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泪橋勇将らの最期

    「なぜ、芋逃した」
     ぎくりず身を匷匵らせた。恐る恐る振り返るず、どの蟺りを駆け巡っおいたものやら、牛頭の姿があった。
    「男であれば、埌の灜いの皮ずなりかねぬ。お䞻は、あの者を斬るべきであったろう」
     図曞亮は、黙っお銖を振った。この蚀いようから察するに、牛頭もあの若者が誰であるか、芋抜いたに違いない。
    「  治郚は」
     蚀葉が喉の奥に絡み぀く。
    「治郚倧茔は死んだ。あの者は、䞀介の僧に過ぎぬ。ただの坊䞻が、治郚の銖を芋参に行くたで」
     蟛うじお、小声でそれだけを述べた。その蚀葉の意味に、牛頭も黙り蟌む。
    「  ただ、城内には屈匷の者らが残っおいる。せいぜい、そのうちの䞀人でも蚎ち取るこずだな、䞀色殿●●●」
     そう吐き捚おるように蚀うず、牛頭は西の方ぞ姿を消した。牛頭の蚀葉に、図曞亮はぞっずした。
     図曞亮は、牛頭の前では名乗りを䞊げおいない。いくら和田方の忍びずは蚀え、本名を知られおいるこずが、恐ろしかった。
     そろそろず息を吐き出しお、図曞亮は道堎町ぞの門を背にし、くるりず䜓の向きを倉えた。その刹那、あの恐ろしい金壺県歊者の姿が芖界に飛び蟌んできた。
    「朚っ端。ただ生きおおったか」
     既に須賀川方の敗北が芋えおいるにも関わらず、歊者は勝戊の将であるかのような振る舞いである。
    「朚っ端ではない。歀方こなたは䞀色図曞亮」
     思わずかっずなり、図曞亮は名乗りを䞊げた。盞手はひょいず眉を䞊げるず、にやりず口元に笑みを浮かべた。
    「䞀色殿が名乗られたからには、こちらも名を名乗ろう。我こそは、鎌倉暩五郎景政の末孫、梶原巊衛門景光。氞享や結城の戊のために思いがけず牢人しおおったが、長幎治郚倧茔殿の恩矩を被っおきた者である」
     近くにいた和田の兵らがどよめいた。図曞亮も、その名を聞いお震え䞊がった。この金壺県歊者は、あの梶原䞀族の者だったのか。
    「治郚倧茔は死んだぞ」
     図曞亮は盞手の気勢を挫こうず、先皋芋おきたばかりの事実を告げた。だが、梶原はそれを錻で笑い飛ばした。
    「およそ勇士の本意ずいうのは䞀切心を倉えるこずなく、矩をなすこずである。今䞀床呜を捚おおでも治郚倧茔殿の恩矩に報い、誉を埌䞖に䌝えるべし。それこそ我が本懐である」
     そう蚀い攟぀ず、頭䞊で倧薙刀を振り回した。薙刀自䜓はかなりの長さがあり、あの薙刀が飛来しおくる限り、梶原の懐に飛び蟌めない。
    「あの薙刀を、切り萜ずせ」
     図曞亮は、偎にいた雑兵に呜什を䞋した。たちたち和田兵の槍が梶原に殺到したが、梶原の薙刀に力負けしお、薙ぎ䌏せられる。だがここぞ来おどうしたわけか、梶原の勢いが埐々に倱われおいく。倜䞭からの激闘で、さしもの梶原の腕にも疲劎が溜たり、限界を迎えおいたのだろう。そのわずかな隙に、和田兵の䞀人が梶原の懐に飛び蟌み、梶原の右腕を斬った。梶原は䞀瞬顔を歪めたが、すぐにその兵を薙ぎ倒しお銖を取った。薙刀の切先に蚎ち取った兵の銖を刺したたた、本䞞ずの境の土壁の扉を蹎砎り、ただ煙を䞊げおいる本䞞方面ぞ戻ろうずしおいる。
     逃がすものか。図曞亮は、その背を远った。梶原もたた、傷぀いおいない巊手で城壁の扉を軜々ず倖し、投げ぀けおきた。
     慌おお、飛来した重そうな朚戞を避ける。黒塗りの朚戞は、埌ろで倧きな音を立おお地面に突き刺さった。背埌で、ぎゃっずいう悲鳎が䞊がる。誰かに圓たり、梶原の目論芋通り打倒されたらしい。それに構わず、図曞亮は本䞞の郭内ぞ䟵入した。県の前には、治郚倧茔の銖のない䜓や、血塗れの女人らの䜓が折り重なった櫓がある。梶原は右腕から鮮血が滎り萜ちおいるのにも構わず、するするず櫓にかかる梯子を登った。
    「者共。聞くが良い」
     雷のような倧音声に、和田兵らの足はその堎に止められた。
    「我が先祖は、倩喜五幎に栗屋川次郎くりやがわじろう、安倍貞任あべのさだずう、鳥海䞉郎ずりうみさぶろう同兄匟謀叛の折り、頌光よりみ぀公の匟河内守頌信よりのぶの嫡子、䌊予守頌矩よりよしの蚎手ずしお、圓地に䞋向しお参った。鎌倉暩五郎景正かげたさは栗屋川の合戊においお、鳥海䞉郎に右の県たなこを射られたが、その矢を抜かずに柄を折るのみに留め、䞉日䞉晩そのたたの姿で戊堎を駆け回り、最埌に県を射抜いた矢を抜き敵に射返した」
     櫓の䞊で話しおいる梶原の姿は、さながら舞台䞊の圹者のようであり、倧音声は朗々ず響いおいた。
    「今某は右腕を斬られながらも、敵を蚎っお参った。この姿を芋るが良い。我が祖先ず同じ地においお同じ姿になろうずは、これも我が先祖の導きであろう。この堎でそなたらを芋䞋ろし、自らの手で我が銖を刎ね投げ捚おられるならば、今は浮䞖に思い眮くこずはござらぬ」
     梶原はそう蚀い終わるず、晎れ舞台を螏めたのが嬉しいのだろう、からからず笑い声を䞊げた。それから腹を十文字に搔き切り、それだけでは死に切れないず思ったのか、さらに心の臓を二床突き刺すず、ようやくその巚倧な䜓躯が倒れるのが芋えた。
    「梶原殿、倩晎なり」
     思わず、心からの称賛の声が挏れる。匷敵ながら、芋事な最期だった。先刻远い回された恐怖も忘れお櫓に登るず、図曞亮は、血溜たりの䞭に暪たわる梶原の銖を取った。たちたち草履や足袋に須賀川の者ら血が染み蟌み、足元が濡れる。銖が残されおいる屍の顔を぀ずめお芋ないようにしながら、図曞亮は梶原の銖を腰に括り付けお、櫓から地䞊に䞋りた。

    ©k.maru027.2023

    「勇将らの最期5」ぞ続く

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    k_maru027

     
     
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