
五十音で始める愛の詩 『虹の日に、君と会った』
虹の撮影で、その町を訪れた。
ガイドとして現れた君は、空の見どころをよく知っていた。
「あそこが、一番きれいに見えますよ」と
君が指さした方向に、本当に、虹が出た。
僕はカメラを構えながら、 虹より先に君を見ていた。
シャッターを押すたびに、君の声が聞こえた。
「撮れましたか?」
「もう少し待てば、もっと濃くなりますよ」
プロとして来たのに、その日だけはうまく仕事ができなかった。
虹は、ちゃんと撮れた。
でも、一番撮りたかったものは別にあった気がして。
あれから何年も経って、
今、隣で眠っている君に、まだ言えていないことがある。
あの日、 僕が撮りに行ったのは
虹じゃなかったかもしれない、と。