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雲の上の家 │ 掌編小説

    七月の初めだったと思う。
    少し前の席替えで、私は窓側の列に座っていた。
    真ん中より少し後ろだった。

    私は授業中に外ばかり見るような子ではなかったが、その日だけは違った。
    空には、入道雲が出ていた。

    ただ大きいというだけではなかった。
    白さが妙にくっきりしていて、盛り上がった輪郭も立派だった。

    雲の上に家が建っているような気がした。

    そんなことはあり得ないと、八つか九つの私はもう知っていた。
    それでも、その想像は止まらなかった。

    その家には神様が住んでいる。
    頭は禿げていて、白いひげをたっぷり生やし、白い着物を着ている。
    手には木の杖を持っている。
    その杖を軽くつくたびに、神様は雲から雲へ、ぽーん、ぽーんと飛び移る。
    誰に見せるでもなく、ただそこを移動している。

    あれは何の授業の時間だったろう。
    私は一度だけ黒板に目を戻し、また雲を見た。

    あの雲を目指して進めば、海岸に出て、その上にあの雲が広がっているのかもしれない。
    そこには海水浴場が開かれ、人が集まり、海の家が建ち、浮き輪を持った子どもたちが波打ち際で遊んでいる。

    夏休みになれば、そういう場所へ行けるような気がした。
    そんな予定があったわけではない。

    先生に名前を呼ばれて、私は立った。
    何を答えたのかは忘れた。
    たぶん、教室のみんなは私がさっきまで雲を見ていたことに気づいていなかった。

    私は座り、今度はしばらく黒板を見た。
    それでも、視界の端には窓の外の白さが残っていた。

    その年の夏休みに何をしたのか、断片しか残っていない。
    朝のラジオ体操、プール、夕方の蝉の声、食卓に置かれた麦茶のポット。
    海へ行った記憶はない。

    それでも、教室の窓から見たあの雲だけは、妙にはっきり残っている。
    その雲の中には、まだ始まっていない夏休みを待っていた私の気持ちが、そのまま閉じ込められていたように思う。

    夏休みはまだ先だったが、期待だけが少し早くそこへ来ていた。

    私はノートを開き、鉛筆を持ったまま、ときどき空を見た。
    神様はもう見えなかったが、家はまだそこにあるように思えた。

     
     
    日常の中で通り過ぎていった感情や、説明されなかった出来事を、短い物語として書いています。記憶から始まる話もあれば、想像から始まる話もあります。

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