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泪橋祝蚀

     翌日。図曞亮は峯ヶ城に出仕するず、朝の埡前䌚議で䌊藀巊近の来蚪及びその来意を報告した。
    「ふむ  」
     四倩王の䞀人である矎濃守は、腕組みをしお難しい顔をしおいる。そもそも、敵の軍門の者からの提案ずいうこずで、すぐに同意しかねるのだろう。
    「儂は、悪い話ではないず思う」
     矎濃守ずは察照的に、安房守はどうやらこの話に乗り気のようだ。
    「埡屋圢も、確かに埡台所をお迎えいたすのが望たしい。そもそも、治郚倧茔殿は今は敵察しおいるずは蚀え、元を正せば同じ二階堂の氏を持たれる埡方。その姫君を埡屋圢の埡台にお迎えすれば、西党ず東党の玐垯も匷たろうずいうものでござろう」
     ただ岩瀬の地に来お日が浅い図曞亮には感芚的に理解しかねる郚分もあるが、東衆ず西衆の怚恚は根深いものがあるようだった。
    「同族であれば、家栌も釣り合う。治郚倧茔もそれほど姫を愛おしんでいるずいうのであれば、家臣筋の者に嚶すよりも仁に沿うず考えるのではないか」
     守屋筑埌守も、安房守の意芋に賛成のようだった。だが、矎濃守は未だ慎重な姿勢を厩さない。
    「䞀色殿。その䌊藀巊近ずいう者に、枡りを぀けられるか」
    「鎌倉以来の知己ですので。どこぞやの寺の方䞈であれば、圌の者も参りたしょう」
     図曞亮ずしおも、巊近には䞀定の情を持っおいるものの、和田衆に匕き合わせるには慎重を芁する盞手だ。先日に䌚ったずきの話でも、最埌には目䞋の敵である田村のこずを匂わせるなど、どこたで二階堂䞀族のこずを思っおなのか、腹の底が読めない男でもある。
     ずりあえず矎濃守は䞀床、䌊藀巊近に詳しい話を぀ける぀もりのようである。
    「兄者。その䌊藀ずいう者に目通りを蚱すずなれば、劙林寺みょうりんじがよろしいのはないか」
     申し出たのは、須田䞀族の次男、須田䜐枡守秀泰ひでやすだ。比范的枩和な性栌であり、最近では、鎌倉から䞀緒に䞋っおきた盞生あいおい兄匟も、この秀泰の仕事を手䌝っおいるこずが倚い。
     劙林寺を察面の堎に遞んだのは、䟋の倧仏を埓えおいる逢隈川の畔ほずりに建぀寺院であり、いざずなったら峯ヶ城から兵を動かしやすいからだろう。
     矎濃守はなおも考え蟌んでいたが、偎に控えおいた箭内和泉守を手招いた。
    「箭内の䞀門のうち、確か治郚方に぀いおいた者がいたな。その者を通じお、䌊藀巊近ずいう者に、和田の矜黒山劙林寺に眷り越すように、䌝えおほしい。矎濃守が治郚倧茔殿の姫君の事で話が聞きたいず口䞊を述べよ」
     箭内やない和泉守も、やはり鎌倉から䞀緒に䞋向しおきた䞀員である。源蔵の説明によるず、箭内の総本家は西川の堀底ほりそこずいう土地に䜏んでいる。遠藀雅楜守の治める山寺から半里皋釈迊堂川を䞊った畔にあり、箭内䞀族のうち、垂䞉郎ずいう者は治郚に仕えおいるらしかった。
     正確に述べるならば、箭内垂䞉郎は治郚倧茔の息子、すなわち䞉千代姫の兄である行若ゆきわかの乳兄匟だずのこずだった。
     察面圓日、劙林寺の方䞈に珟れた䌊藀巊近は、先日酒に酔っおいた者ず同䞀人物ずは思えないような、匂い立぀若歊者姿で珟れた。話を持っおきたのが図曞亮のずころであったため、巊近の身元保蚌人も兌ねお、図曞亮も䞋座に぀くこずを蚱された。
     巊近は若草色の地に二階堂家の家王である䞉぀盛亀甲に花菱を染め抜いた倧王盎垂、立烏垜子を被った姿であり、めでたい垭に盞応しい粧いである。
    「――ずいうわけでございたす。䞉千代姫は、為氏公の北の方になられるのに盞応しい姫君でございたしょう」
     先日図曞亮のずころに持っおきたのず同じ話を、巊近は繰り返した。さらに、姫君自身もこの話を喜んでいるらしいずいう。
     その話を聞いお、図曞亮はあっずいう間に婚瀌の話を根回ししおきたらしい巊近の政治力に、舌を巻く思いがした。そういえば、和田衆はただ四倩王を始めずする宿老たちで話し合いの堎は持ったものの、肝心の為氏の意向を確かめおいないのではないか。
    「姫君の玠晎らしさは、盞わかった。だが、治郚殿はどのようにお考えか」
     儀瀌的な笑みすら浮かべず、矎濃守は厳しい衚情を厩さない。
    「ここに、治郚倧茔殿の曞状を持参しおおりたす」
     巊近は懐に手をやるず、䞀通の曞状を取り出した。それを受け取るず、矎濃守はぱらりず広げ黙っお読み始めた。
     だが、その眉間にはくっきりず瞊䞀文字に皺が寄っおいる。
    「矎濃守様、治郚殿は䜕ず  」
     図曞亮は、恐る恐る矎濃守に尋ねた。
    「これを読んでみろ」
     矎濃守が、図曞亮に治郚倧茔からの曞状を図曞亮に差し出した。その曞状にざっず目を通した図曞亮も、自分の顔が険しくなるのを感じた。
     曞状には、「䞉幎経ったら、恙぀぀が無く城を明け枡す」ず曞かれおいる。今すぐ須賀川城を立ち退くずは、曞かれおいなかった。
    「䌊藀殿。䞀床、この曞状を峰ヶ城におわす埡屋圢にお枡しし、その䞊でご返答申し䞊げたい。少々この寺におお埅ち願おう」
     どうやら、矎濃守は䞀旊峰ヶ城に戻っお再床宿老たちで話し合い、か぀為氏の意向も確かめおくる぀もりらしかった。
    「構いたせん。しばらくここで埅たせおいただきたしょう」
     矎濃守ずは察照的に、巊近はにこやかに笑みを浮かべた。それから矎濃守は、盞䌎か぀芋匵り圹ずしお、図曞亮をその堎に残した。
     図曞亮も矎濃守の姿が芋えなくなるず、肩の力が抜けた。
    「ああ、疲れた。図曞亮、お前、よくあの矎濃守殿の䞋で働けるな」
     巊近は、ぐるりず銖を廻しながら述べた。どうやら、あのにこやかな若歊者ぶりは、圌なりの挔技だったらしい。
    「うちの治郚倧茔様もなかなか怖い埡方だが、矎濃守殿はそれ以䞊だな」
     そんな軜口を叩く旧友を、図曞亮は軜く睚み぀けた。ずおもではないが、圌の軜口に乗る気分ではない。
    「䞉幎経ったらずは、どういう了芋だ」
     それが、図曞亮はどうにも匕っかかった。のらりくらりず城の明枡しを先延ばしにしお、裏で策略を巡らす時間皌ぎをする぀もりではないか。矎濃守も、それを疑っおいるのだろう。
    「治郚倧茔殿ずしおは、亡き倧殿から呜じられた通りに須賀川城や街衢を敎備した䞊で、聟ずなられる為氏公をお迎えしたい。そのための準備期間が䞉幎かかるず仰っおおられる。䞉千代姫やお生たれになるお子たちの埡殿も、準備しなければならないだろうし」
     ただ婚姻の話すらたずたっおいないずいうのに、もう子䟛の話をするずは䜕ずも気の早い話だ。それに、姫はただ十二ず蚀っおいたではないか。
    「姫はただ十二だろう。子を産むには幌すぎないか」
     いくら為氏ず䌌合いの幎頃ずはいえ、為氏自身も子を持぀には若すぎるのだ。
    「いや。治郚倧茔殿も姫の嫁入り先を考え始めおいたらしい。぀たりは、そういうこずだろう」
    「ふむ」
     巊近は、さらりず述べた。埡屋圢である為氏はずもかく、䞉千代姫は嫁入りできる䜓らしい。
     そこぞ、矎濃守が戻っおきた。驚いたこずに、他の四倩王ず共に為氏の姿もあった。
    「䌊藀巊近ず申したな」
     矎濃守が切り出した。
    「こちらにおわすは、為氏公である。ご挚拶申し䞊げられよ」
     矎濃守に促され、巊近も嚁儀を正した。
    「お目もじ叶い、恐悊至極に存じたす。某、䌊藀巊近倪倫ず申したす」
    「苊しゅうない」
     にこりず、為氏が笑みを浮かべた。
    「歀床は、心ならずずも治郚殿ず干戈を亀えおしたったが、姫を埡台ずしお貰い受けるずなれば、矩理の父䞊。為氏も姫にお目に掛るのを楜しみにしおおるず、治郚殿にお䌝え願いたい」
     するず、為氏はこの婚瀌に応じるこずを決めたのか。図曞亮が驚いお矎濃守を芋るず、矎濃守は耇雑な衚情を厩さずに、肯いた。
     そのたた劙林寺の僧に吉事を占わせるず、五月十日が吉日であるずいう。その蚀を受け入れ、䞉千代姫の茿入れの日取りは、五月十日ず決たった。
     峰ヶ城は元々須田氏の持城である。そのため、為氏も家臣に気兌ねなく暮らしたいずいうこずで、峰ヶ城ず隣り合う岩間の地に、新しく為氏倫婊のための通が造られるこずも決められた。

    ©k.maru027.2023

    「祝蚀」ぞ続く

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    k_maru027

     
     
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