
近所のスーパーで1回だけすれ違ったあの人が、旅行先の植物屋さんにいた。
題名通りである。
この感動を伝えられた試しがない。
無論、どう考えても怖すぎるからだ。
だけど、どうしても感動しているので、
あなたに話してみることにした。
その人に声をかけるわけにもいかない。当たり前に不審者にされる、そりゃそう。
その人とは別に何の関係もあるわけではない。 ただ近所のスーパーで一方的に僕が見かけただけ。
だけど僕の頭の中では、その人の顔や服装、背丈、歩き方や靴、背中の丸さや、ほんのりと、ごくほんのりと右に傾いている姿勢、それがばっっっちりと浮かぶ。
幼い頃からずっとそう。
1回すれ違えば、会えば、その人の顔を覚えられる。先述の通り、近所のスーパーで会った人はもちろん、小学生3年生の時のクラスメイトだとか、
映画の中で横断歩道を行くエキストラ、バスの中にいた人、でっかいスクランブル交差点でわあわあと行き交う雑踏のひとりひとり、すべて1回すれ違えば覚えられる。
多分、そうはいっても覚えられるのは全員ではないと思うし、正確に言うと、ずっと記憶を保存してるわけでもなく、思い出そうと思ったらぴゃぴゃと思い出せちゃうわけでございまして。
大学生の頃、ちょうど、コロナ禍だった。
ふと「1回見たら顔を覚えられること」について、改めて気になってきて、これは何かの特殊能力なのでは!?とスマホにありったけのこども心をこめて調べてみた。
すると出てきたのは「UNSW Face Test」というものである。UNSWというのはニューサウスウェールズ大学のことらしく、Face Testというのは顔識別・記憶能力をみることができるテストのことらしい。
当時の得点を覚えていないのだが、実は今日もやってみたの!参考までに↓

これを見るとですね、どうやら、
誰にも感動を伝えることができないくらいには怖いこの能力は、上位10%に属するらしい。
なんとびっくりわあわあわあ。
と、ここで終われば、怖いながらになんだか自慢で終われるのだが、そうはいかない。
僕は見事に、きれいさっぱりに、
過去の出来事をわすれちゃうのだ。
これが、またやっかいなのである。
人の顔を覚えられるもんだから、
「記憶力いいんだねえええええ!」と感嘆される。
だけど、これが、いや、ほんと聞いてよ、
これが、仕事になるとどうなってしまうか。
去年の出来事を忘れる。行事を忘れる。
誰と話したか、どんな約束をしたかも忘れるし、物がどこにあるかなんて知ったこっちゃない。
そうなると、その職場のシステムも覚えられないし、1年の流れも記憶の川底に見えるが、それは見事にうっすらで全貌すら見えないし、僕に「去年はどうでした?」「先月、これしたの覚えてます?」と聞こうものなら、「ごめんなさい、ほんとに覚えてないです、ごめんなさい...」と、脳内にショートカットキーが出来そうなくらいに使い尽くしたセリフが出てくる。
となってくると、「ああ、覚えてないんだなあ、この人。」となり、それが、徐々に、少しずつ、じりじりと、「この人は出来が悪いなあ」という言説を見事に、強固に、たんたんと、組み上げていく。
あの時あんなに笑ったことも、苦しんだことも、泣いたことも、その時の感情は覚えてる。
何があったかは思い出せない。
だけど、先週トンネルの反対車線を走っていた車の運転手を一昨日ガソリンスタンドで見たことは覚えている。それもばっちりと。