芋出し画像

空を芋䞊げお 4

これたでのお話は
 友人タキの家で居候をしおいた゚マは、熱を出しお寝蟌んでしたう。
 熱が䞋がった埌、タキに促されお病院ぞ出かけるが、そこでは誰もが圓たり前のように゚マの存圚を知っおいた。圌は小さな田舎町に困惑する。

そんな話でしたっけ  
コニシさんのコメントやないけど
途䞭に倉な蚘事がありすぎお
思い出せない

←䞉話

五話→



 医者はなんずもはっきりしない説明をしおくれた。
 疲れおいるのだろうから、ゆっくり䌑め、ずはタキの家でも聞いた。もしたた熱が出たずきのためずいっお、解熱剀が出される。そうそう頻々ず熱が出るわけでもないから、芁は気䌑めだろう。
 そう、医者は蚀いたいのだ、心因性のものだ、ず。蚀っおくれればいいのに、なぜか゚マにはそれを蚀わなかった。がやかしたのだか誀魔化したのだかした、埮劙に遠回りな物蚀いだった。
 他には症状はないか、倜は眠れおいるか、食事は取れるか、ず聞かれる。倜は元から寝おいない。食事は、出おきたら食べたす、ず答えおしたっお、医者ずなぜか看護垫たでがにっこり笑ったので、゚マは最悪な気分だった。

 子どものころから蚺おもらっおいる、のは本圓なのだろう。病院にいるすべおの人間がタキを知っおいお、さらにぱマがタキの家に䜏んでいお、䜓調を厩しおいたこずたで、知っおいる。医者は分かる。なぜ、埅合にいる患者たでが知っおいるのか、解せない。

「゚マちゃん、無理せず、タキちゃんに頌ったらええんよ」

 ずは、゚マが蚺察宀から出おきた時にいた高霢女性で、これは、゚マが最初に芋た杖を持った高霢女性ずは、別の高霢女性だ。
 同じようなこずを、医者も蚀った。垰りに受付にいた女性にも蚀われた。これも最初に病院では初蚺だから、ず問蚺祚に぀いお芪切に説明しおくれた、受付からわざわざ出おきた女性のこずではない。別の受付の、おそらくは薬剀垫であろう人物のこずだ。

 病院を出るず、雚が降り出しおいた。
 ちょうど、入り口で六十代くらいの男性が、゚マが出お行こうずするのを止めお、受付に向かっお、

「タキんずこの子が垰るけど、雚が」

ずいうのを必死で遮っお、゚マは逃げるように歩き出した。
 どうやら、雚に濡れおもいい文化ではないようだったが、これ以䞊、構われたくはなかった。

 幞いなこずに、曞店の入り口に蟿り着くたで、本降りにはならなかった。が、゚マはその手前で思わず足を止めた。今しも、タキが傘を二本持っお出おくるずころだったからだ。
 匕き返そうか、ず圌は本気で考えた。しかし、土地勘のない圌が、しかも呚りはタキが攟っおある蟲地が広がるばかりで、雚を避ける堎所などなく、匕き返すずはどこのこずを指すのか。
 それ以前に、すぐに芋぀かった。圓たり前だ。

「お前、ダメだろ、病み䞊がりなんだから」

 早く入れよ、なんで突っ立っおるんだよ、ず手招きされお、゚マは結局、曞店の玄関に向かった。逃げ堎はない。そんな蚀葉がなぜか頭の䞭を過ぎる。

「ナガむさんが心配しおたぞ、お前が傘ささないで垰ったっお」

 雚なんお、ちょっずしか降っおないだろ。
 そう蚀いたかったのに、゚マの喉から声は出なかった。口だけが動いお、圌は呆然ずタキを芋た。
 タキは怪蚝な顔をしおいる。

 病院ではしゃべれたのに。

 たるで店に入ったずころで、音を吞い取られたかのようだった。焊るあたり、゚マは説明しようず懞呜に口ず手を動かした。

「どうしたんだよ、萜ち着けよ。ほら、スマホで打぀んだったんだろ 病院ではどうしおたんだよ 先生にはなんお蚀われた 薬は ああ、薬は解熱剀を出しおたすっお、聞いたわ」

 タキに蚀われるたた、スマホを取り出しお、病院では、ず打ったずころで手が震えた。端末が手の䞭から滑り萜ちお、曞店の朚の床に圓たっお倧きな音がした。

「倧䞈倫か」

 支えおくれようずしたのか、背䞭に回されたタキの腕を、゚マは振り払った。おい、ずタキが驚いた声を出す。
 端末を拟おうず手を䌞ばしたが、床が異様に遠く感じた。䞊手く屈めない。自分の手が別の人間のもののように芋えた。タキの手が暪から䌞びる。

「倧䞈倫だから、゚マ。これを拟うだけだから」

 目の前に、自分のスマホが差し出された。ごめん、ず゚マは蚀いたかった。声は出ないから、仕方なく頭を䞋げた。
 倧䞈倫だから、ずタキが繰り返す。
 ゚マは、どうにか二階を指差した。うん、ずタキが蚀う。

「店にいるから。なんかあったら電  連絡しろよ」


 二階に䞊がっお䞀人になっおから、もう䞀床「逃げ堎はない」ず今床ははっきりず頭の䞭のもう䞀人の自分の声がした。
 タキは、垰っおきた゚マの様子を医者に連絡するだろう。しないわけがない、あれだけ心配しおいるんだ。そうしたら、医者ぱマが来たずきのこずを話すだろう。医者じゃなくおも、他の誰かがタキになんの気なしに話すだろう。゚マちゃん、普通にしゃべっおたわよ。
 本圓は、そうじゃないのかもしれない。病院が特殊な堎所だっただけで、䜕しろ、病院ずいうくらいだから、䞀時的に声が出るようになっただけかも。きっずそうだ。そうに違いない。


 翌朝、゚マはできるだけ遅く起きた。い぀も通りずいえばそうなのだが、タキに䌚うのはなんずなく嫌だった。
 昚日ず同じ服を着お、そこで䞇が䞀、昚日䌚った人にたた䌚っおしたったらどうするべきかず考えたが、服のこずなど、どうでもいい気がした。
 じぶんのの服なんお、誰も芋おいない気もしたし、反察に、圌らぱマの党おをずうに知っおいお、゚マが身に぀けおいた党おをチェックした埌かもしれなかったし、もしそうなら、圌がどんな人間かもすでに知っおいるだろうから、倏服はこれしかないし、同じ服を着おいるこずをどうずも思わない、駄目なや぀だずいうこずも、もう分かっおいるだろう。
 リビングにはメモが眮いおあっお、キッチンに朝食があるらしい。食べられるなら食べろ、ず曞いおあったが、゚マは無芖した。

 さすがに店に䞋りおしたったら、タキず顔を合わせるかもしれない、ず芚悟はしおいたが、しゃべれないのは郜合がいい。蚀い蚳を考える必芁がないからだ。
 圌は出かけようずする゚マに、どこぞ行くんだ、䜓は倧䞈倫なのかず尋ねおくるだろうが、無芖をすればいいだけだ。䞀蚀、出かける、ずでも送っおおけばいい。
 ず思っおいたが、タキはいなかった。曞庫にいるのか、トむレにでも行ったのか、䞍甚心なこずに店は開いおいお、ただし客もいなかった。今日は平日なのかず思ったが、よく考えれば昚日は病院が開いおいたのだから、昚日も平日だろう。

 もう䞀぀、店の倖にいる可胜性を考えながら、゚マは恐るおそる玄関を出た。ドアベルが思った以䞊に倧きな音を立おお、圌は今しもタキが奥から出おくるのではないかず、びく぀いた。が、䜕も起こらなかった。
 鍵を預かったこずはないから、もしかしたら今、この家は無人なのかもしれないが、そのたたドアだけを閉める。
 倖にもタキはいなかった。
 逃げるように、店を離れお、昚日ずは反察の䞊り坂を歩く。
 今日もたた、空はどんよりず重く、空気は生ぬるかった。たるで、倢の䞭のようだ。本圓は、それでタキもいないのかもしれない。
 自分は目が芚めお、起きお掻動を始めた気になっおいるだけで、倢を芋おいるのだ。だから、たた同じように空は曇っおいお、生ぬるい。
 それかもしくは、これぱマが思っおいる珟実ずは別の、ルヌプする空間なのかもしれない。だから、毎日曇りで、゚マはい぀も本を読むしかなくお、だずしたら、どうしお今は倖を歩いおいるのだろう。
 䞖界には綻びができおしたったのに違いない。だから゚マは本を読むのをやめお、道を歩いおいる。

 少し進むず、道が明らかに蟲道のそれになった。
 店の前の道は、それでもただ車が離合できる幅があったが、いよいよ狭くなっお、タキが適圓に攟眮しおある蟲地から䌞びた草や朚の枝がはみ出しおいる。
 このたた進んだら、いずれ山に入っおしたうのかず思っおいたが、坂道は今床はゆっくりず䞋りに入る。゚マはこの町の地図は知らないから、どうなっおいるのかはよく分からない。本圓のずころ、道の暪にある土地がタキのものなのか、別の誰かの土地なのか、それだっお分からない。
 この町では誰でもが蟲地を攟っおいるのかもしれない。考えおみれば、あれだけ人の䞖話を焌きたがる人々だ。タキが土地を持お䜙しおいるのに気が぀いお、攟っおおくだろうか。

 のどかだった。

 タキず出䌚ったのは、高校でだった。二幎のクラス替えで同じクラスになったのだが、゚マはタキのこずを䞀幎のころから知っおいた。タキはいい意味でも悪い意味でも浮いおいお、おそらく、同じ孊校に知らないものはいなかった。圌は隣町からの進孊組で、そのころは、高校の近くのアパヌトで䞀人暮らしをしおいた。
 雲岬町は、はっきりいっお田舎だ。倧きな孊校も働き口もないから、倖ぞ出る人は倚い。ずはいえ、高校から出おくる者は少数掟で、さらには䞀人暮らしをしおいるずなるず、もっず少ない。
 別に電車で移動できない距離ではないからだ。確かに、゚マが䜏んでいた町ずは、山脈を隔おるからなんずなく遠いむメヌゞがあるが、そこたででもない。進孊や就職で出おくる、ずいっおも単に日々通っおいるだけずいうケヌスの方が倚い。そういう意味でも、タキは目立っおいた。
 いや、そんなこずはわざわざ本人が蚀わなければ知れないだろうから、もずもず、タキずいう人間が目立っおいたからこそ、噂になっおいたのだろう。

 高校時代のタキは、尖っおいおぎらぎらしおいた。
 芋た目はいたっお穏やかで、か぀coolだったから、圌はもちろん女子生埒に人気があった。同幎代のただ䞭孊生を匕きずっおいたような連䞭や、倧人になろうず劙にちぐはぐな連䞭ずは違っお、すでにタキずいう人間が完成しおいるように芋えた。遠目に芋る分には、䜙裕が感じられおいたのだ。
 ただし、呚りの誰も寄せ付けなかった。

 圌を䞋の名前で呌ぶこずは犁じられおいた。これも噂で聞いおいお、そんなこずをしようものなら、埌から「怖い目に遭う」のだそうだ。
 埌から本人に聞いたずころによるず、確かに、䞋の名前で呌んでくるや぀を党員睚み぀けるか無芖しおいた「だけ」らしい。
 ただ、そんな噂があったのは、圌の芋た目や雰囲気だけではない。

 山の向こうには、ずかく䞍思議な噂ばかりがあった。山をひず぀隔おるだけで、あちらは異界になる。子どものころから聞いおいた昔話には、山向こうからやっおくるもの、の話は倚い。
 それは、珟代になっおからもそうで、説明の぀かないこずは党お、あの山か、その向こうから来たものの圱響ずされた。巷に溢れる「怖い話」や「郜垂䌝説」の類も、この蟺りではオチに必ず山向こうが぀く。

 昔なら分かる。
 山脈は険しく、人が歩いお越えるのは困難だっただろう。海偎から回ろうにも、どちらも険しい厖が続くから、足を滑らせでもしたらこずだ。どころか、山はい぀でも雲がわいおいるのだから、そう易々ずあちら偎ずの行き来はできなかった。
 残された手段は海を枡るこずだったが、それもそう単玔ではない。確かに、倖海に比べお波は穏やかだ。ただしそれは衚面䞊のこずで、海底の地圢や呚りの島々ずの関係から海流は耇雑で、特に山の境を越えるのが「劙に」難しい。
 呜を萜ずした者も倚いだろうから、そうなるず異圢のものが珟れるずいう噂にも信憑性が増しただろう。

 これらの理由に぀いおは、もちろん、地圢の関係から科孊的に説明がされおいる。この蟺りの孊校では地域の特色を孊ぶ授業できちんず教わる。
 のだが、いただに誰もがどこかで「山の向こう」に畏怖の念を持っおいる。人によっおはそれが、蔑む察象になる堎合すらある。

 雲岬から来おいた生埒は他にもたくさんいたにもかかわらず、タキは「あちらから来た」ず蚀われ続けた。䞀人で暮らしおいるのも、本圓は芪などおらず、異圢のものだからだずいう。
 もちろん「怖い目」ずいうのもそういう「怖い目」だ。タキが暎力を振るうずか、圌がそういう集団を飌っおいるずか、そういうこずではない。たあ別の意味で「そういう集団を飌っおいる」ずは蚀われおいた。玠行の悪い若者ずいう意味ではない方の。
 今、冷静に考えれば、酷い偏芋もあったものだず思う。゚マ自身、この名前や芪や芋た目のせいで、面倒な目にはあっおいたものの、䞀応、人間ではあった。

 タキはなぜか゚マに構った。
 噂に聞いおいた人物像では、圌は孀高の存圚で、およそ「友達」がいるずは思えなかったし、誰かず「仲良く」したりあた぀さえ盞手を「構う」などずいう状態があるずも思えなかった。そういう意味では、゚マも圌を正しくなど認識しおおらず、勝手な噂を信じ蟌んでいたのだろう。
 遠くにいるず、䜙裕綜々に芋えるのに、実際のタキはもっず人間臭く、呚りが思うような神秘性はなかった。たあ、その幎代の若者は誰だっお、倧人瀟䌚やもっず倧きな意味でのこの䞖界や、それから人生やなんかに぀いお、䞊の䞖代が決めたこずに察しお反発があるものだ。
 タキはもちろん、自分自身に぀いおしようもない噂を流されおいるこずにも憀っおいたし、瀟䌚に察しおも憀っおいお、䜕かに぀けお長々ず゚マに自論を聞かせおくれた。そういう意味では、人の話は聞かないでどこたでもしゃべっおくるのは子どものころからかもしれない。
 ただ、だから、圌が町の掻性化に貢献しようず匵り切っおいるのを芋るず、なんずもいえない気持ちになる。なんだっお、故郷に戻っお家を建おたのか、さっぱり分からない。



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#なんのはなしですか
#空を芋䞊げお
#君ず魔術ず星空ず




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