
『クラベル』|あかの物語
僕は、ヨウキ。
「いってきまーす」
ママのラベルは、
優しい。
料理が得意。
お洗濯が上手。
ママに「優しい」って言ったのは、僕。
パパはいつも、
ママに「料理が上手」って言ってる。
お隣さんは、毎朝の挨拶のときに、
「お洗濯、いつも頑張ってるね」
って言ってる。
僕のラベルは……。
小さい。
静か。
勉強が好き。
僕は小柄だから、
クラスメイトに「小さい」って言われた。
おしゃべりが苦手だから、
みんなに「静か」って思われてる。
テストで百点を取ったから、
勉強が好き、ってことになってる。
⸻
休み時間。
みんなは、ゲームの話をしてる。
僕も同じゲームが好き。
でも、話せない。
おしゃべりが苦手だから。
「ヨウキ、休み時間でも勉強してるよな」
「あいつ、勉強大好きだからな」
そう言ってるクラスメイトのラベルは、
元気。
ゲーム。
かっこいい。
僕はノートに、
好きなキャラクターを描いてるだけなのに。
⸻
今日も僕は、
ノートを手に持って帰る。
いつもノートを持ってるけど、
理由はない。
たまにベンチに座って、
少し眺めてから帰ることがある。
「さようなら」
「さようなら」
「ノート見ながら帰るなよー。周りに気をつけてな」
先生は、僕が勉強しながら帰ってるって
思ってるみたい。
先生のラベルは、
ルール。
厳しい。
頭がいい。
⸻
「よう! ヨウキ!」
隣のクラスの、のまさくん。
のまさくんのラベルは、
元気。
運動好き。
大きい。
のまさくんは、いつも元気。
体も大きくて、運動も得意そう。
「一緒に帰ろうよ!」
「今日は俺も一人なんだ!」
「なにそれ! ノート? 見せてよ!」
のまさくんは、
ラベルのとおり、元気だった。
僕は、ノートを貸してみた。
すると、
のまさくんの目が、まあるくなった。
「すごいな! めっちゃ絵、上手いよ!」
「俺もこのキャラクター大好き!」
あれ。
のまさくんは、
運動好きじゃないのかな。
ゲームのラベルはないのに、
どうしてだろう。
「ゲーム、好きなの?」
「運動のほうが好きじゃないの?」
「おう! 大好きだぜ!」
「運動? 得意なだけだよ!」
のまさくんは、
僕を見て、元気な声で言った。
「ヨウキこそ、ゲーム好きなの?」
「勉強のほうが好きなんじゃないの?」
僕たちは、
少しだけ考えた。
ラベルとは違うことも、
あるんじゃないのかな。
「まあ、いっか!」
「そうだね」
僕が見てるラベルと、
本当は違うこともある。
今日、僕は、
不思議なことを知った。
話してみたから、わかったこと。
少しだけ、
おしゃべりが楽しいと思った。
明日は、ほかの子にも
話しかけてみようかな。
おしまい。