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【青橙ノ余白】青い枠の向こう側─48の空白、3の始まり

この時、私は会社のパソコンデスクの前に座っていた。
昼だ。
昼食を食べる前に、何の気なしにXを開いた。
本当に何も考えていなかった。

唐突に私の目に飛び込んできた。

「照山颯人選手が栃木シティへ期限付き移籍することが決定いたしましたのでお知らせいたします。」

──時間が止まった。
覚悟はしていた。
でも、油断していた。

携帯の画面が滲んだ。
慌てて会社のトイレに駆け込んだ。

個室に入り、鍵を閉める。
しばらく携帯を見つめていた。
何度も同じ文章を読む。

「期限付き移籍」

ちゃんと文字は読める。
意味も分かる。
だけど、頭の中では理解できなかった。

携帯の画面に、涙が勝手に落ちた。
「とうとうこの瞬間が来てしまった。」
そう思った。

震える指で、リンクをタッチする。
彼のコメントを見る。
「…さらに成長した姿を見せられるように…」
このコメントも、私の脳は処理することができなかった。

しばらくして、気持ちを落ち着かせ、トイレから出て顔を洗った。

午後の仕事のために昼食を食べた。
…だけど、何も味がしなかった。

仕事をしていてもパソコンの画面がぼやける。
会社には「寝不足であくびが出て…」と言ってごまかした。

──ここ数日、ずっと落ち着かなかった。
まぁ、これは毎回の事なのだが。

ただ、今回はより一層落ち着かなかった。

というのも、何となく予感はしていたからだ。

松澤選手が長崎に帰って来てるのに、一緒に写真に映ってないなとか。
長崎の番記者さんが選手の入れ替えを仄めかしているなとか。
新井選手、江川選手、進藤選手の契約更新は早めに出たのに照山選手は遅いなとか。

極めつけは大南選手の加入だ。

少しずつ、来シーズン、彼はいないんじゃないか、という考えに囚われていった。

今回、契約更新に合わせて、長崎は誰が更新したかが分かるように、一日の最後にこれまで更新した選手の写真をXでポストしている。

その写真が載せられている青い枠は全部で30ある。

選手の更新のお知らせがあるたびに、もちろん嬉しいのだが、その青い枠は埋まっていく。
私はそれを見るたびに、だんだんと彼の席が無くなって行くような気がしていた。
無意識のうちに私は残りの青い枠の方を意識するようになり、それを見るたびに息が詰まる思いがした。

──まだか、彼はまだなのか。

彼を応援しているサポーターの方と慰め合ったりもした。
きっと大丈夫ですよ、早く発表して欲しいですねと。

──だけど、今日、彼はその青い枠に入らない事が確定した。

正直、これまでの長崎のパターンだと、彼くらいのキャリアでこのレンタル移籍は、戻ってこない確率の方が高い。

それでも、私ができる事は一つだ。

──長崎で彼が戻ってくるのを待ち続ける。

私は夢見ている事がある。
今、病気療養中の名倉選手が復帰して、プレーができるようになった時。
彼とJ1の舞台で、ピースタで一緒にプレーをしている所がみたい。

──だから絶対に戻ってきて欲しい。

もちろん、戻ってくる保証は今のところない。
いつまで、いつまで待てばいいのかもわからない。

でも、だからこそ栃木シティで活躍して欲しい。

栃木シティには元々長崎にいた加藤選手がいるし、何よりあの超有名人の田中パウロ選手がいる。
彼のロングフィードから田中パウロ選手が得点するのも見てみたいな、と思う。

彼の栃木シティでの背番号は「3」だ。
長崎に来る前のいわきFCで背負っていた番号。
今までの「48」じゃない。
新しい番号。
新しい挑戦。

一桁台の番号を付けることに、勝手に栃木シティからの期待を見出している私もいる。

今までみたいに応援することは難しいかもしれないが、長崎から彼の挑戦を見守り続けたいと思う。

さっそく、九州アウェイは応援に行けないかなと思って調べたら、鳥栖と大分は行けそうだ。

──意外と順応している。

ただ、長崎での彼の応援はしばらくお休みとなる。
彼が不在の間、長崎でどうやって彼を待とうかなと思っているが、それはこれからゆっくり考える事にする。

──確実なのは、この「青橙ノ記憶」はこれからも続いて行くという事だ。

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楓|青橙ノ記憶 「面白かった!」と思っていただけたら、チップで応援していただけると嬉しいです。 頂いたチップは、蛍さんの好物のヨーグルト代になります。 試合後にポータブル神棚にお供えしてから私のお腹の中へ。 今回も相変わらずの応援スタイルです。