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【注目】楽天グループ(4755):株価が大幅続伸 「日本版スターリンク」に政府支援、衛星通信事業が一気に現実味

    楽天グループの株価が6月30日に大幅に続伸した。前日比56円30銭(7.88%)高の770円80銭をつけ、出来高も急増する展開となった。市場が好感したのは、日本経済新聞電子版が前日29日に報じた、楽天グループ連合に対する総務省の資金補助に関するニュースである。「日本版スターリンク」とも呼ばれる衛星通信インフラ整備事業で、楽天グループが事業者として採択される見通しとなったことが伝えられ、これが買い材料として一気に広がった。一見すると専門的で地味なニュースに思えるかもしれないが、その中身を丁寧にひも解くと、楽天グループの財務構造、事業戦略、そして政府の経済安全保障政策までもが複雑に絡み合った、非常に重みのある材料であることが見えてくる。

    まず押さえておきたい、楽天グループの今の立ち位置

    このニュースを理解するには、まず楽天グループが今どのような会社で、何に苦しみ、何に期待されているのかを押さえる必要がある。楽天グループはEC(楽天市場)、金融(楽天カード、楽天銀行、楽天証券)、そしてモバイル(楽天モバイル)という3つの柱で構成される複合企業だが、株価の重しとなってきたのは長らくモバイル事業の赤字だった。2020年の本格参入以降、基地局整備に巨額の投資を続けてきた楽天モバイルは、契約者数こそ伸びているものの、なかなか黒字化に至らず、グループ全体の業績を圧迫してきた。

    2025年12月期の決算を見ると、売上収益自体は前年比9.5%増の2兆4,965億円と全セグメントで増収を達成しており、事業の規模としては着実に拡大している。Non-GAAPベースの営業利益は1,407.9%増の1,062億円と大幅な増益を記録した一方、IFRSベースの営業利益は72.9%減の143億円にとどまるなど、会計基準によって見え方が大きく異なるのも楽天グループの決算の特徴である。携帯事業の調整後営業損益は1,618億円の赤字だったが、前年同期比では471億円の改善となっており、モバイル事業の損益は着実に上向いている。とはいえ、依然として自己資本比率は低水準にとどまり、財務の安定性には課題が残るというのが市場の一般的な見方だった。

    そしてもう一つ、楽天グループには重い社債返済というテーマが常につきまとってきた。過去には実質利回り11%を超えるドル建て社債を発行するなど、日本の上場企業としては異例の高利率での資金調達を強いられてきた経緯がある。来年にかけても約8,000億円規模の社債償還が控えており、買い手集めに奔走してきたのが実情である。つまり、楽天グループという銘柄は「成長性への期待」と「財務リスクへの警戒」が常にせめぎ合う、評価の難しい銘柄であり続けてきた。だからこそ、今回のように国がお墨付きを与え、しかも資金面まで支援するというニュースは、これまでの不安要素の一角を払拭する材料として強く意識されたのである。

    何が起きたのか――総務省「J-LEO」事業に楽天連合が採択へ

    今回株価を押し上げた直接の材料は、総務省が進める「自律性確保に向けた低軌道衛星通信インフラ整備事業」、通称「J-LEO」の採択事業者に、楽天グループとAST SpaceMobileの連合が決まる見通しとなったという報道である。日本経済新聞によれば、衛星の打ち上げなどの費用として3年間で計1,500億円を支援する内容で、近く正式決定される運びだという。

    J-LEOという事業の仕組みを簡単に説明すると、これは2025年度補正予算で1,500億円が計上された新規事業で、あらかじめ事業者が決まっている補助金ではなく、民間事業者から提案を募り、審査を経て採択先を決めるという公募型の制度である。基金の設置法人は一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)が務め、総務省からJ-LEOに関する補助事業者としての委託を受けて運営されている。補助率は事業総額の最大2分の1とされており、人工衛星の調達、打ち上げ、地上設備の整備という3つの費用項目が対象になる仕組みだ。

    つまり、政府が全額を負担してくれるわけではなく、楽天側にも1,500億円に匹敵する規模の自己負担が求められることになる。財務面での負担が決して軽いわけではない点には注意が必要だが、それでも国の予算から直接1,500億円規模の支援を受けられるという事実は、単独で巨額投資を背負うよりもはるかにリスクを分散できる材料であり、株式市場がポジティブに反応したのも自然な流れだったといえる。

    なぜ「日本版スターリンク」と呼ばれるのか
    このJ-LEO事業は「日本版スターリンク」という通称で語られることが多い。スターリンクとは、イーロン・マスク氏が率いる米スペースXが展開する衛星インターネット通信サービスで、地球の低軌道を周回する数千機規模の小型衛星群を使い、地上のアンテナやスマートフォンに直接通信を届ける仕組みである。日本国内でもKDDIが「au Starlink Direct」としてスターリンクを活用したサービスを既に開始しており、建設現場やインフラ監視、BCP(事業継続計画)対策など法人向けの活用が広がりつつある。

    ただし、スターリンクはあくまで米スペースXが運用するインフラであり、その意思決定はイーロン・マスク氏の意向に大きく左右されるという懸念が常に指摘されてきた。災害大国である日本にとって、通信インフラの根幹部分を海外の一企業、しかも特定の経営者の判断に依存し続けることには、経済安全保障上のリスクがある。今回のJ-LEO事業は、まさにこの「海外依存からの脱却」を狙ったものであり、日本国内から衛星管制を行い、自律的に運用できる衛星通信網を整備するという国家戦略的な狙いが背景にある。

    採択事業者には、3年弱という限られた期間の中で、災害時も含めて1日16時間以上、スマートフォンと衛星を直接つなぐDTC(Direct to Cell)サービスを日本全国で提供できる体制を整えることが求められる。山間部や離島、海上など、これまで基地局の建設が難しく通信が届きにくかったエリアの解消はもちろん、災害や停電時のバックアップ回線としての活用も期待されている。スターリンクに依存しない「日本発」の衛星通信インフラという位置づけそのものが、政府にとっても、楽天グループにとっても大きな意味を持つプロジェクトなのである。

    楽天とAST SpaceMobileの提携、その積み重ねてきた歴史

    今回の採択が単なる「棚ぼた」ではないことも強調しておきたい。楽天グループは2020年3月、米国の宇宙ベンチャーであるAST SpaceMobileに出資し、戦略的パートナーシップを締結している。この出資額は約300億円規模とされ、楽天グループはASTの株式の15%を保有する関連会社という立場にある。つまり、楽天は単なる利用者やサービス導入企業としてではなく、ASTという衛星通信インフラそのものの「育成者」として、創業期から深く関与してきたのである。

    両社はこれまで着実に技術的なマイルストーンを積み重ねてきた。2022年9月にはASTが低軌道試験衛星「BlueWalker 3」の打ち上げに成功し、2023年4月には英ボーダフォン、米AT&Tを含めた4社協力のもと、世界初となる低軌道衛星を使った市販スマートフォン同士の音声通話試験を米テキサス州で成功させている。2024年9月には商用衛星「BlueBird」の打ち上げにも成功し、2025年4月には日本国内で初めて、低軌道衛星と市販スマートフォンによるエンドツーエンドのビデオ通話試験にも成功した。福島県内に設置したゲートウェイ地球局から衛星に向けて電波を発信し、福島と東京の間でビデオ通話を実現したというこの実証実験は、技術的な実現可能性を国内外に示す重要な一歩だった。

    楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、このプロジェクトを「携帯業界のアポロ計画」と称するほどの意気込みを見せている。注目すべきは、楽天が掲げる優位性の中身だ。第一に、「Rakuten最強衛星サービス」のアンテナサイズはスターリンクの衛星と比較して約36倍にもなるとされ、少ない衛星数でも広範囲に強い電波を届けられるという。第二に、スターリンクやKDDIのサービスが現時点ではテキストメッセージ程度の通信に限定されているのに対し、楽天が目指すサービスはビデオ通話やYouTube視聴、SNS利用まで対応できる本格的なブロードバンド通信を志向している点である。第三に、特別な専用端末を必要とせず、一般的な4G/LTE対応スマートフォンでそのまま利用できるという手軽さも強みとして挙げられている。サービス開始時期については2026年第4四半期が目標とされており、楽天モバイルの矢澤俊介社長は前倒しに向けて努力していることにも言及している。

    株価の動きを詳しく見る

    ここで改めて、6月30日当日の株価の値動きを確認しておきたい。前営業日に757円20銭で取引を終えていた楽天グループ株は、報道を受けて買いが先行し、寄り付きから上昇基調を強めた。日経電子版によれば、午前10時50分時点で前日比56円30銭(7.88%)高の770円80銭をつけており、この時間帯には既に大きく値を伸ばしていたことが分かる。

    楽天グループ株はこのところ、4月の決算発表後に805円台までの戻りを見せる場面もあった一方、その後は日系大手証券による目標株価の相次ぐ引き下げなどを受けて上値の重い展開が続いていた。具体的には4月8日・9日にかけて目標株価が890円、960円へと相次いで引き下げられるなど、評価修正が連続したことで戻りが一服しやすい局面にあったとされる。そうした地合いの中での7%を超える上昇は、テクニカル的にも明確な転換点として市場参加者の目に留まりやすいものだったといえる。

    出来高面でも当日は活発な売買が観測され、値上がり率ランキングの上位に楽天グループの名前が挙がる展開となった。株式市場では、決算や業績修正といった「企業固有の業績材料」だけでなく、今回のような「政府の政策・予算がらみの材料」も非常に大きなインパクトを持つことが多い。なぜなら、政策的な後押しは一過性のものではなく、複数年にわたる事業の方向性そのものを規定する性質を持つためである。投資家は、目先の四半期業績よりも「この先数年の収益構造がどう変わるか」という観点で株を評価することが多く、今回のニュースはまさにその「数年先の収益構造」に直接関わる材料だったため、株価への影響が大きくなったと考えられる。

    なぜこのニュースがここまでの株価インパクトを持ったのか

    ここで改めて、今回の上昇がなぜこれほど大きなものになったのかを整理しておきたい。第一の理由は、財務負担の軽減という直接的なメリットである。楽天モバイルはこれまで基地局整備に巨額の自己資金を投じてきた経緯があり、その重さが株価の上値を抑える要因の一つになってきた。今回の1,500億円という規模の政府支援は、衛星インフラという新たな投資領域においては自己負担を半分に抑えられることを意味し、財務面での不安をある程度和らげる材料として受け止められた。

    第二の理由は、政府のお墨付きを得たことによる「信頼性の向上」である。民間企業単独の技術開発計画と、国家プロジェクトとして総務省が資金を投じる計画とでは、市場からの見られ方がまったく異なる。総務省という公的機関が1,500億円もの予算を投じて支援するということは、それだけこの事業の実現可能性や戦略的重要性を国が認めたという証左であり、投資家心理を大きく後押しする効果を持つ。

    第三の理由は、競合に対する優位性が明確になったことである。KDDIが既にスターリンクを活用した衛星通信サービスを展開している中、楽天グループは「国産」かつ「より高機能」な衛星通信インフラを政府の後押しを受けながら構築できる立場に立った。携帯キャリア業界における差別化要因として、衛星通信は今後ますます重要なテーマになっていくとみられており、その先頭グループに政府の支援付きで立てたことは、中長期的な企業価値の評価を引き上げる材料として意識されやすい。

    第四に、為替や金利環境という外部要因も無視できない。足元では円相場が約39年半ぶりの歴史的な安値水準まで下落するなど、市場全体が不安定さを増している局面にあった。こうした地合いの中で、政策的な追い風という明確な好材料が出たことは、相対的により強いインパクトを持って受け止められたと考えられる。

    楽天モバイルの収益構造における衛星通信の位置づけ

    衛星通信サービスは、楽天モバイルの既存事業を置き換えるものではなく、あくまで「補完」する位置づけにある点も理解しておきたい。楽天モバイルはこれまで地上の基地局整備を進め、人口カバー率は99%以上を達成しているが、山間部や離島、海上など、基地局の建設が物理的に困難なエリアは依然として残っている。衛星通信サービスは、こうした「圏外」エリアを埋める役割を担うものであり、災害時や停電時のネットワーク冗長性を確保する手段としても期待されている。

    また、ASTの衛星通信システムは世界の約40の通信キャリアとパートナー契約を結んでおり、末端ユーザー数にして30億人規模に達するという。今後パートナーとなるキャリアは70〜80社規模まで拡大する見込みとされ、こうした世界中のキャリアが手掛ける衛星通信インフラとして、楽天が持つ通信事業者向けソリューション「楽天シンフォニー」の拡販にもつながる可能性が指摘されている。つまり、今回のJ-LEO採択は単に「日本国内の通信圏外を埋める」という話にとどまらず、楽天グループがグローバルな衛星通信インフラビジネスの一翼を担う布石にもなり得るという、より大きな成長ストーリーの中に位置づけられる材料でもある。

    今後の注目点とリスク要因

    今回のニュースを材料に株価が大きく動いたとはいえ、楽観一辺倒で見るべきではない点もいくつか存在する。まず、補助率は事業総額の上限2分の1にとどまるため、楽天側にも1,500億円規模の自己負担が求められる。モバイル事業の損益改善が進んでいるとはいえ、依然として低水準にある自己資本比率を踏まえると、今回の投資が財務体質にどの程度の負荷をかけるのかは引き続き注視が必要である。

    また、正式決定はまだこれからの段階であり、3年弱という限られた期間内に、1日16時間以上のサービス提供体制や日本国内からの衛星管制体制を構築できるかどうかという、技術面・運用面でのハードルも残されている。サービス開始時期として掲げられている2026年第4四半期という目標が計画通りに進むかどうかも、今後の株価を左右する重要な変数になるだろう。

    加えて、KDDIをはじめとする既存の大手キャリアもスターリンクを活用したサービス展開を着々と進めており、楽天が掲げる技術的優位性を実際の商用サービスの品質と価格でどこまで証明できるかが、中長期的な競争力を決定づけることになる。政府支援という「追い風」を得たことは間違いなくポジティブな材料だが、それを実際の収益にどう結びつけていくかという実行力こそが、今後の楽天グループ株を評価するうえでの本質的な論点になっていく。

    まとめ

    楽天グループの株価が6月30日に大幅続伸した背景には、総務省が進める「日本版スターリンク」こと低軌道衛星通信インフラ整備事業「J-LEO」において、楽天グループとAST SpaceMobileの連合が事業者として採択される見通しとなったという報道があった。3年間で計1,500億円という規模の政府支援は、これまで重荷とされてきた楽天モバイルの巨額投資負担を一部軽減するとともに、国家戦略としての信頼性とお墨付きを得たことを意味し、投資家心理を大きく押し上げた。長年にわたりASTとの提携を積み重ねてきた技術的な蓄積が、ここにきて政策面での後押しという形で結実したともいえる。もっとも、依然として自己負担や財務体質、技術面・運用面でのハードルは残っており、政府支援という追い風を実際の収益力にどう転換していけるかが、これからの楽天グループ株を見るうえでの最大の焦点になっていくだろう。

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