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【青橙ノ余白】どうしてA仙台戦の記事が書けないのか

──ずっと書かなければと思っていた試合がある。
それは、2025年3月8日におこなわれた第4節、アウェイ仙台戦。
長崎サポーターなら、ピンと来るはずだ。

──そう、J1昇格プレーオフで負けてしまった因縁の相手。
そして、この日は東日本大震災が近いという事もあり、試合前に黙祷が行われている。
私が全力で応援している照山選手が、プロを始めたクラブでもあり、初対戦という事もある。

様々な要因を加味すると、何が何でもこの試合は記事にしなければならないと思っていた。
ただ、記事にできない明確な理由がある。
──それは、仕事で後半のみ、リアルタイム観戦ができなかったからだ。

最初から、試合を見る事ができないと分かっていたのならば、まだ良かった。
予め、情報を遮断する手段を取れていたからだ。
ただ、途中で急に仕事に行かざるを得ない状況になったため、結果を知ってから試合をみる羽目になった。

何度も筆を取ろうとした。
いつものように、 「今日の私はiPadの前に座っている。長崎にとって大一番の仙台戦だ。長崎のサポーターなら、皆、この試合の重要性が分かっている。」 って書こうとした。

でも、ダメだった。
どうしても試合のパートに入ると自分の言葉なのに嘘くさくなってしまうのだ。
正直、前半26分で1-1になり、もうそこからスコアが動からないと分かりきった上で、感情をのせて記事を書くのは至難の技だ。
こちらの惜しいシュートは(入らないよね)と思うし、相手のシュートも(入らないよね)としか思えないのだ。
彼と同じように私も気持ちに嘘をつくのは無理だ。

私が記事を書く目的は、照山選手との思い出の備忘録的な側面が強い。
彼が移籍してきた経緯を鑑みれば、おそらく長崎で彼を応援できるのは、刹那的な時間だろうなと覚悟している。
だから、せめて長崎に在籍している間は、彼の「物語」を残したいと思って筆を取っている。
ただ、一般的な物語と大きく違うのは、シナリオをこちらの都合良く合わせる事ができない点だ。
当たり前だが、負けた試合を勝った試合にする事はできない。
彼がしてもいないプレーをしたとも書けない。
だから、私の記事は観察による事実の積み上げと、それに基づく確度の高い推論と、その時のリアルな感情で成り立っている。

事実の積み上げを怠るとただの「こうだったらいいなぁ」という妄想記事に成り下がる。

そして、今回の場合みたいに、大して分析能力がない私の記事から感情を失ってしまうと、ただ、試合を見たまま書く議事録になってしまうのだ。
──だったらDAZNを見た方がよい。
私の記事を読む時間は世界で一番無駄な時間となる。
私の記事は、意外と薄氷の上を歩くようなバランスで成り立っている。
事実も推論も感情も、どれかを失うと、もうそれは私の記事ではない。
それが分かりきっているから筆が進まなかった。

彼の長崎での物語を残す事が、記事の第一の目的ではあるが、もちろん、誰かに届けば良いなという気持ちもある。

私と同じように彼を応援している人に。
長崎を応援している人に。
サッカーを愛する人に。

私は、私の記事が、その瞬間、その場所でしか感じられない「匂い」を、あなたに届けたいと願っている。
だからこそ、あの仙台戦を、今も私は書けずにいる。
もしかしたら、いつか、この「書けない理由」こそが、あの試合の本当の「匂い」なのだと気づく日が来るのかもしれない。
あるいは、この物語が、このまま未完のままで終わるのかもしれない。
それでも、私は、私が信じる「私の記事」を書き続けるだろう。

──彼の長崎での物語が続く限り。

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楓|青橙ノ記憶 「面白かった!」と思っていただけたら、チップで応援していただけると嬉しいです。 頂いたチップは、蛍さんの好物のヨーグルト代になります。 試合後にポータブル神棚にお供えしてから私のお腹の中へ。 今回も相変わらずの応援スタイルです。