の試練
だからさ。だからそっちは自分の試練を頑張り
なよ」
俊介「……ありがとう、そう言ってくれて」
箴「草間さんもきっと試練にぶつかってると思
う、みんなそれぞれ自分で向き合わないと」
俊介「やっぱお前アレだな、何だっけ、神父さん
が言ってた聖書の」
箴「忠実? よく言われる」
俊介「すげぇな、思えばお前ずっと忠実だった
よ。学級代表やったり家族のために頑張った
り。俺には真似できねぇ」
箴「お前はこれからだろ、応援してるから」
俊介「はは、ありがとな」
○川口市 アパート イルマズ家 (数日後)
箴、ちゃぶ台で勉強をしている。
するとインターホンが鳴った。
箴「はーい」
箴、扉を開ける。
するとやつれた玲が立っていた。
腹は膨らんでいなかった。
箴「草間さん……」
玲、勢いよく土下座した。
玲「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ……」
箴、玲を見下ろす。
そして一言だけ告げた。
箴「……ありがとね」
○川口市 某大学 広場 (数ヶ月後朝)
箴、合格発表で自分の数字を探す。
紙に書かれた数字を見つけて飛び上がった。
○川口市 教会 礼拝堂 (日替わり朝)
礼拝が終わり一同は帰る。
コチェル、練、松葉杖をついた愛菜も帰ろう
とした。
その中には裕也もいる。
箴、池松神父の所へ。
箴「ちょっと先生と話してくる」
コチェル「あいよ」
池松神父、箴を迎えた。
池松「やぁ、元気そうだね」
箴「はい、お陰様で」
池松「合格したんだってね、おめでとう」
箴「ありがとうございます、志望校とは違います
けど」
池松「でも満足してるんでしょ? お父さんも仕
事見つかったみたいだしこれからだね」
箴「はい、これから上手くやってきます」
沈黙。
箴、口を開く。
箴「正直、まだ偏見とかはあると思います。そこ
は心配ですけど……忠実であろうと思います。
きっとこれが俺の試練なんです。忠実であり続
ける事、それを示す事」
池松「そのお陰で皆んな君を信頼してる」
箴「はい、だから分かったんです。偏見はまだあ
るしそれ自体は変わらないけど、実際に関わっ
た人の見る目は変えられるって」
○川口市 某大学 キャンパス内 (数ヶ月後)
箴、教材を持って歩く。
すると前方に人とぶつかって教材を落とした
学生がいる。
箴、彼に近付き拾うのを手伝った。
箴「はいこれ」
箴、拾ったノートの埃を払い手渡す。
学生「ありがとう」
箴「いえいえ」
箴、笑顔で応えた。
(了)