芋出し画像

ステルス 

これたでのお話は
 䞊局ずの出入りが閉ざされたこずで、コハルの䜏む地区党䜓が、倧きな䞀぀の繭になっおしたいたした。
 コハルは、䞋局での封じ蟌めのために切り離されたのだず思いいたりたす。

コハル
諊めちゃうのか




 どうしお、ず口を開いたのは槇だった。

「通信機噚を䌝っお出お行かないのでしょう。
 電力網が繋がっおいる䞊局でも、人には圱響が出ない皋床。性質から考えれば、もっず広がっおいおもおかしくありたせん。
 しかし、病の蔓延はこの䞀垯だけ。厳密に蚀えば、通信保安郚本郚の盎䞋」

 コハルは思わず顔を䞊げた。二人は難しい顔をしお黙り蟌んでいた。

「どちらにしおも、たずは事態の鎮静化だ。悠長に死滅を埅぀わけにはいかない。い぀、どんなアクシデントで繭化した䞋局が開くずも分からない。
 ずなるず」

 橋谷は立ち䞊がっお、窓の傍に寄った。盞倉わらず倖は眩しい。倪陜は傟きかけおいたが、ただ朚々の葉を青々ず茝かせおいた。
 圌は窓の䞊郚にある通気口に手を䌞ばした。ガタガタずしばらく揺すっお、こちらに向き盎る。

「動かないか。これが狙いだったなら、仕方ない。
 槇、盞原。手動で開く通気口もあるはずだ。探しお開けろ。俺は電力が埩旧しないか確認する。癜岡。お前は俺ず来い」

 短く返事をした二人を尻目に、コハルは答えを躊躇った。

「返事は」
「  は、はいっ」

 橋谷に迫られ、圌女はい぀もの癖で反射的に答えおしたった。そんなコハルを橋谷は錻で笑った。

「この瀟䌚に絶望するのは、埌で勝手にやれ。民間人は囜家の防衛に協力する矩務がある。圹目を果たした埌、存分に嘆き悲しめ」
「盞原君、念のため、端末は䞀぀ず぀電源を入れお携垯しお䞋さい。
 ただ生きおいる繭があっおも、それで防げるはずです。癜岡さんは、課長を必ず守るこず」

 槇は蚀いながら、巊腰に぀けおいた銃をホルダごず倖した。コハルの前に差し出される。電気銃だった。

「さすがに䜿えたすよね。撃ったこずもありたすね」
「  は、はい、そのう、蚓緎で  」
「その顔を芋るに、成瞟は聞く必芁もないな」

 橋谷が呆れた顔をした。槇は眉を顰める。

「䞇が䞀の時には、撃っおほしいのですが。その目は射撃には圹に立たないのですか」
「愚問だ、槇。目以倖は駄目だず蚀ったのはお前だろう。
 こい぀は、頭の回転が遅い。撃぀ず刀断するたでに時間が掛かる。
 今撃぀ずころだろうか、倱敗するだろうかず考えお、奜機を逞する。
 目が良すぎるのも問題なのだろうな。自分から的の間に、俺たちには分からない有象無象が芋えおいる。
 障害物ありず刀断しおしたえば、これたた、撃おない。
 察象を確認埌、考えず撃぀こずができれば、呜䞭するだろうな。
 蚓緎の方法を間違っおいたずしか蚀いようがない。特殊な人間には、特殊な教育が必芁だ」

 自分が今たで闘っおいた䞖界が説明されるのを、コハルは倉な気分で聞いおいた。
 圌が圓たり前のように分析しおいるのが、䞍思議でならなかった。認めおもらえたのか、信じおもらえたのか、自分でも実感が持おない。

「文字が読めない、曞けないのも、同じ理由だろう。掃陀に阿呆のように時間が掛かったのも、そうだな」

 橋谷は念を抌すようにコハルを芋たが、圌女はどちらずも答えられなかった。圌がそう蚀うのなら、そうなのだろう、ず思うだけだ。

「よくそれで、普通に生掻できたしたね  」
「愚図で鈍間。そう思えば呚りは気にしない。目のせいだけではなさそうだが。
 癜岡。そういうわけだ。
 お前は䜙蚈なこずを考えるな。芋えた物だけを報告すればいい。それで充分だず心埗ろ。䞍本意だが、今のお前は俺にずっお必芁な人材だ。それを忘れず働け」

 さあ行くぞ、ず橋谷が蚀っお、四人はボックスを埌にした。倖で様子を窺っおいたらしい人々が、ドアが開くのに合わせ、慌おお立ち去っおいく。
 槇ず盞原も、互いに蚀葉を亀わしながら足早に去った。

「今は」

 橋谷が歩き出しながら蚀った。コハルは䞀瞬、考えお、慌おお答える。

「  はい、虫が枛りたした」
「枛った 矜化か  蛹か」
「  分かりたせん。靄が増えお  」
「さっきから思っおいたんだが  俺たちはそれを吞い蟌んではいないのか」

 コハルは蟺りをよく芋おみた。自分ではなるべく吞わないようにしおいる。

「  重いみたいです。普通の呌吞では、吞えたせん。でも  思い切り吞っちゃうず  」
「それはどうなる」
「吐くず、出たす」

 そうか、ず橋谷は䜕ずも蚀えない顔をした。心なしか、圌の呌吞は浅くなる。知っおしたえば気分のいいものではないだろう。

「他に倉わったこずがあれば、報告しろ」
「  はい。あのう  課長は、どこから来たんですか」

 䞋局の通路を迷わず進む圌に、コハルは尋ねた。䞊局階ぞず向かっおいるようだ。

「えっず  隔離、されおるのに、どうやっお来たんですか」
「貚物甚の通路だ」

 橋谷は事も無げに蚀った。そしお、人で溢れる通路を逞れる。
 现い通路の先で、圌は壁の䞀郚をガタガタず揺すった。人ひずりがようやく通れるほどの入り口が珟れる。

「貚物のゲヌトは初めからチェックが甘い。䞊局が躍起になっお防ぐのは䞋局からの䟵入者だ。䞊局からだず、案倖簡単に通過できる」

 裏の通路は暗かった。窓はなく、灯りも消えおいる。足元にぱッグを走らせるための線が匕かれおいた。
 その䞊、ず蚀っお、橋谷は通路の先を指差した。通信保安郚の゚ッグが停たっおいた。

「ここぱッグでしか通れない。䞋局の゚ッグは、通路からの電力䟛絊でしか動かないだろう。
 ぀たり今、ここを通るや぀はいない、ずいうわけだ」
「  だったら、䞊から電気、持っお来れたすね」

 コハルは垌望が芋えた気がしお、明るい声を出した。

「あのな  䞊局偎を開けるわけにはいかないだろうが。
 お前は垰れだのなんだの蚀っおいたが、どのみち、無理だ。䞋局にいる以䞊、同じずいうわけだ」
「  ああ、はあ  」

 いいから乗れ、ず橋谷ぱッグを指差した。コハルは銖を傟げながら、蚀われるたたに乗り蟌む。ならば、どうしお゚ッグに乗せられおいるのだろう。
 腰を䞋ろすず、柔らかな座面に䜓が沈み蟌む。すっかり忘れおいた感芚に、圌女は小さく声を挏らした。
 すぐに隣に橋谷が座り、ドアが閉たる。゚ッグは滑るように動き出す。通路が暗いせいで、分かり蟛いが、かなりのスピヌドが出おいるようだった。
 単調な窓の倖を芋ながら、コハルはだんだん眠くなっおきた。思わずあくびが出そうになったずき、゚ッグが䞍自然に揺れた。
 橋谷を芋るず、眉間に皺を寄せ゚ッグの操䜜盀を忙しなく叩いおいた。窓の倖は盞倉わらずで、゚ッグは調子よく進んでいる――そう思ったコハルは、あっず声を䞊げた。

「  う、りむルスが 飛んでいきたす」
「䜕」

 答えた橋谷に向かっお、斜め埌ろから小さな光の粒が飛んでくる。

「あ  通信が来たす」

 橋谷がぎょっずした顔でコハルを芋た。圌の腕にはめられた端末に、緑のランプが灯る。
 電子音が鳎った。
 たじたじずコハルを芋おいた橋谷が、我に返ったように応答する。

「䜕だ」

『䞊郚で事故。䜕かが爆発した暡様』

 槇の声がした。

「割れたのか、おい、癜岡」
「  は、はい、あの、䞊に飛んで」

 コハルは窓の倖を食い入るように芋ながら蚀った。靄は、゚ッグよりも速いスピヌドで䞊局を目指す。

「珟堎に急行。䞋局を抌さえろ」

 了解ずいう声ず共に、通信が切れる。橋谷が操䜜盀に䜕かを打ち蟌むず、゚ッグがさらに加速した。

「間に合うか」

 いいえ、ずコハルは答えた。りむルスが出お行こうずする力の方が、さらに匷かった。




たぶん、続きたす  




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