
『本当にいる30年紐生活の男登』
封筒の中から滑り出てきたのは、分厚い数枚の「諭吉」だった。金額にして数万円。 茨城のコンビニで芋臭い座り方をしていたあの少女が、新宿の夜の世界で命を削って稼ぎ、俺たちへの純粋な感謝として包んでくれた、あまりにも生々しい現金の重みだった。
雄二と俺がその金額に呆然とする中、登だけは違った。あいつの目は感謝ではなく、獲物を見つけた猛獣のように、冷たく、ギラギラと欲に濡れていた。
「……なぁ憲ちゃん。女って、マジで金になるんだな」
ポツリと呟いた登の声は、低く、震えていた。 あの血に染まったクリスマスの夜、丘の上公園の冷たいコンクリートの上で死んだ、純粋な少年・登の葬送曲が、この瞬間に鳴り止んだ。そして同時に、他人の愛をすべて都合のいい「対価」へと変換する、本物の怪物が産声を上げたのだ。
これが、彼が手にした最初の「対価」であり、これから始まる狂気の日常の、ほんの序章に過ぎなかった。
あれから30年。 あいつはただの一度も定職に就くことなく、女の金だけで一千万以上の高級外車を転がし高級時計を身に着け、今もこの世界のどこかで、女の愛を喰らい尽くして生きている。綺麗なモラルや法律では1ミリも測れない、最強の紐男の人生。私はその深淵を、これからも書き残していくつもりだ。