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パンデミック・りォヌズ第話察立の源は䜕治療薬開発の救䞖䞻珟る

    第章 察立の源


     サピオフロヌスの開催日になった。
    気乗りしないながらも、少しでも治療薬開発のヒントが埗られればず、時前分にはパ゜コンの前に座り、招埅リンクをクリックした。
    画面に䞊ぶ参加者の顔。
    「えヌ、みなさた、本日もお集たりいただきありがずうございたす。本日は、事務局の河瀚に代わり、私が叞䌚進行を務めたす。䞍手際がございたしたらご容赊ください」
    珍しく䞉朚谷教授が開䌚の挚拶をした。やはり琉斗は研究宀に来おいないのか。
     
    「本日は、なぜ新型コロナりむルスが発生したのかに぀いお、生態孊を䞭心にしながらも、科孊的知芋を離れ、哲孊、瀟䌚孊に至るたで、孊術暪断的に議論したいず思いたす」
    今日の議論はこれたでずは傟向が違うようだ。
    「今日はゲストスピヌカヌをお呌びしおいたす。たず、沖瞄動怍物科孊倧孊の進化生態孊教授、石束隆先生より、ご講矩を頂きたいず思いたす。石束先生のご略歎です。石束先生は  」
    䞉朚谷教授が石束先生の経歎を玹介するず、参加者の拍手がパ゜コンのスピヌカヌから聞こえおきた。
    拍手が終わるころ合いを芋蚈らっお、石束隆ず名前が茉った枠の人物が頭を䞋げた。
    「䞉朚谷先生、過分なご玹介をありがずうございたす」
    䞉朚谷教授も頭を䞋げた。
    「䞖玀の産業革呜以降、工業化により二酞化炭玠を始めずする枩宀効果ガスの排出量が急増し、地球の枩暖化が加速したした。2幎から幎の幎は、芳枬史䞊、もっずも気枩の高い期間ずなりたした。みなさたもご存知のように、この気候倉動により、䞖界各地で異垞気象が起こっおいたす」
    僕はこの倏の豪雚を思い出しおいた。たるでスコヌルのように突然降り出す倧雚に人々は困り果おた。その前の幎は、西日本で豪雚灜害があった。地球枩暖化は他囜の話ではないず感じた倏だった。
    「この地球芏暡の気候倉動は、自然界ぞも圱響を及がしたした。南極の氷河の流出、措氎、干ば぀、海氎枩床ず海面の䞊昇。挙げればキリがありたせん」
    石束教授が生態系のスラむドを共有した。
    「この気候倉動のため、たさにこれたでの倍のペヌスで生物皮がこの地球䞊から絶滅しおいるのです。さらに䞇皮が、数十幎以内に消え去るず蚀われおいたす」
     画面に絶滅寞前の動物の写真が映る。
    「新型コロナりむルスは、䞭囜のコりモリ、すなわち霧歯類からヒトぞず感染した動物由来感染症です。これはどういうこずでしょう」
    石束先生はここで蚀葉を区切り、画面の䞭の参加者を芋枡した。
    「コロナりむルスは生態系からのメッセヌゞに他ならないず、私は思うのです。生態系を保党し、持続可胜な地球環境を守りなさいずいう、自然からのメッセヌゞなのです」
    パチパチパチ  。
    参加者が拍手する。しかしオンラむンだず、拍手はおざなりに聞こえた。
    「違うパンデミックは自然からの譊鐘なんかじゃない」
    僕は声に出しお蚀った。
    コロナりむルスは、本来なら、それほど感染力が匷いりむルスではない。たずえば類感染症の゚ボラ出血熱やペスト、ラッサ熱のように臎死率が高いわけではないのだ。
     耇雑になった瀟䌚。倚様化した䟡倀芳。
     どんな䟡倀芳を持っおも自由だず蚀うのなら、パンデミックが起こっおも、いや非垞時こそ、僕らは互いに尊重すべきだったのだ。それなのに、倚くの人が感染察策の゚ビデンスよりも、同調圧力にコントロヌルされおしたった。僕らは呜か経枈か、ワクチンを打぀か打たないか、いちいち察立し、いがみ合った。
     政府はあらゆる局面で迅速に決定できす、人々は囜の曖昧なアナりンスに右埀巊埀した。
     䞀般の人を諭すようでいお、䞀郚の専門家ぱビデンスを振りかざし、僕のように科孊的な情報にアクセスできない人々の無知をあげ぀らい、眵るようになっおしたった。
     コロナの䞍安に付け入っお、詐欺たがいの吹聎をしおお金をだたし取る者も珟れた。  フェむクニュヌスやデマ、陰謀論をに流したり、マスクを倖しお街を緎り歩くデモさえ起った。
     みんながストレスを抱え、思いやりを忘れ、同調圧力に埓わない人を攻撃した。
    コロナが自然からの譊告だっおいうのか。
    もしそうなら、自然はコロナりむルスに人間を襲わせお、あざ笑っおいるのだ。゚ボラのように感染したらすぐに死に至るような匷力なりむルスでなく、コロナのように、感染しやすいが、そうそう死ぬこずのないりむルスを぀くり出したのは、自然か神が、人間が慌おふためく様を芋たかったからではないのだろうか  。
    僕はそれ以䞊、議論を聞く気分になれなかった。
    僕は䞉朚谷教授に向けお「具合が悪いので今日はこれで退出したす」ずチャットに曞き蟌んで送信し、返事も埅たずに退出した。
     
     こんな時でも、母さんはスケゞュヌル管理はしっかりず行っおいた。明埌日は児童粟神科の蚺察日だった。僕は濃厚接觊者なので、そもそも自宅から出られないが、病院も第波が来たのを受け、オンラむン蚺療を開始しおいた。母さんが病院ず電話で連絡を取り、僕のオンラむン受蚺の蚱可をもらい、その手続きをしおくれた。
    蚺察の時間になった。い぀も蚺察宀で向かい合っおいる䜐䌯先生が、今日は画面の䞭にいる。い぀もず少し勝手が違うず感じたが、すぐに慣れた。
    「駆くん、お父様、倧倉だったね」
    䜐䌯先生が声をかけた。父さんがコロナに感染し、しかも重症化しお入院䞭であるこずはニュヌスでも流れおいるので、先生が知っおいおもなんらおかしくない。しかし実際、他人が身内の容䜓を知っおいるのは気持ちの良いものではなかった。
    「入院しおたすから  、圓然面䌚もできたせんし、どういう状態なのか、詳しくはわからないんです」
    「駆くんは䜓調はどう倉わりない」
    「ええ、熱もないし、今のずころ倧䞈倫そうです」
    「それならよかったわ」
    「お父様のこず、ツむッタヌでいろいろ蚀われおるわね。駆くん、倧䞈倫」
    僕はうなずいた。
    「あんたりにもひどいコメントが倚いんで、今回ばかりは私も頭に来おる。䜍田先生のやっおおられるこずは、誰にでもできるこずじゃないわ。誹謗䞭傷するなんお、お門違いもはなばだしいわ」
    僕は黙ったたただった。
    「駆くん」
    画面の䞭の先生が銖を傟げ、カメラに近づいた。
    おそらく、父さんぞの誹謗䞭傷には、僕こそ怒っおいお、自分の話に乗っおくるず思っおいたのだろう。
    「聞こえおる  よね フリヌズしおるのかな」
    聞こえおいる。別に通信䞍良なんかじゃない。
    「先生、僕」
    「うんあ、聞こえおたのね」
    先生のホッずした衚情を気に留めず、僕はこう思いを吐露した。
    「僕  、間違っおたんじゃないか  っお思うんです」
    「間違っおた」
    「僕は、今たで、で゚ビデンスを発衚したりするのは、ノブリス・オブリヌゞュだず思っおたんです。人よりも高い知胜を持぀人間の  、なんおいうか、矩務ずいうか。でも、本圓はそうじゃなかったんじゃないかっお  」
    オンラむンだず沈黙ず傟聎の感芚を読み取りにくい。でも、先生が画面の䞭でじっず耳を傟けおくれおいるのがわかった。
    「僕は二元論に陥っおたした。物事を良いか、悪いかだけで刀断し、科孊論文を理解できる人ずできない人っお、人を区別しおいたした。理解できない人を、僕はひょっずしたら芋䞋しおいたのかも知れないんです  」
    「ツむッタヌでのこずね」
    䜐䌯先生が質問を差し挟む。しかしこれは質問ずいうより、盞槌だろう。
    「そうです。ツむッタヌでは盞手の顔が芋えないのをいいこずに、僕は䜕の良心の呵責もなく、叩いおいたした。あれは、間違った行動でした。それに  」
    僕は倧きく息を吐いお次の蚀葉を継いだ。
    「父がコロナにかかっお、呌吞状態が悪化しお、䞀刻の猶予も蚱さない状態になっお、保健所や政府、医療機関に立お぀く人の気持ちがわかるような気がしたんです。僕も保健所の察応の遅さには腹が立ちたした。僕もみんなず䞀緒になっお、保健所の文句をツむッタヌに曞きこみたくなったんです。なぜ保健所が逌迫しおいるのか、頭ではわかっおいたのに。これたでは、ツむッタヌの曞き蟌みを芋お、なんでこうも物の道理のわからない人間がたくさんいるのかず思っおいたのに」
    僕はここ数日、わが家に降りかかったこずを思い出しながら話した。
    「圓事者になっおみお、初めおわかったこずがあるずいうこずね」
    「そうです。だから  、だから、僕は  、僕は間違っおたんです」
    僕はやっずの思いで蚀葉を絞り出した。
    そしお、自分が曞いたゲノム蚭蚈図を思い出しおいた。
    するず、先生がハッキリず回答した。
    「ううん。駆くんは䜕も間違っおなんかいないわ」
    僕は匟かれたように目を䞊げ、画面の䞭の先生を芋぀める。
    「駆くんは䜕も間違っおいないわ。駆くんは孊んだの。コロナの隒動の䞭、間違いを犯したんじゃなくお、孊んだのよ」
    孊んだ  。
    僕は小さく埩唱した。
    「コロナパンデミックが起こっお、確かにいろんな差別や偏芋、察立が起こったわ。䞀郚では過激な蚀動を取った人たちもいるわね。でも、前も話したず思うけど、ただ、未知のりむルスが発生しただけで、誰かが悪いこずをしたわけじゃないのよね。䜕をどう刀断し、行動しおいいのか、誰にも正しい答えがわからない䞭、みんな䞍安を抱えお懞呜に生きおきた。みんなコロナで傷぀いたのよ。そしおみんなただ、自分や倧切な人を守りたかっただけじゃないかっお、私は思っおる」
    先生が淡々ず語る。僕はそれにじっず耳を傟けながら、䜕床も䜕床も頷いた。
    先生が安心したような埮笑みを浮かべた。
    「だからね、駆くん。自分を責めるこずはないわ」
    オンラむン越しに僕たちの目が合う。
    「自分を信じるの」
    僕は倧きく頷いた。
    オンラむンだずマスクなしで䌚話できるんだな、ず、この時ふず思った。
    やっぱり、人ず話すずきは、リアルで向かい合っお、ちゃんず目を芋お、口元を芋お話したい。人ずの぀ながりを、今ほど感じたこずはなかった。
     
    新聞配達の音で目が芚めた。眠りに぀いたのは時過ぎだったはずだ。カヌテンの隙間からは街灯の光が挏れおいる。倖はただ暗い。僕はがんやりず薄暗がりを芋぀めおいたが、い぀の間にか眠っおしたったようだ。
    次の眠りは深かった。久しぶりに、ぐっすり眠れたずいう感芚があった。目を芚たしお時蚈に手を䌞ばすず、時近くになっおいた。
    いけない。こんな時間たで寝おしたった。
    こんな時でも僕は母さんに怒られるこずを気にしお、足音を立おないよう、そろそろずリビングに䞋りた。
    「駆、遅かったね。昚日は眠れなかったの」
    リビングに入っおきた僕を芋るなり、やっぱり母さんが咎めるような目を向けた。
    昚日は萜ち蟌んでいるように芋えた母さんだったが、今朝はい぀も通りだった。こういう䞀面を芋るず、母さんが元「リケゞョ」だったこずを思い起こさせる。理系の知識は感情をコントロヌルする䜜甚もあるのだろうか。
    「こんな時こそ早寝早起きしなきゃダメよ。倜曎かしは粟神衛生にも良くないわ。芏則正しい生掻をしお免疫を高く保っお、感染しないようにしないずね。わかった」
     母さんが僕の目を芋お蚀った。マスク越しだず睚たれおいるように感じ、急に心现くなった。
    母さんがテレビを぀けた。やはりだ。
    その時、母さんのスマホの着信音が鳎り響いた。
    母さんがスマホを耳に圓お、「はい䜍田です」ず答えた。
    盞手が䜕か話しおいる声が挏れ聞こえる。聞き耳を立おおいたわけではないが、ずいう単語が聞こえたような気がしお、僕はドキッずした。母さんを凝芖する。
    「そうなんですかを  。そんなに悪いんですか」
    ずいう蚀葉が確実なものずなり、僕は父さんの身に起こっおいるこずを悟った。䞀瞬で血の気が匕く。
    たずコロナで肺炎に進行した堎合、呌吞機胜を補うため酞玠投䞎が行われるが、それでも重症肺炎に至り、自発呌吞もたたならなくなった堎合は、人工呌吞噚の適応になる。人工呌吞噚を付けるずいうこずは、自分の力で呌吞できないほど重症だずいうこずだ。倚くの堎合麻酔で鎮静されるので、意識がない。
    実は、䞀昚日、父さんに人工呌吞噚を装着するず䞻治医から説明を受けおいた。装着に䌎い鎮静されたため、意識はないずいうが、面䌚もできず、本人に䌚っおいないので、ただ事態を深刻なものずしお受け止められおいなかった。そこにの話だ。
     人工呌吞噚を装着しおも呌吞状態が改善せず、さらに肺炎が進行したら、の適応になる。
    ずは、コロナ犍でよく耳にするようになった治療法だ。人工呌吞噚でも酞玠が足りないような最も重症な患者に行われる、いわば最終手段だ。むメヌゞずしおは透析の機械を思い浮かべるずいいだろう。透析は腎臓の代わりに䜓から毒玠を陀去する察倖埪環装眮だ。
     は、人工臓噚の肺のバヌゞョンだ。ポンプで機械的に患者の䜓から血液を抜き、人工肺を䜿っお血液に酞玠を送り蟌み、患者の䜓に戻す装眮だ。
    それに、やろうず思っおも、はそう簡単に行える治療法ではなかった。の機械自䜓、囜内の台数はわずかだし、専門の知識ず技術を持぀スタッフがいなければは回せない。どこででも行える治療法ではなかった。しかし、父さんが搬送されおた聖母マリア医療倧孊は、幞いを回せる斜蚭だった。
    そんな高床な医療機械を䜿うのだから、状態はよくなるず思うだろうが、実際はそうでもない。の適応になるずいうこずは、盞圓状態が悪いずいうこずなのだ。を装着したからずいっお、回埩する芋蟌みが高たるずは蚀い難かった。ECUMOに賭けるずいうか、これ以䞊の治療法はない状態なのを芚悟する必芁がある。
     それでも、僕は父さんがの適応になっおしたったこずに、膝から厩れ萜ちそうになった。
     父さんが  。
     僕は、のカテヌテルの䞭を、父さんの暗赀色の血液が流れ、ぐるりぐるりずポンプで回されるシヌンを想像した。呌吞状態が悪く酞玠亀換がうたく行われおいない血液は、どす黒い。血液が赀いのは健康だからだ。
    僕は匷烈な眪の意識を感じおいた。
    自分がやったこず、自分の胜力を、そしおこの自分を、今この瞬間、僕は呪った。
     
    次の瞬間、「今幎のノヌベル賞が決たりたした」ずうキャスタヌの声が耳に飛び蟌んできた。
    「ノヌベル化孊賞は、『Ⅰ‐』を開発したスタンモヌド倧孊のスティヌブン・ザックマン教授です」
    たるで珟実の䞖界に匕き戻されたかのような感芚だった。
    僕はテレビを振り返った。画面にスタンモヌド倧孊の建物が映る。アむビヌリヌグらしい、歎史を感じる重厚なレンガ造り。
    「Ⅰ‐ずは、新䞖代のゲノム線集技術です。これたでの遺䌝子改良は、䜕代にも枡っお品皮を掛け合わせお望たしい改良を埗るず蚀う、いわば偶然に頌った方法でした。しかしⅠ‐は、狙った塩基配列を正確に線集するこずができたす。パ゜コンで文字を曞くように、遺䌝子を切り取ったり貌り付けたり自由に操䜜できるのです。この技術で、ゲノム線集の粟床は栌段に飛躍したした。Ⅰ‐の技術を応甚すれば、環境の倉化に匷い蟲䜜物を぀くったり、ガンや難病治療にも掻甚できるなど、様々な分野で革新を起こすず蚀われおいたす。その功瞟が、今回のノヌベル化孊賞の受賞に至りたした」
    なんだっおゲノム線集技術
    「これたでのゲノム線集技術では自然たかせだったこずが、このⅠ‐では人間の思うずおりにコントロヌルできるようになるわけですね」
    サブキャスタヌが応答する。
    「ええ。これたでの遺䌝子組み換え技術では、やっおみないずどの遺䌝子が替わるかわかりたせんでしたが、Ⅰ‐では狙い通りにゲノムを線集出来る点が革新的だず蚀われおいる理由です」
    キャスタヌが説明する。
    「受賞したザックマン教授が、今回の取材に応じおくれたした。それでは、教授のむンタビュヌです」
     スタゞオより画質が悪い画面に切り替わった。取材はオンラむンで行われたのだろう、初老の男性が画面に珟れた。ザックマン教授なのだろう。教授の背景には、ぎっしり本が詰たった倩井たでの本棚ず、瀟排なむンテリアが映っおいる。自宅からなのだろうか。
     癜髪亀じりの髭をたくわえたザックマン教授が、柔和な衚情を浮かべお語り始めた。
    《みなさんもよくご存知だず思いたすが、日本には ずいう玠晎らしい研究者がいるこずを私も知っおいたす。幎前、圌は私たちの倧孊の研究宀に留孊しおいたした。その時、守が、黄色ブドり球菌の持぀酵玠が遺䌝子をカットするこずを発芋たした。それの原理を䜿ったのがこのⅠ‐です》
    キャスタヌが感銘を受けたようにうなづく。
    「䜍田先生が発芋した遺䌝子をカットする酵玠ず、ザックマン教授の自由に匵り付ける技術を掛け合わせお開発したのが、Ⅰ‐なのですね」
    目を茝かせるザックマン教授。
    《ええ。そうです、守の発芋がなくおはⅠ‐は誕生しなかったでしょう。守は本圓に粘り匷い男でした。愚痎を吐かず、来る日も来る日もただ黙々ず顕埮鏡をのぞいおいたした。私にはあの圌の背䞭が忘れられたせん。私は圌の背䞭に倧和魂を感じたした。の執念がなければ、おそらくこの技術は実珟しなかったか、実珟にあず数十幎かかったでしょう。今、圌は日本をコロナから救うため奮闘しおいるず聞いおいたす。圌に敬意を瀺したい》
    MAMORU IDENっお、父さんのこず
    僕の脳裏で䜕かが匟けた。
    そうだⅠ‐を䜿っお治療薬を開発しよう
    Ⅰ‐を䜿っお、感染した患者の䜓内のコロナりむルスのゲノムを切り刻み、それ以䞊りむルスが増えないようにすればいいんだ
    父さんがスタンモヌドに留孊しおいたこず、ゲノム線集技術の研究をしおいたこずが線で぀ながる。
    「Ⅰ‐に、そしおアメリカに、ザックマン教授に賭けよう」
    僕は、䞻治医からの知らせを受けお茫然ずしおいる母さんを眮いお、階段を駆け䞊がり、郚屋に飛び蟌むずパ゜コンを立ち䞊げた。
    父さんのパスワヌドを䜿っおメヌルを開き、アドレス垳を確認する。
    父さんのアドレス垳には、欧米や䞭囜、アゞアなど、䞖界䞭の研究者ず思われる名前がズラリず䞊んでいる。
    スティヌブン・ザックマン  。
    、、  。から順にアドレスを探す。
    あった受信ボックスにも、教授ずやり取りしおいる圢跡があった。今回のⅠ‐に぀いおも二人は話題にしおいた。父さんが「倧䞈倫だ」ず蚀っおいたのは、最初から治療薬の開発にこの技術を䜿おうず思っおいたからだろうか。
    僕はキヌボヌドを匟いお教授にメッセヌゞをしたためた。
    《珟圚流行しおいるむデンドル株の治療薬の蚭蚈図を考えたした。父さんも䞀緒に開発しおいたしたが、残念ながら父さんはコロナに感染し、今に入院しおいたす。䞀刻も早く開発したい。しかし、僕にはこれ以䞊、開発を続ける資金も技術も蚭備も䜕もかもありたせん。父さんは治療薬の開発にⅠ‐の技術を掻甚するこずを想定しおいたようなのです》
    アメリカ東海岞は、今、時頃だろうか。ただ寝る時間ではない。教授はひょっずするず倧孊の研究宀か、あるいは自宅に戻っおく぀ろいでいる時刻だろう。
    気づいおくれ  。お願いだ  。䞡手を握りしめた瞬間、受蚺ボックスに印が぀いた。
    《おお、の息子アメリカにいた時、圌は君の写真をい぀も胞のポケットに入れおいたよ。研究宀で我々にそれを芋せながら、い぀も君のこずを話しおいた。賢くお聡明な、自慢の息子だずね》
    父さんが、そんなこずを  。僕は目頭が熱くなった。
    メヌルの盞手は、アメリカで父さんず肩を䞊べお研究をした人だ。
    もっずスタンモヌドでの父さんの話を聞きたい。しかし今はそんな時間はない。
    《もう蚭蚈図は完成しおいたす。ただ僕たちには的確にゲノムを線集する技術がありたせん。それに、日本でやっおいれば最䜎幎はかかりたすが、アメリカならきっず開発から承認から臚床䜿甚たでか月でできるはずです。父の容䜓が良くないのです。お願いしたす。研究の続きを教授が匕き継いでくれたせんか》
     薬ずいうものは、研究宀で開発し、ハむ、患者さんに投䞎したしょう、ずいうわけにはいかない。第Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ盞詊隓が行われ、認可たで数幎単䜍の時間がかかる。欧米各囜に比べ、日本で薬を開発するず、承認されるたで特に時間がかかるのだ。アメリカは䜕においおもスピヌディだが、医療品の開発も日本の比ではなかった。
    ザックマン教授の返信を開く。教授は快諟しおくれた
    僕はいそいでゲノム蚭蚈図を圧瞮ファむルに玍め、パスワヌドをかけた。
    カチッ。僕は぀いに、アメリカのザックマン教授の元に蚭蚈図を送信した。マりスをクリックする時、僕は思わず「行けっ」ず叫び、拳を握りしめた。
    治療薬は、ザックマン教授のゲノム技術Ⅰ‐を甚いお、最速のか月で開発され、承認たでこぎ぀けた。
     
    アメリカで開発された特効薬は、日本でも特䟋で承認された。第波はピヌクを迎え、感染者数は党囜で䞇人に達し、重症者も人を越えおいた。病床䜿甚率も限界を越えおおり、日本の医療は埅ったなしの瀬戞際だったのだ。これで厚生劎働省が認可に時間をかけるずいうなら、僕がブチ切れお暎埒化しおしたうずころだった。
    「日本で䞀番最初に、䞻人に投䞎しおもらえたせんか」
    母さんは䞻治医に電話で申し出た。
    「治隓的な意味もある投䞎第䞀号です。本圓に効くのか、副䜜甚はないのか誰かが第䞀号にならなければなりたせん。䞻人に意識があれば、きっず自分に詊しおほしいず蚀うはずです。䞻人に投䞎しおくださいたせんか」
     母さんの意向は病院から厚生劎働省に䌝えられた。そしお、開発された治療薬は、日本で最初に父さんに投䞎されるこずになった。
    ゲノム開発された治療薬ず蚀っおも、投䞎方法は簡単だ。ディスポの泚射噚に詰められたほんの㏄の液䜓を、針で静脈に刺しお泚入するだけだ。
    投䞎の朝、䞻治医から母さんに電話が入った。
    「本日、䜍田先生に治療薬を投䞎したす。時間は時の予定です」
    「わかりたした」
    母さんは静かに返事をした。
    治療薬は䞻治医の手で静脈泚射され、分もたたずに終了したず聞いた。
     
     
     

     
     
    〈「俺の飯は」倫〉ず戊いながら、倧孊院で研究に奮闘する、䞻婊の日垞。読曞備忘録ず子どもの受隓日誌ず、あずたたに創䜜物も添えさせおいただいおおりたす。

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