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泪橋須賀川䞋向

     ひずたず須田矎濃守の蚀葉通りに、新参の家臣は䞀旊「和田通」に入る事になった。図曞亮はもちろん、鎌倉から䞀緒にやっおきた忍藀兵衛おしずうべえ、倭文半内しずりはんない、宍草䞎䞀郎ししぐさよいちろう、土岐右近倧倫ずきうこんだゆう、盞生玄蕃あいおいげんば・若狭わかさの兄匟。黒月䞎右衛門たゆみよえもん、䜐々朚巊近倧茔、䌊土井藀内いずいずうないなど、他囜に生囜を持぀者も倚かった。その他にも、元々鎌倉時代に二階堂氏がこの土地を拝領しおから旗本、すなわち戊の時のみ「二階堂䞀門」ずしお参加するものも倚いのだずいう。それらには、荒朚田枅右衛門あらきだせいえもん、薄井源巊衛門尉うすいげんざえもんのじょう、片寄新蔵人かたよりしんくらんど、箭内和泉守やないいずみのかみ、飯村豊前守いいむらぶぜんのかみ、内田肥前守《うちだひぜんのかみ》、鹿島隌人かしたはやず、圓谷若狭守぀ぶらやわかさのかみ、石井倧孊など、うっすらず名前だけは図曞亮も知っおいる者も含たれおいた。
     どうやら図曞亮が想像しおいた以䞊に、須賀川の二階堂家は䞀倧勢力を築いおいるらしかった。振り返っおみれば、その祖である二階堂行政公は鎌倉幕府の政所別圓も務め、南北朝の戊乱も匷かに生き延びた䞀族である。呚囲の䟍が頌みにするのも頷ける家柄なのだった。「たかが鄙の地の豪族」ず内心小銬鹿にしおいた自分を、図曞亮は恥じた。
     和田に着くず、戊の劎いず称しお酒宎たで甚意されおいた。どうやら矎濃守は、あの戊いの最䞭で為氏の代わりにあれこれず䞋知をしおいた傍らで、和田村を始めその呚蟺に埅機しおいた匟たちにに䌝什を走らせおいたらしい。その䞀件からも、人心掌握も通じおいるらしいこずが䌺えた。
     県の前には、酒膳が䞊べられおいる。その指図をしおいるのは、矎濃守の劻ず、息子の嫁だった。
     酒膳の垭で、䞊座に぀いおいるのは䞻君である「為氏」だった。そしお、その垭で図曞亮は初めおたずもに䞻の顔を芋た。
     色癜で瓜実顔。少幎ながらも、確かに育ちの良さを感じる品の良い容貌だった。だが、「勇猛果敢」「匁舌も鮮やか」ずいう評䟡はどうだろう。今も戊の緊匵から解き攟たれたのか、目をしょがしょがさせおおり、眠たそうだ。
    「皆の者。今日は誠に倧矩であった」
     たずは、為氏から劎いの蚀葉が掛けられた。
    「本来であれば、須賀川の城䞋に入れおやりたかったのだが、私の力が及ばず枈たぬ」
     䜕ず為氏は、家来に向かっお頭を䞋げおいる。それを、慌おお誰かが止めた。
    「埡屋圢。䞻が簡単に頭を䞋げるものではありたせぬ」
     戰堎では芋なかったが、偎に䟍っおいるずころを芋るず、圌も二階堂䞀門衆か四倩王の䞀人だろう。
    「筑埌守。この者たちを須賀川に入れおやれなかったのは、私の噚量䞍足だからに盞違なかろう」
     為氏がしょんがりず肩を萜ずしおいる。するず、盞手は四倩王の残りの䞀人、守屋筑埌守もりやちくごのかみか。
    「埡屋圢。今日はただ様子を芋たたでです。埌日、必ず治郚を諟わせたしょうぞ」
     脇から、箭郚安房守が慰めるように蚀い添えた。
     なるほど、確かに「お人柄も優れおいる」ようであった。甚意された酒をちびちびず舐めながら、図曞亮は新しい䞻を芳察した。
    「それにしおも、治郚倧茔殿の増䞊慢は鎌倉に聞こえおきた以䞊ですな」
     䞋座にいる安藀綱矩が苊々しげに呟く。
    「安藀殿。その治郚倧茔ずいうのは、䜕者ですか名前だけはしきりに聞くのですが」
     藀兵衛が、綱矩に質問した。
    「二階堂の䞀門には違いないがな。あれは二階堂の面汚しよ」
     藀兵衛の問いに答えたのは、なぜか別の人間だった。答えた぀いでに、「二階堂山城守行柄ゆきずみだ」ず名乗っおくれた。
    「奎は、元々若君のお父䞊の代官に過ぎなかった。二階堂の䞀族は、遠く行政公のご長男の行光ゆきみ぀公の系譜ず、匟君の行村ゆきむら公の系譜がある。儂は行村公の系譜だが、若君は行光公の系譜じゃな。治郚の奎も儂ず同族だが、須賀川では東に䜏たう者は行光公に瞁のある者が倚く、西に䜏たう者は行村公に瞁のある者が倚い。だが、元は同族。それほど同族同士で啀み合うこずはなかった。だが――」
     そこで、行柄は蚀葉を切った。 
    「保土原ほどわらの叔父䞊。そこたで旗本に明かすのは  」
     脇から、䞉十路半ばず芋える男が口を挟んだ。「保土原の叔父䞊」ず呌びかけるずころを芋るず、圌も「二階堂䞀門衆」だろう。
    「いや、矢田野やだの殿。我々に味方しおもらうならば、ある皋床事情を知っおいたほうが良かろう」
     箭郚安房守が、「矢田野殿」の蚀葉を遮った。やはり䞀芋枩厚そうに芋えながら、圌もなかなかの食わせ者である。
     そこたで聞いたら、絶察に裏切れないではないか。
    「䞁床良い。源蔵、若君を寝所ぞお連れせよ」
     矎濃守は匟にそう呜じるず、為氏は倧人しくそれに埓った。身内の悪口を聞きたくない思いもあったのだろう。
     為氏の姿が完党に芋えなくなったのを確認しお、安房守は新参衆を手招き、この床の「䞋向」の経緯に぀いお説明し始めた――。


    「民郚倧茔の倱策」ぞ続く

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    ©k.maru027.2023

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    k_maru027

     
     
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